あなたに未練などありません

風見ゆうみ

文字の大きさ
25 / 40

第22話 友達なんていなかった

しおりを挟む
 次の日、キャロラインと元友人達2人を城の別宮に呼び出して話をする事になった。

 彼女達は裁判にかけられる事になるのだけれど、刑については、わたしの心情がかなり考慮される事を知っているのかもしれない。

 だからか、待たせていた応接室に入るなり、座っていたソファーから立ち上がり、3人揃って広い場所へ出ると、横に並んで膝を付き柔らかな赤色のカーペットに額をつけた。

「申し訳ございませんでした!」

 謝られても何も感じないのは、罪を軽くしてもらおうという気があるんじゃないの?

 と思ってしまったからで、わたしは自分の性格は良くないのだと感じた。

 性格の良い人なら、きっとすぐに彼女達の顔をあげさせるんでしょうけれど、わたしはそうじゃない。
 もちろん、ずっとそのままでいろ、だなんて事も思わないけれど。
 
「謝らなくてもいいわ。あの時に許すと言ったでしょう? 今日は聞きたい事があったから来てもらっただけよ。とにかく立って、ソファーに座ってくれない?」

 わたしだけが話を聞くのでは、また嘘の証言をされても困るので、証人としてジェレミー殿下にも一緒に来てもらっていて、彼女達がソファーに並んで座ってから、ジェレミー殿下に中に入ってもらい、早速、彼女達に話を聞いてみる事にした。

「さっきも言ったけれど、許す許さないの問題ではないの。思い残す事なく、あなた達の存在を忘れたいだけ。もちろん、わたしに悪いところがあったのなら反省するつもりよ。だから、教えてほしいの。どうして、あなた達があんな嘘をついたのか…」

 メイドがお茶を入れて出て行った後にわたしが口を開くと、あまり眠れていないのか、げっそりとした表情の3人は顔を見合わせた。

 それから、キャロラインがわたしの方に顔を向けて話し始める。

「いつの間にか、ヘイスト殿下の事を好きになっていたの。あなたがヘイスト殿下との仲の良い話をするたびに胸が苦しくなって…」
「……あなたの苦しみに気付けていなかったから、わたしの事が嫌いになったの?」
「だって、友達なら気付いてくれても良かったんじゃない!?」

 キャロラインが涙を流しながら叫んだ。

「そうね…。その事については謝るわ。何も感じていなかったわけではなかったの。だけど、その頃のわたしは本当にヘイスト殿下が好きだったし、あなたから口に出してくれる事を待ってたの。それまでは、あなたがヘイスト殿下の事を好きでも、わたしとの事を応援してくれているのだと思ってた」

 ヘイスト殿下の婚約者はわたしで、キャロラインではない。
 キャロラインもそれをわかっていて、いつかは忘れるつもりでいてくれるだろうだなんて都合の良い事を思っていたし、本当に忘れられないのであれば、わたしに話をしてくれるのだと思っていた。

「わたしがあなたにヘイスト殿下の事を好きかどうか尋ねたら良かったの?」
「…そうね。少しは罪悪感をもってほしかった」

 キャロラインの言葉を聞いたジェレミー殿下が口を開こうとしたけれど、首を横に振って止めると、「後からまとめて言わせてもらうよ」と言って、今は黙って聞いてくれるだけにしてくれた。
 心の中で感謝してから、キャロラインに尋ねる。

「罪悪感っていうのは?」
「友人の好きな人の前で仲良くしないようにしようって思ってほしかったんです!」
「それに関してはそうしていたつもりよ? 好きだったから、自分でも気が付かない内に彼を目で追うだとか、そんな事はしていたかもしれないけれど、学園内では必要以上に話をしていないわ」
「でも、休みの日に会ったとか、そういう話を!」
「わたしから、そんな話をした? ヘイスト殿下から聞いたんじゃないの?」
「そ…、それは…」

 キャロラインが焦った様に、他の元友人達を見た。
 元友人達は「そう言われてみれば…」と言って、口を手で覆う。

 今、そんな事に気が付いたっていうの?
 それよりも、ちょうどいい機会だから2人にも確認しないといけないわ。

「で、あなた達は何の為にキャロラインに協力したの?」
「私達は、あなたがキャロラインの前で幸せそうにしているから、友達なのに酷いなって…」
「意味がわからないわ。どうして幸せそうにしていたら駄目なの?」
「だって、キャロラインはヘイスト殿下が好きだったんですよ? それなのに、婚約者だなんて…、普通は解消してあげるべきじゃないのかって思ったんです」

 元友人の1人、マーガレットの言葉を聞いて、わたしは呆れ返って何も言えなくなったし、ジェレミー殿下は、大きなため息を吐いて、自分のこめかみをぐりぐりとおさえている。

 口を出さないように我慢してくれているみたいだった。
 だから、わたしも話を進めないといけないと思い、我に返って口を開く。

「どうして、わたしが婚約の解消を? 相手はヘイスト殿下で王族なのよ? わたしから出来るわけがないじゃない」
「そ、その時はわからなかったんです!」
「わからない年齢でもないでしょう。あなた達がキャロラインがついた嘘を本当だと証言したのは最近の話よ?」

 マーガレットともう1人の元友人、デイジーはわたしの言葉を聞いて顔を見合わせてから、前を向いて頭を下げてくる。

「軽率な行動をしたと思っています。あなたは顔も可愛いし、私の憧れている男性に好かれていたから! だから悔しくて! そんな風に感情のコントロールが出来ない私はまだ、子供なので許して下さい!」
「私もです! 本当に申し訳ございませんでした! ですから、どうか家の取り潰しだけは…!」

 彼女達の言い分を簡単にまとめると、ヘイスト殿下に恋をしているキャロラインの気持ちに気付かない上に、婚約の解消もしてあげないわたしは、彼女達にとって酷い女だった。
 その上に、彼女達の好きな男性がわたしをよく言っていたから、それが許せなかった?
 今となっては反省しているから、平民にしないでほしい、という事かしら?

 都合の良い事ばかり言うのね。

 大体、そこまでキャロラインの事ばかり思うなら、今の様にわたしにはっきりと言ってくれたら良かったのに。
 彼女達に好きな男性がいるのは知っていたけれど、、わたしとは一切関わりがなかったし、何より応援もしていた。
 それって、わたしの事を信じてもらえてなかったって事よね…。
 何にしても、こんな大事になる前に正直に話をしてほしかった。
 婚約の解消だって、わたしから出来なくても、キャロラインの気持ちや、彼女達の気持ちにもっと向き合うようにしていたと思うから。

 でも、今となっては、この人達の事を友人とはいわないという事に気が付いた。

「アニエス、もう話をしてもいいかな?」

 ジェレミー殿下に尋ねられて、静かに首を縦に振ると、ジェレミー殿下が笑顔を作り、キャロライン達に向かって言った。

「君達は、そんな言い訳で減刑されると本気で思ってるのかな?」

 顔は笑っているけれど、目は笑っていないし、声もいつもよりも低かった事もあり、キャロライン達がびくりと体を震わせたのがわかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

私より幼馴染を選んだ婚約者に別れを告げたら謝罪に来ましたが、契約を守れない貴族とは取引しませんので

藤原遊
恋愛
祖父が創立した大商会で、跡継ぎとして働いている私。 けれど婚約者は、私より幼馴染を選びました。 それなら構いません。 婚約という契約を守れない相手と、これ以上関係を続けるつもりはありませんから。 祖父の商会は隣国と新たな取引を始めることになりました。 ――その途端、なぜか元婚約者が謝罪に来るようになりましたが、もう遅いです。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...