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第31話 懺悔?
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パーティーの翌日はミシェルは休みだったので、彼女が出勤してきた日にパーティーに招待してもらったお礼を改めて伝えると、ミシェルもわたしにお礼を言ってきた後、深々と頭を下げてきた。
「先日はヘイスト様が申し訳ございませんでした」
「気にしないで。そういう人だという事は知っていたから」
「ですが、ジェレミー殿下にあのような事を仰るだなんて信じられませわ! 昨日の内にお説教をしておきましたから、今後はあの様な事はありませんから、ジェレミー殿下にお許しいただければいいんですけれど…」
「……お説教?」
気になったので聞き返すと、ミシェルは笑顔で頷いてから言う。
「はい。聞き分けの悪い人にはお説教が必要ですわよね? もう子供ではないのですから、いつまでも甘い事ばかり言っていてはいけませんわ」
「そ…、そうね…。ヘイスト様は次期当主だし、何より、あなたの旦那様になるのだものね」
苦笑しながら同意すると、ミシェルが花開く様な笑みを浮かべる。
「ご理解いただけて嬉しいですわ。中々、周りには理解していただけないんですの」
「……そうなの?」
「はい。パーティーが終わった後に、ヘイスト様をお説教していたのですが、ファブロー公爵からはやり過ぎだと言われまして…」
お説教にやり過ぎとかいうのがあるのかしら…?
不思議に思っていると、ミシェルが自分から話をしてくれる。
「頭を冷やさせる為に色々とお仕置きをしたんですの」
「お、お仕置き…? お説教ではなく…?」
「もちろん、お説教は致しましたわ。でも、それだけではわからないようでしたから…」
ミシェルはにたりと笑った。
彼女が一体、何をしたかはわからない。
というか、聞くのが怖かったので、それ以上は深くは聞かなかった。
ファブロー公爵からやり過ぎだと言われる上に、ファブロー公爵でさえ、ミシェルを止められないという事よね…?
彼女は侯爵令嬢だし、ファブロー公爵なら彼女を注意する事が出来ると思うのだけれど…。
ただ、わたしが首を突っ込む話でもないと考えて、自分がしなければならない事に集中する様にしていた、ある日の事。
ミシェルがお休みの日に、息抜きに他の侍女を連れて教会に併設されている図書館に行く事にした。
城の中にも図書館はあるのだけれど、娯楽的な本は置いていない。
わたしがここに来る目的としているのは、庶民の女性が好むロマンス小説の本を借りる為だった。
この国の教会図書館はメインは平民の為だから、ありとあらゆる本が置いてあり、ロマンス小説などもたくさん置かれている。
王太子の婚約者という事で、平民が使える時間よりも朝早い時間に中に入らせてもらい、本当の開館時間までは貸し切りという特別待遇をしてもらっている。
けれど、あまり長居はせずに、借りたい本を借りて、自分の部屋で読むようにしている。
侍女に頼んでも良いのだけれど、ロマンス小説の好みを一から十まで侍女に話すのは少し恥ずかしかった。
図書館には10日に一度くらいのペースで通っていて、教会には次に来る日を連絡しているので、わたしが行くといつもなら神官の人は笑顔で出迎えてくれるのだけれど、今日はいつもと違って、どこか慌てた顔をしてわたしを出迎えてくれた。
「ああ、アニエス様…、入れ違いになってしまったのですね」
「……どういう事かしら?」
意味がわからなくて聞き返すと、神官が答えてくれる。
「教会の方にファブロー公爵令息がいらっしゃってるんです。突然、いらっしゃったのでアニエス様へ急いで連絡を入れようと早馬を走らせたのですが…」
「そうなんですね…。しょうがないわ。あの、ヘイスト様は今はどちらに?」
「教会内で懺悔をしておられます」
「ざ、懺悔…!?」
あのヘイスト様が…?
あまりの驚きに大きな声で聞き返してしまった。
「はい。詳しくはお話できませんが、ここ最近、通われる様になったのです。いつもは昼過ぎにしか来られないのですが、今日に限っては早朝からいらっしゃって…。申し訳ございません」
「謝らなくても良いですよ…。ただ、今日は帰った方が良いのでしょうね?」
そう尋ねた時だった。
祈りの間の扉が開き、ヘイスト様が中から出てくると、わたしの姿を見て立ち止まった。
これは良くない状況かもしれないわ…。
パーティーの日からかなり経っているせいかもしれないけれど、ヘイスト様の顔色は悪く、まるで病人のように痩せ細っていた。
学生時代のキラキラしていたヘイスト様とはまるで別人だった。
「あ、アニエス…! 助けてほしい…! ミシェルを…! ミシェルをどうにかしてくれないか…!」
「アニエス様、危険です! こちらへ!」
わたしに付いていてくれている騎士が馬車に戻る様に誘導してくれるので、逆らわずに歩く。
「アニエス…! このままでは、僕はミシェルに…!」
ヘイスト様が追いかけてこようとしたけれど、足が絡まってしまったのか、何もないところでコケてしまわれた。
「アニエス…! 待ってくれ…! せめて、兄上と…、兄上と話をさせてくれ! 赤い瞳を持つ兄上よりももっと酷い人間がいるんだ!」
それはきっとミシェルの事なのだろうと思ったけれど、詳しい話を聞く事もなく、わたしは騎士に促されて馬車に乗り込んだ。
「先日はヘイスト様が申し訳ございませんでした」
「気にしないで。そういう人だという事は知っていたから」
「ですが、ジェレミー殿下にあのような事を仰るだなんて信じられませわ! 昨日の内にお説教をしておきましたから、今後はあの様な事はありませんから、ジェレミー殿下にお許しいただければいいんですけれど…」
「……お説教?」
気になったので聞き返すと、ミシェルは笑顔で頷いてから言う。
「はい。聞き分けの悪い人にはお説教が必要ですわよね? もう子供ではないのですから、いつまでも甘い事ばかり言っていてはいけませんわ」
「そ…、そうね…。ヘイスト様は次期当主だし、何より、あなたの旦那様になるのだものね」
苦笑しながら同意すると、ミシェルが花開く様な笑みを浮かべる。
「ご理解いただけて嬉しいですわ。中々、周りには理解していただけないんですの」
「……そうなの?」
「はい。パーティーが終わった後に、ヘイスト様をお説教していたのですが、ファブロー公爵からはやり過ぎだと言われまして…」
お説教にやり過ぎとかいうのがあるのかしら…?
不思議に思っていると、ミシェルが自分から話をしてくれる。
「頭を冷やさせる為に色々とお仕置きをしたんですの」
「お、お仕置き…? お説教ではなく…?」
「もちろん、お説教は致しましたわ。でも、それだけではわからないようでしたから…」
ミシェルはにたりと笑った。
彼女が一体、何をしたかはわからない。
というか、聞くのが怖かったので、それ以上は深くは聞かなかった。
ファブロー公爵からやり過ぎだと言われる上に、ファブロー公爵でさえ、ミシェルを止められないという事よね…?
彼女は侯爵令嬢だし、ファブロー公爵なら彼女を注意する事が出来ると思うのだけれど…。
ただ、わたしが首を突っ込む話でもないと考えて、自分がしなければならない事に集中する様にしていた、ある日の事。
ミシェルがお休みの日に、息抜きに他の侍女を連れて教会に併設されている図書館に行く事にした。
城の中にも図書館はあるのだけれど、娯楽的な本は置いていない。
わたしがここに来る目的としているのは、庶民の女性が好むロマンス小説の本を借りる為だった。
この国の教会図書館はメインは平民の為だから、ありとあらゆる本が置いてあり、ロマンス小説などもたくさん置かれている。
王太子の婚約者という事で、平民が使える時間よりも朝早い時間に中に入らせてもらい、本当の開館時間までは貸し切りという特別待遇をしてもらっている。
けれど、あまり長居はせずに、借りたい本を借りて、自分の部屋で読むようにしている。
侍女に頼んでも良いのだけれど、ロマンス小説の好みを一から十まで侍女に話すのは少し恥ずかしかった。
図書館には10日に一度くらいのペースで通っていて、教会には次に来る日を連絡しているので、わたしが行くといつもなら神官の人は笑顔で出迎えてくれるのだけれど、今日はいつもと違って、どこか慌てた顔をしてわたしを出迎えてくれた。
「ああ、アニエス様…、入れ違いになってしまったのですね」
「……どういう事かしら?」
意味がわからなくて聞き返すと、神官が答えてくれる。
「教会の方にファブロー公爵令息がいらっしゃってるんです。突然、いらっしゃったのでアニエス様へ急いで連絡を入れようと早馬を走らせたのですが…」
「そうなんですね…。しょうがないわ。あの、ヘイスト様は今はどちらに?」
「教会内で懺悔をしておられます」
「ざ、懺悔…!?」
あのヘイスト様が…?
あまりの驚きに大きな声で聞き返してしまった。
「はい。詳しくはお話できませんが、ここ最近、通われる様になったのです。いつもは昼過ぎにしか来られないのですが、今日に限っては早朝からいらっしゃって…。申し訳ございません」
「謝らなくても良いですよ…。ただ、今日は帰った方が良いのでしょうね?」
そう尋ねた時だった。
祈りの間の扉が開き、ヘイスト様が中から出てくると、わたしの姿を見て立ち止まった。
これは良くない状況かもしれないわ…。
パーティーの日からかなり経っているせいかもしれないけれど、ヘイスト様の顔色は悪く、まるで病人のように痩せ細っていた。
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「あ、アニエス…! 助けてほしい…! ミシェルを…! ミシェルをどうにかしてくれないか…!」
「アニエス様、危険です! こちらへ!」
わたしに付いていてくれている騎士が馬車に戻る様に誘導してくれるので、逆らわずに歩く。
「アニエス…! このままでは、僕はミシェルに…!」
ヘイスト様が追いかけてこようとしたけれど、足が絡まってしまったのか、何もないところでコケてしまわれた。
「アニエス…! 待ってくれ…! せめて、兄上と…、兄上と話をさせてくれ! 赤い瞳を持つ兄上よりももっと酷い人間がいるんだ!」
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