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32 世の中には多くいるものなんですね
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「どうして、犬嫌いの方がわざわざ、ルシエフ邸にやって来るのでしょうか」
「経費削減というやつかな」
ロード様に詳しい話を聞いてみると、公爵家の警備面が目当てということだった。
今回、ルシエフ邸にやってくる予定のスカディ・ロウス様の住む国、ネイナカ国は貧しい国として世界的に有名な国だ。
そのため、各国から金銭面だけでなく、物資や技術提供など色々な支援を受けている。
そんなネイナカ国に我が国がすることになった支援の一つが、スカディ殿下を一定期間だけ、我が国の学園に通わせることだった。
国にお金がないのだから、警備を雇うお金はないし、住む場所や食事もこちら側が提供することになる。
ネイナカ国には、貴族が通えるようなセキュリティのしっかりした学園はないから、各国を周って勉強をしているということだった。
先代の国王が暴君だったため、廃位させて国の立て直しをさせようとした各国だったけれど、新たな王族となったのがロウス家で彼らは元々の王家の親戚だった。
血筋を気にする国民が多く、王家に関わりのない家が王位につくことに、多くの国民が難色を示したのだそう。
私ならば全く違う血筋の人が新たな国王になってくれたら良いと思うんだけど、ネイナカ国の国民の人はそうは思わなかった。
多くの国がネイナカ国を援助しているので、期間を定めてどこかの国が受け入れ、その期間が終われば違う国が受け入れるということが会議で決定され、次の期間が私たちの国であるミール王国だった。
「他の公爵家が受け入れるのでは駄目だったんでしょうか」
「彼を受け入れられる学園が、ルシエフ邸の近くの学園しかないんだそうだ。そこには寮もあるけど、王子を寮に入れて、何かあった時に責任を取りたくないと学園側が拒否してる。兄上も王命ということで学園側に強く言えばいいところなんだろうけど、即位したばかりだし、国民に悪い印象を与えたくないんだろうな」
「気持ちはわからなくはないですが、犬を自由にさせるなはおかしいです」
「僕もそう思う。だから、彼に滞在してもらうのは、応接室や客間がある西側にするつもりだ。エントランスホールは、彼らが動くであろう時間帯はメルとハヤテを庭で散歩させるか、もしくは部屋から出さない時間にする」
「姿が見えなければ何も言われませんよね」
私の太腿の上に乗っているハヤテくんを撫でながら、向かい側に座っているロード様に尋ねた。
ロード様は彼の足にぴったりと寄り添って座っている、メルちゃんの頭を撫でてから頷く。
「そうしてもらう。悪いけど、その時間帯はメルとハヤテと一緒にいてあげてくれないか。僕もできる限りいるようにする」
「承知いたしました。特に用事があるわけでもないので、一緒に遊ばせてもらいます」
「兄上の顔も立てないといけないけど、メルとハヤテは家族だからね。向こうにも妥協してもらわないといけないところはしてもらわないといけないし、このことについては兄上には了承を得たよ。受け入れてくれるだけでも有り難いと言っていた」
「あの、ロード様、ここだけのお話にしていただきたいんですが」
「どうした?」
「厚かましいことを言ってくる人って、思った以上に世の中には多くいるものなんですね」
今回のスカディ殿下の話を聞いて、お姉様たちのことを思い出した。
なぜ、私がそんなことを口にしたのか、ロード様はわかってくれたようで苦笑する。
「言ったもの勝ちみたいなところがあるからな。それを認めてばかりじゃいけないから、こっちもある程度のことは言わせてもらう。それから、彼の留学期間は約100日。その後には、また違う国に移動するから、その間だけ協力してもらえると助かる」
「承知いたしました」
私が大きく頷くと、ロード様は安堵したような表情になった。
それから約10日後、スカディ様とお付きの人が我が家にやって来た。
私はまだ婚約者の立場なので、お客様扱いだということと、使用人たちがスカディ殿下たちを出迎えている間、メルちゃんとハヤテくんの相手をする人が必要だったため、出迎えには行かなかった。
あとで、ロード様が婚約者として私を二人に紹介してくださるとのことだった。
部屋にいるか、中庭にいてほしいと言われたので、ロード様たちが応接室で話をしている間に、部屋から中庭に出た。
メルちゃんたちはお客様が来ていることに匂いで気がついてはいるみたいだ。
でも、散歩のほうが楽しいらしく、いつも通り元気に散歩をしてくれた。
外にある時計を見ると、お昼の時間になっていた。
休憩を入れて一時間くらい散歩をしていたことと、この時間はダイニングルームで昼食をとっているはずなので、今のうちに屋敷内に戻ろうとした。
すると、なぜか中からスカディ殿下と思われる方が出てきて、ポーチで鉢合わせしてしまったのだった。
「経費削減というやつかな」
ロード様に詳しい話を聞いてみると、公爵家の警備面が目当てということだった。
今回、ルシエフ邸にやってくる予定のスカディ・ロウス様の住む国、ネイナカ国は貧しい国として世界的に有名な国だ。
そのため、各国から金銭面だけでなく、物資や技術提供など色々な支援を受けている。
そんなネイナカ国に我が国がすることになった支援の一つが、スカディ殿下を一定期間だけ、我が国の学園に通わせることだった。
国にお金がないのだから、警備を雇うお金はないし、住む場所や食事もこちら側が提供することになる。
ネイナカ国には、貴族が通えるようなセキュリティのしっかりした学園はないから、各国を周って勉強をしているということだった。
先代の国王が暴君だったため、廃位させて国の立て直しをさせようとした各国だったけれど、新たな王族となったのがロウス家で彼らは元々の王家の親戚だった。
血筋を気にする国民が多く、王家に関わりのない家が王位につくことに、多くの国民が難色を示したのだそう。
私ならば全く違う血筋の人が新たな国王になってくれたら良いと思うんだけど、ネイナカ国の国民の人はそうは思わなかった。
多くの国がネイナカ国を援助しているので、期間を定めてどこかの国が受け入れ、その期間が終われば違う国が受け入れるということが会議で決定され、次の期間が私たちの国であるミール王国だった。
「他の公爵家が受け入れるのでは駄目だったんでしょうか」
「彼を受け入れられる学園が、ルシエフ邸の近くの学園しかないんだそうだ。そこには寮もあるけど、王子を寮に入れて、何かあった時に責任を取りたくないと学園側が拒否してる。兄上も王命ということで学園側に強く言えばいいところなんだろうけど、即位したばかりだし、国民に悪い印象を与えたくないんだろうな」
「気持ちはわからなくはないですが、犬を自由にさせるなはおかしいです」
「僕もそう思う。だから、彼に滞在してもらうのは、応接室や客間がある西側にするつもりだ。エントランスホールは、彼らが動くであろう時間帯はメルとハヤテを庭で散歩させるか、もしくは部屋から出さない時間にする」
「姿が見えなければ何も言われませんよね」
私の太腿の上に乗っているハヤテくんを撫でながら、向かい側に座っているロード様に尋ねた。
ロード様は彼の足にぴったりと寄り添って座っている、メルちゃんの頭を撫でてから頷く。
「そうしてもらう。悪いけど、その時間帯はメルとハヤテと一緒にいてあげてくれないか。僕もできる限りいるようにする」
「承知いたしました。特に用事があるわけでもないので、一緒に遊ばせてもらいます」
「兄上の顔も立てないといけないけど、メルとハヤテは家族だからね。向こうにも妥協してもらわないといけないところはしてもらわないといけないし、このことについては兄上には了承を得たよ。受け入れてくれるだけでも有り難いと言っていた」
「あの、ロード様、ここだけのお話にしていただきたいんですが」
「どうした?」
「厚かましいことを言ってくる人って、思った以上に世の中には多くいるものなんですね」
今回のスカディ殿下の話を聞いて、お姉様たちのことを思い出した。
なぜ、私がそんなことを口にしたのか、ロード様はわかってくれたようで苦笑する。
「言ったもの勝ちみたいなところがあるからな。それを認めてばかりじゃいけないから、こっちもある程度のことは言わせてもらう。それから、彼の留学期間は約100日。その後には、また違う国に移動するから、その間だけ協力してもらえると助かる」
「承知いたしました」
私が大きく頷くと、ロード様は安堵したような表情になった。
それから約10日後、スカディ様とお付きの人が我が家にやって来た。
私はまだ婚約者の立場なので、お客様扱いだということと、使用人たちがスカディ殿下たちを出迎えている間、メルちゃんとハヤテくんの相手をする人が必要だったため、出迎えには行かなかった。
あとで、ロード様が婚約者として私を二人に紹介してくださるとのことだった。
部屋にいるか、中庭にいてほしいと言われたので、ロード様たちが応接室で話をしている間に、部屋から中庭に出た。
メルちゃんたちはお客様が来ていることに匂いで気がついてはいるみたいだ。
でも、散歩のほうが楽しいらしく、いつも通り元気に散歩をしてくれた。
外にある時計を見ると、お昼の時間になっていた。
休憩を入れて一時間くらい散歩をしていたことと、この時間はダイニングルームで昼食をとっているはずなので、今のうちに屋敷内に戻ろうとした。
すると、なぜか中からスカディ殿下と思われる方が出てきて、ポーチで鉢合わせしてしまったのだった。
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