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33 失礼にもほどがあるわ
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メルちゃんとハヤテくんは「お客様だ!」と言わんばかりに、腰まである金色のストレートの髪に青色の瞳を持つ少年の所へ走っていこうとしたので、リードを強く引いて止める。
「駄目よ!」
メルちゃんは私の言葉にすぐに反応して足を止めてくれた。
でも、ハヤテくんは興奮していて、私の声など耳に届いていない。
私を引きずらんばかりの勢いで、スカディ様に近付こうとしている。
すると、スカディ様が涙目になって叫んだ。
「な、なんで、なんで犬がいるんだよぉぉ!?」
「スカディ様への嫌がらせですわね!? そんなことを考えるような使用人は処分してもらいまいましょう!」
「うわぁん、レジー!」
後から女性が出てきたかと思うと、とんでもない発言をしてきた。
そんな彼女にスカディ様は泣きながらしがみついている。
一体、どうなってるのよ。
困惑していると、スカディ様に抱きつかれている気の強そうな女性はピンク色のつり上がった目をこちらに向けて口を開く。
「あなたは我が国の王子を馬鹿にしました! 責任を取っていただかなければなりません!」
「馬鹿になんてしていません!」
「屋敷内で犬を放し飼いにするなって言っていたのに!」
「放し飼いにはしておりません。リードをつけておりますし、ここは屋敷の外です。ですが、すぐに移動いたします」
言い返すと、瞳と同じピンク色の髪をポニーテールにしている少女は、目を吊り上がらせて言う。
「あなた、生意気ですね。この方を誰だと思ってるんです?」
「スカディ殿下でしょうか」
「わかってるんじゃないですか!」
「不快な思いをさせてしまったようでしたら申し訳ございません」
この時間にここにいるあなたたちのほうがおかしいと言いたいけれど、相手は王子様なのでさすがに言えなかった。
苛立つ気持ちを抑えて頭を下げると、ハヤテくんは私の様子を見て、どうやら相手が良いお客様ではないと判断したみたいだった。
あんなにも彼らに近づこうとしていたのに、私の所へやって来て「くぅん」と鳴いた。
メルちゃんも近寄ってきて、心配そうに私を見上げている。
大丈夫だと声を掛けてあげたいけれど、今は出来ない。
すると、すぐにスカディ様たちが出できた玄関の扉が開き、ロード様がポーチに出てきた。
「スカディ殿下! まだ説明の途中でしたのに、私が席を外したからといって勝手に出歩くのはおやめ下さい」
「これから、この屋敷は僕の家のようなものだろう? それなら勝手に動いたっていいじゃないか! 敷地内から出やしないよ!」
「少し用事が出来たので席を外しますが、すぐに戻りますので応接室でお待ち下さい、とお願いしたはずです」
ロード様の言葉に、スカディ様は不服そうな顔をした。
スカディ様の年齢は。たしか16歳だ。
子供といえば子供の年齢だけれど、ここで待っていてほしいと言われたなら、子供だって待っていると思う。
「それよりも、どうして犬がウロウロしているんだ!」
「犬については要請があっただけで命令ではございません。こちらからも犬がいるから勝手に出歩かないでくれとお願いしたはずです」
「偉そうにしないでください! たかが、元第2王子の分際で」
ロード様に食ってかかったのはお付きの女性だった。
失礼にもほどがあるわ。
さすがに言い返そうとすると、ロード様が口を開く。
「現在は公爵です。スカディ殿下に偉そうにする権利はないかもしれませんが、あなたに偉そうにされる筋合いもない」
「本当に偉そうな人ね! 客を迎える気はあるの?」
「話にならないな。スカディ殿下、何でもかんでも、そちらの言うことをこちら側が聞くと思いますか? しかも、あなたの言葉ではなく付き人の言葉をです。もし、私の対応が気に入らないというのであれば出ていってもらってかまいません」
ロード様が厳しい口調で言うと、スカディ殿下はあたふたしながら首を横に振る。
「さ、さすがにそれは良くないだろうと思う。支援を打ち切られたら困るし、誰も受け入れてくれないよ」
「国民への支援はやめませんよ。そちらの王家に対しての支援を我が国からは支援しなくなる可能性はありますが」
「それはもっと困るよ! どうやって生きていったらいいのかわからない!」
ロード様は現国王陛下から、スカディ殿下たちが好き勝手に動くようなら、王家への支援をやめると伝えても良いと許可を受けている。
元々、支援されたお金で暮らしていて、自分たちは何もしようとしないから、王家に対しての支援を打ち切ろうかという話は他の国との会議でも出ているんだそうだ。
だから、ロード様は付き人の無礼をネタに脅しをかけたみたいだった。
「レジー、謝ってくれよ」
「どうしてですか? 私は偉いんですけど」
「僕は偉いかもしれないけど、君は偉くない」
「どうしてですか! あなたの付き人なんですから、私も偉いんですよ! 私よりも偉いのは、各国の国王陛下くらいです。だって、王子のあなたと同レベルで偉いんですから」
主従関係が逆転してしまっているし、レジーという女性が何を言っているのかわからないわ。
他の国が100日間ずつしか預からない理由がわかった気がした。
「君がそんなんだから、僕たちは一つの所に長くいられないんじゃないか!」
「そんなの知りません! あなたは私がいないと生きていけないくせに!」
「レジーがいないと寂しいのは確かだけどさぁ」
スカディ様はレジーさんに強く言えないようだった。
「とにかくお二人共、中へお入り下さい。それとも、国にお帰りになりますか? 帰るまでの馬車や護衛くらいはお貸しできますよ」
ロード様が冷たい口調で尋ねると、スカディ様はしゅんと肩を落としてお願いする。
「ここにいさせて下さい」
「スカディ様、どうしてお願いするんですか!? お願いしてくるのは向こうでしょう!」
「ちょっとレジーは黙っててくれ!」
スカディ様はレジーさんに叫ぶと、私にも頭を下げる。
「勝手に出歩いてごめんなさい」
「い、いえ、こちらこそ、驚かせてしまったようで申し訳ございませんでした」
一礼すると、レジーさんが不服そうな顔をして私やロード様、そしてスカディ様を睨んでいるのがわかった。
「駄目よ!」
メルちゃんは私の言葉にすぐに反応して足を止めてくれた。
でも、ハヤテくんは興奮していて、私の声など耳に届いていない。
私を引きずらんばかりの勢いで、スカディ様に近付こうとしている。
すると、スカディ様が涙目になって叫んだ。
「な、なんで、なんで犬がいるんだよぉぉ!?」
「スカディ様への嫌がらせですわね!? そんなことを考えるような使用人は処分してもらいまいましょう!」
「うわぁん、レジー!」
後から女性が出てきたかと思うと、とんでもない発言をしてきた。
そんな彼女にスカディ様は泣きながらしがみついている。
一体、どうなってるのよ。
困惑していると、スカディ様に抱きつかれている気の強そうな女性はピンク色のつり上がった目をこちらに向けて口を開く。
「あなたは我が国の王子を馬鹿にしました! 責任を取っていただかなければなりません!」
「馬鹿になんてしていません!」
「屋敷内で犬を放し飼いにするなって言っていたのに!」
「放し飼いにはしておりません。リードをつけておりますし、ここは屋敷の外です。ですが、すぐに移動いたします」
言い返すと、瞳と同じピンク色の髪をポニーテールにしている少女は、目を吊り上がらせて言う。
「あなた、生意気ですね。この方を誰だと思ってるんです?」
「スカディ殿下でしょうか」
「わかってるんじゃないですか!」
「不快な思いをさせてしまったようでしたら申し訳ございません」
この時間にここにいるあなたたちのほうがおかしいと言いたいけれど、相手は王子様なのでさすがに言えなかった。
苛立つ気持ちを抑えて頭を下げると、ハヤテくんは私の様子を見て、どうやら相手が良いお客様ではないと判断したみたいだった。
あんなにも彼らに近づこうとしていたのに、私の所へやって来て「くぅん」と鳴いた。
メルちゃんも近寄ってきて、心配そうに私を見上げている。
大丈夫だと声を掛けてあげたいけれど、今は出来ない。
すると、すぐにスカディ様たちが出できた玄関の扉が開き、ロード様がポーチに出てきた。
「スカディ殿下! まだ説明の途中でしたのに、私が席を外したからといって勝手に出歩くのはおやめ下さい」
「これから、この屋敷は僕の家のようなものだろう? それなら勝手に動いたっていいじゃないか! 敷地内から出やしないよ!」
「少し用事が出来たので席を外しますが、すぐに戻りますので応接室でお待ち下さい、とお願いしたはずです」
ロード様の言葉に、スカディ様は不服そうな顔をした。
スカディ様の年齢は。たしか16歳だ。
子供といえば子供の年齢だけれど、ここで待っていてほしいと言われたなら、子供だって待っていると思う。
「それよりも、どうして犬がウロウロしているんだ!」
「犬については要請があっただけで命令ではございません。こちらからも犬がいるから勝手に出歩かないでくれとお願いしたはずです」
「偉そうにしないでください! たかが、元第2王子の分際で」
ロード様に食ってかかったのはお付きの女性だった。
失礼にもほどがあるわ。
さすがに言い返そうとすると、ロード様が口を開く。
「現在は公爵です。スカディ殿下に偉そうにする権利はないかもしれませんが、あなたに偉そうにされる筋合いもない」
「本当に偉そうな人ね! 客を迎える気はあるの?」
「話にならないな。スカディ殿下、何でもかんでも、そちらの言うことをこちら側が聞くと思いますか? しかも、あなたの言葉ではなく付き人の言葉をです。もし、私の対応が気に入らないというのであれば出ていってもらってかまいません」
ロード様が厳しい口調で言うと、スカディ殿下はあたふたしながら首を横に振る。
「さ、さすがにそれは良くないだろうと思う。支援を打ち切られたら困るし、誰も受け入れてくれないよ」
「国民への支援はやめませんよ。そちらの王家に対しての支援を我が国からは支援しなくなる可能性はありますが」
「それはもっと困るよ! どうやって生きていったらいいのかわからない!」
ロード様は現国王陛下から、スカディ殿下たちが好き勝手に動くようなら、王家への支援をやめると伝えても良いと許可を受けている。
元々、支援されたお金で暮らしていて、自分たちは何もしようとしないから、王家に対しての支援を打ち切ろうかという話は他の国との会議でも出ているんだそうだ。
だから、ロード様は付き人の無礼をネタに脅しをかけたみたいだった。
「レジー、謝ってくれよ」
「どうしてですか? 私は偉いんですけど」
「僕は偉いかもしれないけど、君は偉くない」
「どうしてですか! あなたの付き人なんですから、私も偉いんですよ! 私よりも偉いのは、各国の国王陛下くらいです。だって、王子のあなたと同レベルで偉いんですから」
主従関係が逆転してしまっているし、レジーという女性が何を言っているのかわからないわ。
他の国が100日間ずつしか預からない理由がわかった気がした。
「君がそんなんだから、僕たちは一つの所に長くいられないんじゃないか!」
「そんなの知りません! あなたは私がいないと生きていけないくせに!」
「レジーがいないと寂しいのは確かだけどさぁ」
スカディ様はレジーさんに強く言えないようだった。
「とにかくお二人共、中へお入り下さい。それとも、国にお帰りになりますか? 帰るまでの馬車や護衛くらいはお貸しできますよ」
ロード様が冷たい口調で尋ねると、スカディ様はしゅんと肩を落としてお願いする。
「ここにいさせて下さい」
「スカディ様、どうしてお願いするんですか!? お願いしてくるのは向こうでしょう!」
「ちょっとレジーは黙っててくれ!」
スカディ様はレジーさんに叫ぶと、私にも頭を下げる。
「勝手に出歩いてごめんなさい」
「い、いえ、こちらこそ、驚かせてしまったようで申し訳ございませんでした」
一礼すると、レジーさんが不服そうな顔をして私やロード様、そしてスカディ様を睨んでいるのがわかった。
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