価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

文字の大きさ
40 / 50

32 ルピノの希望

しおりを挟む
 結局、アズが警察の上層部に連絡を入れ、シイナレンラジ家が王家に害をなす人物を匿っている可能性があると伝えた。

 王太子からの連絡を無視できるわけもなく、警察はすぐに動いてくれた。

 シイナレンラジ家と王家の確執をノーラル様は知らなかったらしく、彼女はただ、ルピノを守る為に私に相談したけれど、結果的に、彼女はシイナレンラジ家に対して、恩を仇で返す事になってしまった。

 シイナレンラジ家はルピノについて、そんな事は知らなかったし、ノーラル様の親戚の娘だと思ったから受け入れたと言った。
 ノーラル様はノーラル様でルピノは死んだし、彼女は親戚の娘だと言い張り、ルピノも空気を読んで、自分は身分証の名前である、ピノヨ・サラバと名乗った。

 ノーラル様とサラバ家は実際に遠い親戚で、ピノヨという娘がいるのは確かだった。
 ただ、本物が生きているかはわからない。

 ルピノは死んだことになっているし、私達が深く介入する事もできなかったので、シイナレンラジ家に対して、重い罪を課せる事は出来なかったけれど、ルピノを確保する事は出来た。

 私はその場面を見ていないので、聞いた話でしかないのだけれど、事情を知らないルピノはかなり暴れていたらしく、ノーラル様の名前を呼んで助けを求めていたらしい。

 アズの名前を出さなかったのは、自分の惨めな姿をアズには見られたくなかった?

「ルピノは今、どこにいるのかしら?」
「現在は出入国在留管理局の方にいらっしゃるそうです」
「面会は出来るの?」
 
 朝、王太子妃教育の授業が始まる前にアザレアに尋ねると、彼女は少し驚いた顔をして聞き返してくる。

「ルリ様、ルピノ様に会われるおつもりなのですか?」
「違うわ。問題の伯父様が現れるんじゃないかと思って気になったの。せっかく助けたのに、彼がどうにかして連れ帰ったりしたら大変じゃないの」
「そちらにつきましては、面会が許されるのはノーラル様のみと手配してあるそうなので大丈夫かと思われます」

 アザレアには申し訳ないけれど、聞きたいことを一気に聞いてしまう事にする。

「ルピノはどうして自分が捕まっているのかはわかってるの?」
「さすがにそれはわかっているようです。ですので、ノーラル様に助けを求めているようです。罪人扱いになっている事をアズアルド殿下に知られたら嫌われてしまうと思っているようですね」
「という事は、ルピノはまだアズを諦めていないの?」
「そうかと思われます。ですが、ルピノ様は、この場を乗り切ったとしても、なんといってアズアルド殿下の目の前に現れるつもりだったのかは謎です」

 アザレアが首を傾げるので、苦笑して言う。

「ルピノはアズが自分の運命の人だと思っているから、たとえ違う名前で出会っても、アズは自分だとわかってくれると思っていたのかもしれないわね」
「どうしたら、そんな風に思えるのでしょうか……。ルピノ様の気持ちが理解できません」
「それが普通よ。それにたとえ理解できたとしても納得はできないと思うわ」

 アザレアは私の言葉を聞いて、大きく頷いた。

「ルピノは最終的には強制送還されるのかしら」
「今のところ、ルピノ様は身分証の女性の名前を名乗っていますので、このままいけば移民申請をするのではないかと」
「国に帰れば命が危険だということ? でも、ルピノじゃないのだから、何を危険だと言っているのかしら?」
「その件なんですけれど……」

 アザレアがなぜか困った顔をする。

「どうかしたの?」
「ソラウが演劇などの娯楽を庶民にも広めていこうとしているのはご存知ですか?」
「ええ。聞いた事があるわ……って、まさか!?」

 元々、あの子は自分の顔を可愛いと思っているし、自信もあった。
 だけど、貴族だからと諦めていた夢があった。

「アクターとして、この国で働きたいと言っているそうです」

 誰かの入れ知恵なのかどうなのかはわからない。

 そして、移民をソラウは受け入れているし、申請も犯罪者以外には、そう厳しくない。
 ルピノは人の名前を名乗っているのだから、本当は犯罪者なのだけれど、今の彼女はピノヨ・サラバだから、この国で働きたいと申請すれば受け入れる可能性が高い。

 私やアズが出ていけば早いことなのかもしれないけど、王族がたった1人の国民の為に動いたと言われる可能性がありそうだから難しい。

 ルピノは心を入れ替えて生きていくつもりなの?
 それとも、他に何かを考えているの?

 もしくは、シイナレンラジ家が彼女に何か指示をした?

「ところで、ルピノ様は演技はお上手なのですか?」
「演技はわからないけれど、あの子は賢くないから台詞を覚えられないと思うわ」

 アザレアの質問にはっきりと答えると、さすがのアザレアも呆れ顔になってしまった。


※ 次話はルピノ視点になります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。 そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。 バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。 逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

処理中です...