価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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36 元妹の悲鳴

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「どういう事ですか? 他国の話なのにルリ様が介入できるんですか?」
「私が介入しなくても、ヤイネバ家には敵がいるの。あなたのせいで、お祖父様達は苦境に立たされるでしょう。見捨てるか、あなたと一緒に地に落ちるつもりなのかはわからないけれど」

 私の言葉を聞いて、ルピノは首を何度も横に振る。

「お祖父様はやり手だと聞いてますから、そんなことはありえません」
「でもね、ルピノ。それはあなたが考えていることでしょう?」
「……どういうことですか?」
「あなたの考えているとおりに物事はうまく運ばないという事よ」
「……意味がわかりません」

 ルピノは不満そうに言った。

 ルピノはどうしてわからないのかしら。

 今までは、ヤイネバ侯爵達は弱みを握られないように上手く行動してきた。
 だから、罪に問われなかった。

 今回は目に見えて、ヤイネバ侯爵家が悪い。
 揉み消そうにも揉み消せない状況に陥っている。

 それなのに、まだ上手くいくと思っているのかしら。

 もう、ルピノと話をしても無駄ね。

「とにかく、話を聞いたから、私はもう行くわね」
「ちょっと待って下さい!」

 踵を返して牢から離れようとすると、ルピノに呼び止められたので、振り返る。
 彼女は鉄格子をつかんでお願いしてきた。

「鏡を貸してもらえませんか? なぜか皆、私の顔を見て笑うんです。そんなに薄汚れていますか?」
「そうね。薄汚れてはいるわ。それに、私は笑うものではないと思うけれど、今までのあなたとは想像もつかないくらいに、顔が変わってしまってる」
「そんな!? どうしよう! 治るかしら?」
「さあ、どうかしらね? 見たら、ショックを受けるかもしれないけれど、それでも見たい?」
「……ええ。どうせ脅しでしょう?」

 ルピノは苦笑して頷いた。

「わかったわ。用意するわ。じゃあね、ルピノ」
「また、会いましょう、ルリ様」
「私はもう会う気はないわ」

 そう伝えて、近くにいたアザレアに尋ねる。

「手鏡は持っている?」
「ございます」
「かわりに新しい鏡を買うから、もらっても良い?」
「もちろんです」

 アザレアは抱えていた小さなポーチから手鏡を取り出した。

 礼を言って受け取ってから、近くにいた見張りをしている男性に声をかける。

「何をするかわからないから、様子がおかしくなったら、すぐに鏡を取り上げて」
「かしこまりました」

 頷いたのを確認してから、鉄格子の隙間から、手鏡を彼女に渡した。

「後悔しないでね?」
「するわけないわ」

 私の言葉に、ルピノはごくりとつばをのみこんだあと、大きく頷いた。

「行きましょう」

 ルピノから離れ、アザレアを促して歩き始める。

 するとすぐに悲鳴が上がった。

「な、何なのよこれ!? 違う! こんなの私じゃない! ちょっと! 違う鏡を持ってきてよ! これは私じゃない!」

 ルピノの泣き叫ぶ声が地下牢内に響き渡った。

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