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6 公爵から父への警告
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私とお父様の会話はしっかり閣下の耳に届いていました。
「保護したのは謝礼目的だって?」
閣下に凄まれたお父様は震え上がり、その場に跪いて頭を下げます。
「ま、まさか保護してくださったのがトレジット公爵閣下だとは思っておりませんでした! 申し訳ございません!」
「僕に謝らなくていい。それよりも、どうしてシアリンが一人でこんな所にいたのか知りたい」
「む、娘と湖を見に来たのですが、用事ができまして、少しだけここを離れておったのです。待っていろと言ったのですが待てなかったようで……」
「彼女は湖に落ちたらしいけど、どこで待っているように伝えた?」
お父様は目を泳がせながら、とんでもないことを話し始めます。
「決して一人で湖に近づいてはいけないと伝えておったのです! ですが、じ……じつは、その、お恥ずかしい話なのですが、娘は自分を傷つけることが好きなのです。苦しい思いがしたくて飛び込んだのでしょう」
「はい!? 私はそのような趣味はありません!」
「わかってるよ」
お父様にではなく、閣下に訴えると私の頭を優しく撫でてくれました。
「テイズ伯爵、君の言うことが正しいのなら、余計に一人にさせるほうがおかしいんじゃないのか?」
「そ、それはどういうことでしょう」
「自分を傷つけることが好きな娘を一人にするなんてありえない。間違って死んでしまう可能性もあるじゃないか。いや、それよりも傷つけさせるべきではない。自分が忙しいなら騎士や使用人に付いておいてもらうべきだろう」
「そ、それは、そうなのですが……」
咄嗟についた嘘なので、辻褄のあうことを言えないようです。
湖に落とすなんて普通の人がやることではありません。考えないようにしていましたが、閣下の言葉を聞いて確信しました。
お父様は私が死んでも良いと思っているのですね。
私ほどではありませんが、お姉様も予知夢を見れます。私に何かあっても代わりはいるということでしょうか。
「彼女への対応を改善できないと言うのなら、我が家で預かる」
「それは困ります! この子は私の大事な娘なんです!」
お父様は私を抱き寄せて叫びました。そんなお父様を閣下は蔑んだ目で見つめます。
「そうは思えないが?」
「本当です! 私の考えが至りませんでした! 今回は……っ、今回だけは何卒お許しください!」
「……シアリン」
閣下が私の意見を求めてきました。
お父様が私のことを愛していないことは、今回の件でわかりました。
帰らないほうが良いのでしょうか。
お父様は私の迷いを感じ取ったのか、こう言いました。
「お前が帰らないとお祖母様が悲しむぞ」
その発言で、私の心は家に帰らなければという思いでいっぱいになりました。
お祖母様はお母様のお願いで、屋敷の隣にある小さな家に暮らしています。というのも、お祖母様はボケてしまっているのです。
私以外の人のことを忘れてしまっていて、メイドからも冷たくあしらわれているのです。
お姉様のことは私と仲が悪くなるまでは覚えていましたが、今では「悪いことをする子は許さない!」と見るだけで怒ってしまいます。
そんなこともあって、お姉様もお祖母様を嫌っています。私がいなくなれば、きっと私を探すことでしょう。一人ぼっちにするわけにはいきません。
「家に帰ります」
「わかった」
閣下は私には優しく微笑んでくれましたが、お父様に視線を移した時には、その笑みは一瞬にして冷たいものに変わりました。
「僕が公爵であり、国王の従弟であることを忘れるな。シアリンの様子が少しでもおかしいと感じたら……」
「はっ……は、はいっ! 今まで以上に大事にいたします!」
お父様は地面に額を擦り付けて言いました。閣下はまだ満足がいっていないようでしたが、私に目を向けます。
「シアリン、辛くなったらいつでもうちにおいで。お祖母様のことが気になるなら、一緒に来てもいいよ」
「……ありがとうございます」
「遠慮しないでね」
閣下のおかげで、この日以来、お父様が嫌なことをしてくることはなくなりました。そして、数日後にはお祖母様に付いていたメイドが代わり、とても優しい人たちになりました。それと同時にお祖母様は誰かと文通を始めたのです。
送り先を確認すると、私の知らない女性宛でしたが、昔の友人のことを思い出したのかもしれないと呑気に考えていました。
その相手がトレジット公爵閣下だということを知るのは、それから6年後のことです。
陰で私を目の敵にしていたお姉様が、予知夢を書いた私のメモを全て奪い、今までの予知夢は自分が私に伝えたものだと嘘を言い出したこと。婚約破棄をされること。そして、ジェリク様の元に嫁ぐこと。
6年後に一気に私の人生が変わるのでした。
「保護したのは謝礼目的だって?」
閣下に凄まれたお父様は震え上がり、その場に跪いて頭を下げます。
「ま、まさか保護してくださったのがトレジット公爵閣下だとは思っておりませんでした! 申し訳ございません!」
「僕に謝らなくていい。それよりも、どうしてシアリンが一人でこんな所にいたのか知りたい」
「む、娘と湖を見に来たのですが、用事ができまして、少しだけここを離れておったのです。待っていろと言ったのですが待てなかったようで……」
「彼女は湖に落ちたらしいけど、どこで待っているように伝えた?」
お父様は目を泳がせながら、とんでもないことを話し始めます。
「決して一人で湖に近づいてはいけないと伝えておったのです! ですが、じ……じつは、その、お恥ずかしい話なのですが、娘は自分を傷つけることが好きなのです。苦しい思いがしたくて飛び込んだのでしょう」
「はい!? 私はそのような趣味はありません!」
「わかってるよ」
お父様にではなく、閣下に訴えると私の頭を優しく撫でてくれました。
「テイズ伯爵、君の言うことが正しいのなら、余計に一人にさせるほうがおかしいんじゃないのか?」
「そ、それはどういうことでしょう」
「自分を傷つけることが好きな娘を一人にするなんてありえない。間違って死んでしまう可能性もあるじゃないか。いや、それよりも傷つけさせるべきではない。自分が忙しいなら騎士や使用人に付いておいてもらうべきだろう」
「そ、それは、そうなのですが……」
咄嗟についた嘘なので、辻褄のあうことを言えないようです。
湖に落とすなんて普通の人がやることではありません。考えないようにしていましたが、閣下の言葉を聞いて確信しました。
お父様は私が死んでも良いと思っているのですね。
私ほどではありませんが、お姉様も予知夢を見れます。私に何かあっても代わりはいるということでしょうか。
「彼女への対応を改善できないと言うのなら、我が家で預かる」
「それは困ります! この子は私の大事な娘なんです!」
お父様は私を抱き寄せて叫びました。そんなお父様を閣下は蔑んだ目で見つめます。
「そうは思えないが?」
「本当です! 私の考えが至りませんでした! 今回は……っ、今回だけは何卒お許しください!」
「……シアリン」
閣下が私の意見を求めてきました。
お父様が私のことを愛していないことは、今回の件でわかりました。
帰らないほうが良いのでしょうか。
お父様は私の迷いを感じ取ったのか、こう言いました。
「お前が帰らないとお祖母様が悲しむぞ」
その発言で、私の心は家に帰らなければという思いでいっぱいになりました。
お祖母様はお母様のお願いで、屋敷の隣にある小さな家に暮らしています。というのも、お祖母様はボケてしまっているのです。
私以外の人のことを忘れてしまっていて、メイドからも冷たくあしらわれているのです。
お姉様のことは私と仲が悪くなるまでは覚えていましたが、今では「悪いことをする子は許さない!」と見るだけで怒ってしまいます。
そんなこともあって、お姉様もお祖母様を嫌っています。私がいなくなれば、きっと私を探すことでしょう。一人ぼっちにするわけにはいきません。
「家に帰ります」
「わかった」
閣下は私には優しく微笑んでくれましたが、お父様に視線を移した時には、その笑みは一瞬にして冷たいものに変わりました。
「僕が公爵であり、国王の従弟であることを忘れるな。シアリンの様子が少しでもおかしいと感じたら……」
「はっ……は、はいっ! 今まで以上に大事にいたします!」
お父様は地面に額を擦り付けて言いました。閣下はまだ満足がいっていないようでしたが、私に目を向けます。
「シアリン、辛くなったらいつでもうちにおいで。お祖母様のことが気になるなら、一緒に来てもいいよ」
「……ありがとうございます」
「遠慮しないでね」
閣下のおかげで、この日以来、お父様が嫌なことをしてくることはなくなりました。そして、数日後にはお祖母様に付いていたメイドが代わり、とても優しい人たちになりました。それと同時にお祖母様は誰かと文通を始めたのです。
送り先を確認すると、私の知らない女性宛でしたが、昔の友人のことを思い出したのかもしれないと呑気に考えていました。
その相手がトレジット公爵閣下だということを知るのは、それから6年後のことです。
陰で私を目の敵にしていたお姉様が、予知夢を書いた私のメモを全て奪い、今までの予知夢は自分が私に伝えたものだと嘘を言い出したこと。婚約破棄をされること。そして、ジェリク様の元に嫁ぐこと。
6年後に一気に私の人生が変わるのでした。
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