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8 姉の誤算と母の企み
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その日のうちに国王陛下からサブル殿下との婚約についての確認の連絡がありました。
国王陛下はサブル殿下から聞いた話の全てを鵜呑みにしたわけではないようで、私が望むなら婚約は継続。婚約関係を続けたくない場合は、破棄ではなく解消してくださるとのことでした。
「どういうことなんだ!」
私を談話室に呼びつけたお父様は、届いた書状を私に投げつけて叫びました。
お姉様は部屋の中にいますが、お母様の姿は見えません。いつもならばお姉様にべったりですので違和感があります。
「おい! 聞いているのか!」
「聞いています。どういうことかはお姉様に聞いてくださいませ」
カーペットの上に落ちた書状を拾い、ローテーブルの上に置いて答えると、お父様は目を吊り上げました。
「ラーナは関係ない! お前の話をしているんだ!」
「やめてお父様! シアリンは可哀想なの!」
お姉様はお父様にしがみついて訴えます。
「昔からシアリンは私のことを妬んでいたの。だから、私が見た夢を無理矢理聞き出したり、私よりも優位に立とうとして、トレジット公爵に取り入ろうとしただけ! 何も悪くないわ!」
「私はそんなことはしていません!」
「だってそうとしか考えられないじゃない!」
「何を根拠にそんなことを言うのですか?」
「ジェリク様はもう19歳になるのに婚約者がいないの! それまでに私は何度も釣書を送ったわ! あなたが私の悪口をトレジット公爵に言ったから誤解して認めてくれないのよ!」
お姉様はその場に座り込んで泣き始めました。
19歳にもなって泣けばいいと思ってるのなら呆れてしまいます。ジェリク様に選ばれない理由を私のせいにしないでほしいです。
「トレジット公爵閣下と連絡は取っていますが、お姉様の話題は出していません。嘘だとおっしゃるなら閣下に確認してください」
お父様に伝えたつもりでしたが、お姉様が顔を上げて反応します。
「どうせあなたが言わないでとお願いしているのでしょう? 正直に話してくれるとは思わないわ!」
「それなら誤解だと訴えてくださいませ。何が誤解か聞き返されるでしょうけど」
「私が聞いてみることにしよう」
お父様がそう言うと、お姉様は激しく首を横に振ります。
「お父様! トレジット公爵にそんなことを聞いたら、お父様がまたシアリンをいじめていると思われてしまうわ!」
「そ、そうだな。それは困る」
お父様はあの時以来、閣下の名前を聞くだけで震え上がるようになりました。今も、眉尻を下げて情けない表情です。
お姉様も閣下に連絡を入れられたら、自分の嘘がバレますので必死ですね。
どうせいつかはバレる嘘です。足掻いたって無駄ですのに。
「シアリン! 今なら婚約者のままでいられるんだ。王太子殿下に泣いて謝りなさい。お前が王太子妃になる時には結納金が支払われるんだ。それはかなりの金額になるはずなんだぞ!」
サブル殿下に逡巡する様子があったり、私の頬を打つことがなければ、私はお父様からの訴えを素直に受け入れていたでしょう。
サブル殿下のことを何年も思い続けてきました。彼との幸せな未来を何度想像したことでしょう。
でも、もうやめます。辛くて涙が出そうになりますが忘れます。
好きだった気持ちをゴミ箱にポイします。
それにしても、お父様はお金が目当てなのですね。それなら、これはどうでしょうか。
「あの、提案があるのですが」
「……なんだ」
「サブル殿下はお姉様との婚約を望んでおられました。お姉様には婚約者がいませんし、サブル殿下とお姉様が婚約すればちょうど良いのではないでしょうか」
「なんだって!?」
お父様は目を輝かせて、お姉様を見つめます。
「ラーナ、すごいじゃないか! 王太子殿下に認められたんだな!」
「あ、あのお父様! 私には王太子殿下はもったいなさすぎます!」
「何を言っているんだ。嘘つきのシアリンよりもお前のほうがよっぽど王太子殿下に似合うだろう」
「お姉様、私もそう思いますわ」
にこりと微笑んでみせると、床に座り込んでいたお姉様は立ち上がって宣言します。
「私はジェリク様を愛しているの! 王太子殿下と婚約なんてしません!」
「何を言っているんだ。公爵令息よりも王太子殿下のほうがいいに決まっているだろう! それに予知夢を見られるのはお前しかいないんだ。シアリンが嫁に行けば嘘がバレる。そうなった時、私たちもどうなるかわからない。それなら、予知夢が見れるお前が王太子殿下の嫁に行くほうがいいんだよ」
お姉様も昔は予知夢が見れましたが、今はどうなのでしょうか。まだ、少しでも見ることができるのであれば、嫁いでも誤魔化すことはできるでしょう。
国王陛下には真実を伝え、婚約については解消でお願いしたいという旨の連絡を入れましょう。
ああ、そうです。忘れてはいけません。サブル殿下の婚約者には私よりもお姉様のほうが良いとも伝えなければいけませんね。
乗り気のお父様を必死に説得しようとしているお姉様を滑稽に思いながら、私は黙って部屋を出ました。落ち着いた環境で国王陛下への手紙を書くために、お祖母様の所に行きましょう。
……そういえば、お母様は今頃、何をしているのでしょうか。
国王陛下はサブル殿下から聞いた話の全てを鵜呑みにしたわけではないようで、私が望むなら婚約は継続。婚約関係を続けたくない場合は、破棄ではなく解消してくださるとのことでした。
「どういうことなんだ!」
私を談話室に呼びつけたお父様は、届いた書状を私に投げつけて叫びました。
お姉様は部屋の中にいますが、お母様の姿は見えません。いつもならばお姉様にべったりですので違和感があります。
「おい! 聞いているのか!」
「聞いています。どういうことかはお姉様に聞いてくださいませ」
カーペットの上に落ちた書状を拾い、ローテーブルの上に置いて答えると、お父様は目を吊り上げました。
「ラーナは関係ない! お前の話をしているんだ!」
「やめてお父様! シアリンは可哀想なの!」
お姉様はお父様にしがみついて訴えます。
「昔からシアリンは私のことを妬んでいたの。だから、私が見た夢を無理矢理聞き出したり、私よりも優位に立とうとして、トレジット公爵に取り入ろうとしただけ! 何も悪くないわ!」
「私はそんなことはしていません!」
「だってそうとしか考えられないじゃない!」
「何を根拠にそんなことを言うのですか?」
「ジェリク様はもう19歳になるのに婚約者がいないの! それまでに私は何度も釣書を送ったわ! あなたが私の悪口をトレジット公爵に言ったから誤解して認めてくれないのよ!」
お姉様はその場に座り込んで泣き始めました。
19歳にもなって泣けばいいと思ってるのなら呆れてしまいます。ジェリク様に選ばれない理由を私のせいにしないでほしいです。
「トレジット公爵閣下と連絡は取っていますが、お姉様の話題は出していません。嘘だとおっしゃるなら閣下に確認してください」
お父様に伝えたつもりでしたが、お姉様が顔を上げて反応します。
「どうせあなたが言わないでとお願いしているのでしょう? 正直に話してくれるとは思わないわ!」
「それなら誤解だと訴えてくださいませ。何が誤解か聞き返されるでしょうけど」
「私が聞いてみることにしよう」
お父様がそう言うと、お姉様は激しく首を横に振ります。
「お父様! トレジット公爵にそんなことを聞いたら、お父様がまたシアリンをいじめていると思われてしまうわ!」
「そ、そうだな。それは困る」
お父様はあの時以来、閣下の名前を聞くだけで震え上がるようになりました。今も、眉尻を下げて情けない表情です。
お姉様も閣下に連絡を入れられたら、自分の嘘がバレますので必死ですね。
どうせいつかはバレる嘘です。足掻いたって無駄ですのに。
「シアリン! 今なら婚約者のままでいられるんだ。王太子殿下に泣いて謝りなさい。お前が王太子妃になる時には結納金が支払われるんだ。それはかなりの金額になるはずなんだぞ!」
サブル殿下に逡巡する様子があったり、私の頬を打つことがなければ、私はお父様からの訴えを素直に受け入れていたでしょう。
サブル殿下のことを何年も思い続けてきました。彼との幸せな未来を何度想像したことでしょう。
でも、もうやめます。辛くて涙が出そうになりますが忘れます。
好きだった気持ちをゴミ箱にポイします。
それにしても、お父様はお金が目当てなのですね。それなら、これはどうでしょうか。
「あの、提案があるのですが」
「……なんだ」
「サブル殿下はお姉様との婚約を望んでおられました。お姉様には婚約者がいませんし、サブル殿下とお姉様が婚約すればちょうど良いのではないでしょうか」
「なんだって!?」
お父様は目を輝かせて、お姉様を見つめます。
「ラーナ、すごいじゃないか! 王太子殿下に認められたんだな!」
「あ、あのお父様! 私には王太子殿下はもったいなさすぎます!」
「何を言っているんだ。嘘つきのシアリンよりもお前のほうがよっぽど王太子殿下に似合うだろう」
「お姉様、私もそう思いますわ」
にこりと微笑んでみせると、床に座り込んでいたお姉様は立ち上がって宣言します。
「私はジェリク様を愛しているの! 王太子殿下と婚約なんてしません!」
「何を言っているんだ。公爵令息よりも王太子殿下のほうがいいに決まっているだろう! それに予知夢を見られるのはお前しかいないんだ。シアリンが嫁に行けば嘘がバレる。そうなった時、私たちもどうなるかわからない。それなら、予知夢が見れるお前が王太子殿下の嫁に行くほうがいいんだよ」
お姉様も昔は予知夢が見れましたが、今はどうなのでしょうか。まだ、少しでも見ることができるのであれば、嫁いでも誤魔化すことはできるでしょう。
国王陛下には真実を伝え、婚約については解消でお願いしたいという旨の連絡を入れましょう。
ああ、そうです。忘れてはいけません。サブル殿下の婚約者には私よりもお姉様のほうが良いとも伝えなければいけませんね。
乗り気のお父様を必死に説得しようとしているお姉様を滑稽に思いながら、私は黙って部屋を出ました。落ち着いた環境で国王陛下への手紙を書くために、お祖母様の所に行きましょう。
……そういえば、お母様は今頃、何をしているのでしょうか。
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