【本編完結】家族に裏切られた私が嫁いだ相手は、姉が長年片思いしていた公爵令息でした

風見ゆうみ

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13  新しい家族

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 簡単な事実確認をしたあとは、トレジット公爵夫妻に挨拶に行くことになりました。公爵夫妻がいるという談話室へ、ジェリク様の案内で向かうことになり、お屋敷の中はとても広いため、談話室に向かうのも時間がかかります。そのため、ジェリク様と話す時間もありました。

「君のお祖母様であるフィナさんと文通していたのは父なんだ。あの時、君はフィナさんの話を出されて、家を出ることを諦めた。だから、父が手を打とうとしたんだ」
「あの時というのは、モンブララン湖の時のことですよね? あの時のお祖母様はボケたふりをしていましたが、それでも連絡を取ろうとしてくださったんですか?」
「メイドを送り込んだのは父だけど、連絡してくれたのはフィナさんなんだ」
「そうだったのですね」
 
 お祖母様は閣下が私を気にかけてくださっていることを知って連絡してくれたのですね。お父様たちにバレてしまう可能性もありましたのに、危険な橋を渡らせてしまいました。

「今回、君のお祖母様が向こうへ残ることを決めたのも、もう少しテイズ伯爵家の内情を見たいんだろう。内通者がいることはとても助かる」
「お祖母様は、私にはお姉様のことが気になると言っていたのです。それは私に気を遣わせないための嘘だったのでしょうか」
「それも本当だろう。実の息子を見捨てることはできても、孫が二人いるのに、一人だけ可愛がるのも贔屓をしているようで嫌なのかもしれないな」
「そうかもしれません」

 いくらお姉様がお祖母様に酷いことを言ったとしても、自分にとっては孫ですから、簡単には見捨てられないでしょう。私のように目を覚ましてくれないかと願っているのかもしれません。

「殿下には一応、予知夢が見れるのはシアリンだと伝えたが、聞く耳を持たなかった。両陛下はシアリンとラーナ嬢の二人共が見られる可能性もあるとおっしゃっていて、今は様子見の段階だ」
「そうだったのですね。中立な立場でいてくださるだけでありがたいです」

 両陛下が私とお姉様の意見を聞いてくれているということですものね。

「そういえば、どうして私が予知夢を見れると、ジェリク様は信じてくださったのですか?」
「湖で会った時にジャフを助けてくれたただろう? あの時の君は眠そうにはしていたが、頑張って起きて話をしていた。だけど突然、眠りについたんだ。疲れているのだろうと話をしていたら、君は急に目覚めてジャフを助けようとした」
「そんな不自然な眠り方をしていたのですか」

 あの時は疲れて眠ってしまったと思い込んでいましたが、何かの力が働いて強制的に予知夢を見るようにされたのかもしれません。

「あの時のことがなければ、私はきっとここにはいませんね」
「それはどうだかわからない」
「はい?」

 聞き返した時、私の後ろ足に衝撃が走りました。

「ひっ!」
「イチゴ! ハッピー!」

 ジェリク様は叫ぶと、私にぶつかった何かを拾い上げました。

 ジェリク様の片腕に一匹ずつおさまっているのは、黒と茶色の毛を持つ小型犬でした。二匹とも私を見て尻尾を振ってくれています。

 イチゴちゃんと言えば、昔、予知夢で助けた犬がいました。たしか、同じような毛色をしていましたね。

「イチゴを見て思い出すことはないか?」
「昔、助けたワンちゃんがいましたが、も、もしかして、あのイチゴちゃんなのですか!?」
「そうだ」
「じゃあ、夢で泣いていた男の子は……」
「たぶん俺だ」

 ジェリク様は苦笑したあと、真剣な表情になって続けます。

「当時、君の家のメイドから話を聞いたよ。イチゴを助けてくれて、本当にありがとう。君が助けてくれなかったら、俺は一生後悔していたし、ハッピーも生まれてこなかった」
「いえ、そんな! 当たり前のことをしたまでです!」

 イチゴちゃん、お母さんになったんですね! 

「助けてくれたお礼を直接したかったんだが、君の父親から金だけでいいと言われたんだ。だから、その時は伝えることができなかった。本当はもっと早くに言おうと思って、君に何度も会いに行ったんだが」
「……それで昔はよく、殿下に付いて家まで来てくれていたのですね」

 殿下が席を外すことはなかったですし、私も殿下もお話好きでしたから、会話に割って入れず、モンブララン湖の時はそれどころではなかったそうです。

「ジェリク様のお役に立てて嬉しいです」

 頭一つ分高いジェリク様を見上げて微笑むと、なぜかジェリク様はイチゴとハッピーを持ち上げて顔を隠してしまいました。

「……ジェリク様?」

 首を傾げた時、近くの扉が開いて公爵夫人が飛び出してきました。

「ジェリク、遅いわ! これから色々と話さないといけないのよ! さあ、中には入って! ああ、シアリン! いらっしゃい!
 夫と一緒に考えたんだけど、あなたの好みがわからなくて、とりあえず、アクセサリーやドレスを色々と用意したの! これからの話をしたあとに選んでちょうだい!」

 夫人はジェリク様には目を吊り上げて怒っていましたが、私に話しかけてくれた時には、まるで別人のような笑顔です。 
 
 部屋に招かれた私は、これからの結婚生活のことや、お姉様や殿下たちに本当のことをどう知らせれば、大きなダメージを与えられるか相談することにしたのでした。
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