【本編完結】家族に裏切られた私が嫁いだ相手は、姉が長年片思いしていた公爵令息でした

風見ゆうみ

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32  姉の企みと終わりにしようとする妹 (視点変更あり)

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※ ◆◇◆◇◆◇の部分までは、ラーナ視点です。



「いくら必死だったとはいえやりすぎです。あなたには何らかの罰が与えられるでしょうね」

 目の前にいる若い取調官の男は、私を見下ろし、ニヤニヤ笑いながら言った。

「罰金で済みますわよね」

 大人しい女性のふりをしたほうが男性受けは良い。涙を浮かべ、上目遣いで見つめると、取調官は頬を赤らめて笑みを消す。

「普通ならそうかもしれないが、今回は王族だからな」
「そんな! 私は自分の貞操を守ろうとしただけなんですよ!」
「サブル殿下が認めれば情状酌量はあるでしょうけど、男性の部屋に二人きりになった時点で、その可能性はあると思わねばならないと言われる可能性があります。無理に部屋に連れて行かれたという証拠はありますか?」

 女の取調官が私を気の毒そうに見つめて訪ねてきた。

 最悪だわ。側近も同席すると言ったのに、人払いしたのは私だわ。
 悪いのはサブル殿下じゃないの。私は殺されると思ったから殴っただけ。罰なんて受けたくない。
 どうしたらいいの? 何とか罰せられない方法を考えなくちゃ。
 
 その時閃いたのは予知夢のことだった。

 そうよ。予知夢が見れると証明できたら罰が軽くなるかもしれない。だって、予知夢を見れる人間は貴重な存在だもの。追放されることだってない。

 予知夢が見れないのなら、現実に起こる出来事にすればいいのよ。シアリンは自分の夢が見れない。だから、シアリンについての夢を見たことにすればいい。
 たとえ、これが嘘だとシアリンにわかっても、こちらの思い通りに動かせば良いだけ。

 この後、友人たちに会う予定をしているから、彼らに助けてもらいましょう。
 彼らは無条件に私を信じ、シアリンを敵視している。シアリンの心か体を傷つけるだけなら、きっと協力してくれる。
 すぐにここから出られなくても、会いに来てくれるに決まっている。その時、監視している人にはお金を渡して外に出てもらっていればいい。
 
 シアリン、残念だったわね。あなたと違って私には助けてくれる友人がいるのよ。何とかして彼らと連絡を取って、シアリンに痛い目に遭ってもらいましょう。

 私の気持ちを知っていてジェリク様を奪ったんだもの。それくらいの罰が当たるのは、当然のことだと思うのよ。



◆◇◆◇◆◇



 興奮している殿下を王妃陛下にお任せして、私とジェリク様は王城内の一室で取り調べを受けているという、お姉様の元に向かいました。
 ジェリク様を連れて行くのは、ご褒美になるかもと思いましたが、惨めな姿を見られるのも辛いでしょう。
 お姉様の反応を見て、ジェリク様には席を外してもらう可能性があることを伝えておきました。
 お姉様に会う前に、取り調べをしたという取調官に話を聞いてみると、サブル殿下に付きまとわれていて困っていたから、やめてくれとお願いしたところ襲われそうになった。必死に抵抗した結果、やりすぎてしまったので、今回は許してほしいと言っているそうです。

 これが全て事実なら、過剰防衛とされても重い罰にはならないでしょう。

「ラーナ嬢はそんな話をして、どうするつもりなんだろうか」
「そのほうが同情を買えると思っているのでしょう。殿下やお姉様が本当のことを言っているかどうかは、他の人にはわかりません。お姉様の衣服には乱れはないそうですが、かといって絶対にそうではないとは言えませんし、判断はしづらいでしょう」
「そうだな。ただ、俺には殿下はそっちの考えはなかったと思う」
「どうしてですか?」
「結婚前でいいと言って、殿下は男女の営みについての教育を受けていないんだ。キスをしたら子供ができると思っている」
「……そうだったのですね」

 手を握るまでにも時間がかかりましたし、奥手な人かと思っていましたが、何をするのかもわかっていないのですね。それなら、付き合ってもいないお姉様にそんなことをしようとする考えはないでしょう。
 これは、長く一緒にいた私たちだからわかることです。他の人が確証と呼べるものではありません。判断は難しいでしょうね。
 ……殺意だったとしても許されるわけではありませんが。

 お姉様がいるという部屋の前に立って、そんな会話を交わしてから、ジェリク様と共に部屋の中に入りました。
 部屋の中には取り調べ用の木の机と椅子が4脚。その一つにはお姉様が座っています。
 両手は動きがわかるように、手縄がかけられた状態でテーブルの上に置かれていました。
 窓には鉄格子がはめられてあり、外に逃げられないようになっています。
 お姉様は私と目が合うと睨んできましたが、後ろにジェリク様がいるとわかると、満面の笑みを浮かべました。

 やはり、ジェリク様には同席してもらわないほうが良いのかもしれません。
 そう思った私がジェリク様に声をかけようとすると、お姉様が話しかけてきました。

「大変よ、シアリン! 私、昨日、予知夢を見たの!」
「……またですか」

 見ることができないという証明ができないだけに、この茶番にいつまで付き合わなければならないのでしょう。

「本当よ! 信じて! 絶対に嘘じゃない」
「どんな夢を見たのですか」
「……あなたは誰かと浮気をしていたの。そして、それがジェリク様にバレて家から追い出されるのよ!」
「そういうことですか」

 私は自分の夢を見ることができませんから、それを上手く使おうとしているようです。

 誰かに頼んで、私を誘惑してもらうつもりでしょうか。この後、会う予定だったようですし、お姉様に気がありそうな悪友1に頼むつもりかもしれません。
 彼にそんな余裕がないことも知らないお姉様は、こんな嘘をついたことを後悔することになるでしょう。

「お姉様、絶対だと言い切れますか?」
「……もちろんよ。嘘じゃない」
「ではこうしましょう。もし、お姉様の話が現実のものになったなら、お姉様が予知夢を見れると周りの人に信じてもらえるように手助けをします。ですが、そうじゃなかった場合は、わかりますよね?」

 微笑んで尋ねると、お姉様も自信ありげな笑みを浮かべて頷きます。

「わかっているわ」

 口約束だけでは信じられなかった私は、簡易なものにはなりますが書類を用意し、お姉様にサインをさせたのでした。
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