【本編完結】家族に裏切られた私が嫁いだ相手は、姉が長年片思いしていた公爵令息でした

風見ゆうみ

文字の大きさ
49 / 59

45  嘆く王子 ③

しおりを挟む
 私の言葉に対して、サブル殿下は予知夢と認識してくれたようです。普通に夢を見たでも良かったんですが、私相手だと予知夢と思い込んでくれると思っていました。

「殿下、馬鹿なことを考えますと、あなたの人生は本当に終わってしまいます」
「嫌だ。僕はこんなことで終わりたくない!」
「こんなこととは?」
「ラーナに乱暴しようとしたことだよ! どうすればいい? 今から謝れば、僕だけでも許してもらえるだろうか!?」
「許してもらえるかはわかりませんが、多少の厳罰はあるかもしれませんね」

 苦笑したあと、私はジェリク様に話しかけます。

「もうお話は済みましたから帰りましょうか」
「そうか。なら帰ろう」

 同時に立ち上がると、殿下は引き留めてきます。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 僕は……っ、本当に何もしていないんだ。きっと、父上が失脚することになるのは悪いことを考えているからだ! 僕が考えたわけじゃない! シアリン、頼むよ。僕と取り引きしてくれないか」
「取り引き、ですか?」
「ああ。父上はある人の命を奪おうとしている。その人が誰かを教えるだけでなく、父上がどう動いているか、わかる限り伝えるよ。だから、だから、どうか助けてください。平民になって貧しい暮らしなんて僕に送れるはずがない。死刑だと言われているようなものだよ!」
「スパイになるから助けてほしいとおっしゃっているのですね」

 冷ややかな目で見つめると、殿下は何度も首を縦に振りました。
 こう言うであろうことは予想がついていましたが、少し悩んだふりをしておきます。

「殿下にスパイが務められるとは思えません」
「頑張る! 頑張るから!」
「頑張ってどうにかなるものではありませんわ」
「シアリン、君は僕のことをわかっているだろう? 本当に悪いことなんてできない人間だよ!」
「なら、スパイ行為もできないのでは? 殿下が嫌いな嘘をつくことになりますよ」
「……正義のためなら嘘をつける!」

 殿下の口から正義という言葉が出でくるとは驚きです。

「信用できません」

 冷たく言い放ち、私はジェリク様と共に歩き出しました。すると、殿下が立ち上がって叫びます。

「……仕方がないじゃないかっ。僕は王太子として特別扱いをされて暮らしてきたんだ。それなのに王太子じゃなくなったら、周りに馬鹿にされて生きなくちゃならない。そんな人生は嫌だ!」
「なら、せめて自分に恥じない生き方をしてください」
「……どうすればいいんだよ!」
「国王陛下のしようとしていることが悪いことだと思うのであれば、しかるべき人に相談してください」

 私にとっては悪いことですが、殿下にとってはどうかわかりません。でも、これが最後のチャンスです。

「……わかったよ。全て話す。これで、未来は変わるだろうか」
「殿下、最後に一つだけお伝えしておきます」
「なに?」
「先ほどお話をしました、殿下と陛下が失脚する件ですが」
「もったいぶらずに言えよ!」
「予知夢ではありません。夢見ているだけです」

 殿下は不思議そうな顔をして、目を瞬かせます。

「ゆ……、夢見ている?」
「ええ。こうなったらいいなと思っただけです」
「……そんなっ」

 殿下は自分にとって不利な話をしてしまったことに気がついたようです。へなへなとその場に崩れ落ちました。

「殿下、悔い改めなければ、私が夢見た通りのことになるでしょう。あなただって、国王陛下のやろうとしていることは悪いことだととわかっているのでしょう?」

 私の問いかけには答えず、殿下は無言で私を見つめました。

「あなたが考えたことではないのなら、これからの行動次第で救われることもあるでしょう」
「……ううっ」

 殿下は涙を流すと、床を叩き始めます。

「どうして……、どうしてこんなことになってしまったんだよ!」

 私とジェリク様は無言で部屋の外に出ると、廊下に立っていた兵士やメイドに、殿下が馬鹿なことを考えないように見張りの強化をお願いしました。

 それから数時間後、殿下は王妃陛下に国王陛下の企みを話したのでした。急遽、会議が開かれることになり、お義父様は夜遅くなっても帰ってきませんでした。

 諦めて眠った私は、予知夢を見たのです。その中の一つに馬車を引く馬が暴れ出し、近くにいた男女二人が頭を蹴られてしまうというものがありました。

 その二人というのは私の両親だったのです――。

しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。 彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。 しかし妾の子である妹を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。 だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。 父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。 そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。 程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。 彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。 戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。 彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます

天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。 ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。 それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。 ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。 今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

処理中です...