【本編完結】家族に裏切られた私が嫁いだ相手は、姉が長年片思いしていた公爵令息でした

風見ゆうみ

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44  嘆く王子 ②

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「うわぁっ!」

 私が身を避けるよりも先にジェリク様が、テーブルを持ち上げたため、殿下はテーブルに押されて、後ろのソファにひっくり返りました。
 メイドがお茶をまだ運んできていなかったため、被害は殿下だけで済みました。

「殿下、お怪我はありませんか? 思わず手がテーブルに触れてしまいました。申し訳ございません」

 ジェリク様は立ち上がって、殿下を助け起こしながら続けます。

「シアリンは俺の妻です。たとえ殿下であろうとも乱暴しようとすることは許せません」
「ぼ、僕は乱暴しようとなんてしていない! ただ、シアリンに触れようとしただけだ!」
「殿下、いくら王族であっても他人の妻に無理やり触れることは許されません。ラーナ嬢のことがあったのに、もう忘れてしまわれたのですか?」
「無理やりなんかじゃない! それに、今はラーナのことは関係ない!」

 殿下は余裕の笑みを浮かべて、私に目を向けます。

「シアリン、無理やりじゃないだろう? 僕に触れられて嫌なわけがないよね?」
「殿下、私はジェリク様の妻なのです。ジェリク様以外の男性に許可なく触れられたくありません」
「ぼ、僕は王子なんだぞ! 夫と王子なら王子のほうが大事じゃないか!」
「殿下、王子であれば何をしても良いなんて法律はありません。常識くらいお守りください」

 ジェリク様にピシャリと言われた殿下は、ジェリク様と言い合っても敵わないと諦めたのか、私に訴えかけます。

「シアリン、君は僕のことを何年も愛してくれていただろう? その気持ちを思い出してほしい。そうでなければ……」
「そうでなければ、なんでしょうか」
「君が危険な目に遭うかもしれない」

 殿下は真剣な表情で私を見つめています。

 危険な目に遭うかもしれない……。それって脅しですよね。わざわざ忠告してくださっているのでしょうか。

「……殿下は本当に正直なお方ですね」
「そうだろう!? 僕はジェリクとは違う! 僕は嘘は嫌いなんだ!」

 本当のことを言っただけで、褒め言葉のつもりはありませんでした。勘違いした殿下は話を続けます。

「シアリン、君とよりを戻すことができれば、僕は王太子のままでいられるんだよ。それに君だって長年慕っていた僕と本当の恋人になれるんだ。それって幸せなことしかないよね」
「私は幸せではありません。逆に不幸になるだけです」
「そ、そんな言い方をしなくてもいいだろう!」

 殿下にしてみれば、私の反応は予想外だったようで、困惑しているのが目に見えてわかります。

「本当のことをお伝えしたのまでです。万が一、私とよりを戻しても王太子でいられるかどうかはわかりません。それよりも殿下、先ほど、私が危険な目に遭うかもしれないとおっしゃいましたよね?」
「あ……ああ、そうだけど」

 オドオドする殿下に、私は神妙な面持ちで話しかけます。

「本日、私が殿下に会いに来た理由をお話してもよろしいでしょうか」
「い、いいけど。何だか怖いな」

 ソファに座り直した殿下は、太ももの上に両手を置いて私を見つめました。

「殿下、私はのです」
「え? ど、どんな夢?」
「サブル殿下が王太子の座を剥奪され、国王陛下と共に失脚する夢です」
「え? 失脚!? 僕だけじゃなくて父上も!? どうしてそんなことになるんだ!?」

 何かあっても最終的に陛下に助けてもらえると思っていたのでしょう。

 殿下は情けない声を上げて聞き返してきたのでした。

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