48 / 53
48 こんな勝負じゃないのでは?
しおりを挟む
「え、どういう事?」
困惑していると、ユウヤくんが後ろから抱きしめてくれながら答えてくれる。
「もう帰路につくつもりなんだろ」
なんで抱きしめられているのかはわからないけど、お腹にまわされた手に触れながら聞き返す。
「いや、それはわかるんだけど。このままじゃ、勝負に負けちゃうんじゃ?」
「手ぶらで帰ってくるわけじゃねぇからだよ」
「え?」
さっきから聞き返してばかりだけど、意味がわからないのだからしょうがない。
今度は隣にいたユウマくんが笑いながら答えてくれた。
「もう帰ってくるだけで勝てるからだよ」
「え?」
いまいちピンとこない。
気持ちを落ち着けて考える。
リア達が勝つ条件は指定された薬草をとってきて、一番早くにこちらに戻ってくること。
「という事は、もうリア達は薬草をとってきたってこと?」
「そういう事。誰にも見られないように、と用心のために夜に動いてたのが功を奏したってこと」
ユウヤくんが抱きしめる腕を強くしてくる。
彼もリア達が早くに帰ってこれそうなのを安堵してるのかもしれない。
「小屋から薬草のある場所ってどれくらいの時間がかかるの?」
「4時間くらいだよな、ユウマ」
「普通に行けば、な」
「じゃあ、リア達は一睡もしないで夜の危険な森を動いてたってこと?」
「違いますよ」
私の言葉を否定したのは、ユウヤくんでもユウマくんでもなく、イヤーカフから聞こえてくるラス様の声だった。
映像の方を見ると、小屋付近は映し出されたままだけど、もうラス様達の姿は見えず、他の人達も自分達の小屋に戻ったようだった。
戸惑っていると、ラス様が言葉を続ける。
「私が何が出来るか、もう忘れておられるようですね?」
「ラス様、色んなこと出来るから、いっぱいありすぎてわかりません」
「ユーニが言いたくなる気持ち、私もわかる」
リアがふき出して私の意見を肯定すると、少しの沈黙のあと、ラス様が口を開いた。
「転移魔法で行かせていただきました」
「あ!!」
そうだった。
ラス様は転移魔法が使えるんだった。
もしかして、ユウヤくん達と一緒に出かけていった、あの日は。
「もしかして、あの日、下見に行ってたんですか?」
「あの日をユーニさん達が呼び出された日のことを言っておられるのなら当たりです」
「転移魔法を使うにはいいけど、一度行った場所かもしくは、想像できる場所じゃねぇと駄目らしい。だから、その場所に行って、少しでも人に見られないような位置を探しに行ったんだ」
「そうなんだ」
説明してくれたユウヤくんの手を握ると、頭に顎を乗せられた。
ラス様とリアが無事だったから、緊張の糸が途切れたんだろうな。
「じゃあ、今からどうするんですか?」
「寝る場所もなくなったことですし、素直に地道に帰りますよ。リアさんには申し訳ないですが、転移魔法を使うわけにはいかないので」
「気にしないでください! ラス様と夜のお散歩ができて私は嬉しいですよ」
リアのはずんだ声が耳に届く。
今日は大変だったはずなのに、リアは本当にタフだなあ。
「無事に帰って来いよ。夜中だから魔物の動きも活発だぞ」
「何があってもリアさんだけはお守りしますよ」
「駄目ですよラス様。一緒に元気に帰りましょ。ね、ユウマくん?」
リアに聞かれ、
「当たり前だろ。二人共無事に帰ってこい」
そう答えたあと、表情の重かったユウマくんの顔が少し明るくなった気がした。
「心配掛けてごめんね! とりあえず、3人共安心して眠ってきてよ。朝にはそっちに着けると思うから、お風呂と美味しいご飯の用意しといて~!」
全く緊迫感のないリアの声に、私達は笑ってから、それぞれ返事を返したのだった。
闘技場を出てからは連絡もとらず、無事を信じて、もう一度部屋に戻って眠る事になったけど、興奮しているせいか、中々寝付けなくて、結局は早起きしてしまった。
リアにお願いされたとおり、美味しいご飯の用意をしよう、と思ったけど、出先だから何か買うなりしなければいけないな、と思い、支度を済ませて、ユウヤくんの部屋に向かった。
「おはよ」
「おはよ。ちゃんと寝たか」
ノックしたあと、ユウヤくんが寝癖のついた頭のままで、しかも、寝間着のシャツのボタンが全開になって素肌があらわになってる状態で扉を開けてくれた。
な、なんか普段と違ってドキドキする。
「ユーニ?」
「あ、一応は、寝たよ! ユウヤくんはちゃんと寝れたみたいだね」
「まあな、寝れる時に寝とかねぇと、何があるかわかんねぇし」
昨日の夜中にはなかった寝癖もついてるし、ちゃんとベッドに横にはなったんだと思うので言ってみると、歯を磨く用意をしながら答えてくれた。
「そっか、そうだよね」
なんだか落ち着かなくて、部屋の中をウロウロとしていると、歯をみがきながらユウヤくんが洗面所から出てくると、空いている手で私の腕を引いて、ベッドの上に座らせてくれた。
朝一番のユウヤくんを見たことがないからドキドキするのかな。
朝に会うのはよくあったけど、こんなゆるい感じのユウヤくんを見たのは初めてで、すごく意識してしまう。
と、扉が叩かれ、返事をする前に扉が開かれた。
これをするのは彼しかいない。
「ユーニちゃん、いる?」
「おはようユウマくん」
ユウヤくんの部屋だから遠慮がないのだろう。
散々、リアから返事が返ってきてから開けろ、と言われて、だいぶマシになってきていたはずなのに、慣れが先にきているんだろうな。
「おはよう。先に部屋に行ったけどいなかったから」
「うん。なんか落ち着かなくて。あ、そうだ。リアの好きな食べ物用意しようと思うんだけど、ユウマくんは何がいいと思う?」
「リアの? ああ、そういや美味しい飯を用意しとけって言ってたな」
「そうそう」
ユウマくんは当たり前のように私の横に座って考え始める。
「甘いものはデザートだから別腹っていうだろうしな」
「うん。リアは私みたいにお肉はそこまで好きじゃないし」
「ま、今は嫌いなもの以外を用意できてればいいんじゃね? たぶん夜通し歩いてて疲れの方が先だろうから、本人が帰ってきてから、改めて聞いたらどうだ?」
「そうだね。やっぱり、その時に本人が一番食べたいものがいいよね」
うんうんと、うなずき合っていると、歯磨きと着替えを終えたユウヤくんが洗面所から出てくるなり、ユウマくんを見て不機嫌そうな顔になった。
「またオマエは勝手に部屋に」
「さすがにリアやラスが帰ってきてねぇのに、いちゃついてねぇだろうと思って」
「そんなのわかんねぇだろ」
「ないよ」
ユウヤくんの言葉を否定したところで、イヤーカフからラス様の声が聞こえた。
「もうすぐ着きます」
「もー、疲れた、お腹ペコペコ。って、きゃっ!!」
「リアさん!」
ぶつん。
音声が途切れた。
「何があったの」
私が立ち上がると同時、ユウマくんも聞こえていたようで、同じように立ち上がった。
「どうした?」
ユウヤくんだけイヤーカフをつけてなかったから、さっきの音声が聞こえなかったらしい。
「ラス様がもうすぐ着きますって連絡くれたと思ったら、リアの悲鳴が聞こえて、そっから途切れたの」
ユウヤくんに伝えるために言葉にしたけれど、余計に不安が胸に押し寄せてきた。
大丈夫、大丈夫だよね。
祈った瞬間、リアの声が耳に届いた。
「ちょっと、薬草はとってきたんですか?」
「そんな事、今はどうでもいい。あなた達を勝たせるわけにはいかない!」
リアと話しているのはラナン様のようだった。
もしかして、あの後、リア達を追いかけてきたんだろうか。
「しつこいですねぇ。そんなに勝負したいなら、勝負しますか。ラス様、そっちの男の人、お願いできます?」
「やらざるを得ませんしね。くれぐれも怪我はしないように。あとからユウマに何を言われるかわかりませんし、あなたの辛そうな姿も見たくありません」
「ラス様、そういう乙女の心をつかんでくるような事言わないでくださいよ」
リアには余裕がありそうだけど、音声だけではやっぱりわからない。
「ユウマくん」
「そうだな。ユウヤ、行くぞ」
「一体、何が起こってんだ?」
困惑しているユウヤくんの手を引っ張り、急いでユウヤくんの部屋を出た。
困惑していると、ユウヤくんが後ろから抱きしめてくれながら答えてくれる。
「もう帰路につくつもりなんだろ」
なんで抱きしめられているのかはわからないけど、お腹にまわされた手に触れながら聞き返す。
「いや、それはわかるんだけど。このままじゃ、勝負に負けちゃうんじゃ?」
「手ぶらで帰ってくるわけじゃねぇからだよ」
「え?」
さっきから聞き返してばかりだけど、意味がわからないのだからしょうがない。
今度は隣にいたユウマくんが笑いながら答えてくれた。
「もう帰ってくるだけで勝てるからだよ」
「え?」
いまいちピンとこない。
気持ちを落ち着けて考える。
リア達が勝つ条件は指定された薬草をとってきて、一番早くにこちらに戻ってくること。
「という事は、もうリア達は薬草をとってきたってこと?」
「そういう事。誰にも見られないように、と用心のために夜に動いてたのが功を奏したってこと」
ユウヤくんが抱きしめる腕を強くしてくる。
彼もリア達が早くに帰ってこれそうなのを安堵してるのかもしれない。
「小屋から薬草のある場所ってどれくらいの時間がかかるの?」
「4時間くらいだよな、ユウマ」
「普通に行けば、な」
「じゃあ、リア達は一睡もしないで夜の危険な森を動いてたってこと?」
「違いますよ」
私の言葉を否定したのは、ユウヤくんでもユウマくんでもなく、イヤーカフから聞こえてくるラス様の声だった。
映像の方を見ると、小屋付近は映し出されたままだけど、もうラス様達の姿は見えず、他の人達も自分達の小屋に戻ったようだった。
戸惑っていると、ラス様が言葉を続ける。
「私が何が出来るか、もう忘れておられるようですね?」
「ラス様、色んなこと出来るから、いっぱいありすぎてわかりません」
「ユーニが言いたくなる気持ち、私もわかる」
リアがふき出して私の意見を肯定すると、少しの沈黙のあと、ラス様が口を開いた。
「転移魔法で行かせていただきました」
「あ!!」
そうだった。
ラス様は転移魔法が使えるんだった。
もしかして、ユウヤくん達と一緒に出かけていった、あの日は。
「もしかして、あの日、下見に行ってたんですか?」
「あの日をユーニさん達が呼び出された日のことを言っておられるのなら当たりです」
「転移魔法を使うにはいいけど、一度行った場所かもしくは、想像できる場所じゃねぇと駄目らしい。だから、その場所に行って、少しでも人に見られないような位置を探しに行ったんだ」
「そうなんだ」
説明してくれたユウヤくんの手を握ると、頭に顎を乗せられた。
ラス様とリアが無事だったから、緊張の糸が途切れたんだろうな。
「じゃあ、今からどうするんですか?」
「寝る場所もなくなったことですし、素直に地道に帰りますよ。リアさんには申し訳ないですが、転移魔法を使うわけにはいかないので」
「気にしないでください! ラス様と夜のお散歩ができて私は嬉しいですよ」
リアのはずんだ声が耳に届く。
今日は大変だったはずなのに、リアは本当にタフだなあ。
「無事に帰って来いよ。夜中だから魔物の動きも活発だぞ」
「何があってもリアさんだけはお守りしますよ」
「駄目ですよラス様。一緒に元気に帰りましょ。ね、ユウマくん?」
リアに聞かれ、
「当たり前だろ。二人共無事に帰ってこい」
そう答えたあと、表情の重かったユウマくんの顔が少し明るくなった気がした。
「心配掛けてごめんね! とりあえず、3人共安心して眠ってきてよ。朝にはそっちに着けると思うから、お風呂と美味しいご飯の用意しといて~!」
全く緊迫感のないリアの声に、私達は笑ってから、それぞれ返事を返したのだった。
闘技場を出てからは連絡もとらず、無事を信じて、もう一度部屋に戻って眠る事になったけど、興奮しているせいか、中々寝付けなくて、結局は早起きしてしまった。
リアにお願いされたとおり、美味しいご飯の用意をしよう、と思ったけど、出先だから何か買うなりしなければいけないな、と思い、支度を済ませて、ユウヤくんの部屋に向かった。
「おはよ」
「おはよ。ちゃんと寝たか」
ノックしたあと、ユウヤくんが寝癖のついた頭のままで、しかも、寝間着のシャツのボタンが全開になって素肌があらわになってる状態で扉を開けてくれた。
な、なんか普段と違ってドキドキする。
「ユーニ?」
「あ、一応は、寝たよ! ユウヤくんはちゃんと寝れたみたいだね」
「まあな、寝れる時に寝とかねぇと、何があるかわかんねぇし」
昨日の夜中にはなかった寝癖もついてるし、ちゃんとベッドに横にはなったんだと思うので言ってみると、歯を磨く用意をしながら答えてくれた。
「そっか、そうだよね」
なんだか落ち着かなくて、部屋の中をウロウロとしていると、歯をみがきながらユウヤくんが洗面所から出てくると、空いている手で私の腕を引いて、ベッドの上に座らせてくれた。
朝一番のユウヤくんを見たことがないからドキドキするのかな。
朝に会うのはよくあったけど、こんなゆるい感じのユウヤくんを見たのは初めてで、すごく意識してしまう。
と、扉が叩かれ、返事をする前に扉が開かれた。
これをするのは彼しかいない。
「ユーニちゃん、いる?」
「おはようユウマくん」
ユウヤくんの部屋だから遠慮がないのだろう。
散々、リアから返事が返ってきてから開けろ、と言われて、だいぶマシになってきていたはずなのに、慣れが先にきているんだろうな。
「おはよう。先に部屋に行ったけどいなかったから」
「うん。なんか落ち着かなくて。あ、そうだ。リアの好きな食べ物用意しようと思うんだけど、ユウマくんは何がいいと思う?」
「リアの? ああ、そういや美味しい飯を用意しとけって言ってたな」
「そうそう」
ユウマくんは当たり前のように私の横に座って考え始める。
「甘いものはデザートだから別腹っていうだろうしな」
「うん。リアは私みたいにお肉はそこまで好きじゃないし」
「ま、今は嫌いなもの以外を用意できてればいいんじゃね? たぶん夜通し歩いてて疲れの方が先だろうから、本人が帰ってきてから、改めて聞いたらどうだ?」
「そうだね。やっぱり、その時に本人が一番食べたいものがいいよね」
うんうんと、うなずき合っていると、歯磨きと着替えを終えたユウヤくんが洗面所から出てくるなり、ユウマくんを見て不機嫌そうな顔になった。
「またオマエは勝手に部屋に」
「さすがにリアやラスが帰ってきてねぇのに、いちゃついてねぇだろうと思って」
「そんなのわかんねぇだろ」
「ないよ」
ユウヤくんの言葉を否定したところで、イヤーカフからラス様の声が聞こえた。
「もうすぐ着きます」
「もー、疲れた、お腹ペコペコ。って、きゃっ!!」
「リアさん!」
ぶつん。
音声が途切れた。
「何があったの」
私が立ち上がると同時、ユウマくんも聞こえていたようで、同じように立ち上がった。
「どうした?」
ユウヤくんだけイヤーカフをつけてなかったから、さっきの音声が聞こえなかったらしい。
「ラス様がもうすぐ着きますって連絡くれたと思ったら、リアの悲鳴が聞こえて、そっから途切れたの」
ユウヤくんに伝えるために言葉にしたけれど、余計に不安が胸に押し寄せてきた。
大丈夫、大丈夫だよね。
祈った瞬間、リアの声が耳に届いた。
「ちょっと、薬草はとってきたんですか?」
「そんな事、今はどうでもいい。あなた達を勝たせるわけにはいかない!」
リアと話しているのはラナン様のようだった。
もしかして、あの後、リア達を追いかけてきたんだろうか。
「しつこいですねぇ。そんなに勝負したいなら、勝負しますか。ラス様、そっちの男の人、お願いできます?」
「やらざるを得ませんしね。くれぐれも怪我はしないように。あとからユウマに何を言われるかわかりませんし、あなたの辛そうな姿も見たくありません」
「ラス様、そういう乙女の心をつかんでくるような事言わないでくださいよ」
リアには余裕がありそうだけど、音声だけではやっぱりわからない。
「ユウマくん」
「そうだな。ユウヤ、行くぞ」
「一体、何が起こってんだ?」
困惑しているユウヤくんの手を引っ張り、急いでユウヤくんの部屋を出た。
12
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる