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50 私にはやはりお菓子は危険でした
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マヌグリラとの一件から、約一ヶ月が過ぎた。
その間に新しい友達が増えたり、ラス様の弟のイグスさんにすごい変化があったり、色々とあったりはしたけど、私的には楽しく、のんびりとした日々を過ごしていた。
そんなうららかなある日の午後、ラス様が私に言った。
「婚約お披露目パーティーはどうするんですか」
「しないと、駄目ですか、やっぱり」
「した方が良いでしょう」
「ユーニが嫌がってるしいいんじゃね?」
相変わらず、私達はラス様の執務室にたむろしている。
今はユウヤくんと私と部屋の主のラス様だけだけど、普段はユウマくんやリアもいる。
ラス様は仕事中で、どこかいつもより不機嫌そう。
私とユウヤくんがソファに座って飲み食いをしているから、もしかしたら八つ当たり的なものもあるかもしれない。
まあ、気持ちはわかるけど。
ここじゃなくても、自分の部屋で食べればいいもんね。
「嫌がってるしいいんじゃね、っていう問題じゃないだろ」
最近はだいぶ私の前でも敬語がぬけてきて、私としてはとても嬉しいかぎり。
それだけ心を開いてくれてるって事だよね。
呑気にニコニコしていると、ラス様から呆れた目で見られた。
「なんで笑ってるんですか」
「あ、いえ。お披露目パーティーなんてなかったら幸せだなぁって」
「婚約お披露目パーティーもせず、一足飛びで結婚されるおつもりで?」
「平民はそうですよ。相手の両親にご挨拶だけです。まあ友人同士でおめでとう、みたいなのはあるかもしれませんが」
もぐもぐと出してもらっていたケーキを食べていると、トントン、と扉がノックされた。
「あ、ユウヤくんもここにいたんだ!」
ラス様が返事をすると中に入ってきたのはリアだった。
リアがユウヤくんを見て反応したからか、ユウヤくんは不思議そうに聞き返す。
「なんかオレに用事か?」
「私じゃないけどね。セバスさんが来客の時間が近付いてきてるのに帰ってこないって探してたから、ラス様の所にこれから行くから、見かけたら言っときますって話をしてたの」
「わ、やっべ。忘れてた。ユーニ、一人で帰れるか?」
「大丈夫」
ユウヤくんは慌てて立ち上がって私に確認したあと、ラス様の方に振り返る。
「さっきのパーティーの話はまた今度な」
「今度っていつですか」
ラス様の言葉には何も返さず、すれ違うリアに笑いかけてから、ユウヤくんは部屋を出て行った。
リアは中に入ってくると、いつもの私の向かい側の場所に座って、何やら腕にかかえていたものをテーブルの上に置いた。
「それ、どうしたの?」
リアが抱えていたのは大量のチョコレートケーキだった。
一口サイズのケーキが、一つ一つ透明なシートにくるまれていて、とても美味しそう。
「アレンくんがくれたの」
「え、アレンくんが?」
名前を聞くだけでついつい警戒してしまうのをやめられない。
普段はいい子だけど、リアの事になると突拍子もない事をするからなぁ。
「うん。お客さんからもらった大きなケーキを一口サイズに切ったみたい。ほら、毒味しないといけないから」
「あ、そっか」
毒味と聞いて、ラス様の方を見てしまう。
リアはあの事件を知らないから、ラス様の前でこんな話を普通に出来るんだろうな。
当のラス様は私達の事など気にせずに仕事をしている。
「どうかした?」
「ううん。美味しそうだね」
「たくさんもらったから、ユーニも食べない? あと、こっちはユーニがあまり好きじゃないだろうからって渡さないでって言われたんだけど、どう? 食べる?」
そう言って、リアが指さしたのはレーズンの入ったスコーンだった。
レーズンは嫌いじゃないけれど、私個人は何も入ってない方が好きだから、アレンくんの言葉は間違っていない。
でも、なんとなく、今日はレーズンも食べてもいいような気がした。
「でも、リアに食べてほしいのかもしれないよね」
「じゃあ、半分こしない?」
「半分もいらないよ、三分の一くらいでいい」
「そんな面倒なこと言わないでよ。半分でいいでしょ」
部屋の主が何も言ってこないことをいいことに、私とリアはテーブルの上でスコーンを切り分け、チョコレートケーキを二人で分けていく。
「最近、アレンくんはどうなの?」
「うーん、大人しいといえば大人しいけど、私がアスラン王太子殿下を選ぼうか迷ってるのが耳に入ったらしくて、ちょっとそれが心配」
「え、そうなの?」
「アレンくん、裏で情報を買ってるみたいだね。といっても、城内の人によ?」
リアがアスラン王太子殿下との婚約を考えている、というのは、アレンくんに知られないように内密にすすめていたはず。
漏れるとすると、お城に勤めてる偉い人しかいないと思うんだけど、もしかして、昔のイグスさんが話したとか?
「なんか心配だね」
「嫌なこと言わないでよ。まさか、殺されるって事はないと思ってるんだけど」
「そ、それはないでしょ!」
リアの言葉を大きく首を横に振って否定する。
自分のものにならないからって殺しちゃうなんて・・・。
まあ、中にはそんな考えを持つ人もいるかもしれないけど、アレンくんはさすがにそんな人ではないと思う。
それにしても、アレンくんが大人になればなるほど、性格が黒くなっている気がするのは気のせいだろうか。
「さ、ユーニに渡せたし、またアレンくんの所に戻るわ」
「え? なんで?」
「わかんない。なんか、味の感想が聞きたいから、目の前で食べてほしいって言われたから」
「なんか怪しくない?」
目の前で食べないといけない理由がわからなくて、リアが心配になり止めようとすると、リアが笑顔で言った。
「大丈夫。二人になったりしないから。ユウマくんに伝えてから行くよ」
「ならいいけど」
「じゃあ、またね。ラス様も」
「リアさん」
リアが手を振って出ていこうとしたところ、ラス様が仕事の手を止めて呼び止める。
「どうしたんですか?」
「絶対にアレンと二人にならないようにしてください」
「え?」
「何か、嫌な予感がします」
ラス様がリアを強い眼差しで見つめながら言った。
「わ、わかりました! 気をつけます!」
リアも少し焦った表情になったあと、大きく頷き、自分の分のお菓子を持って部屋を出て行った。
「ラス様、嫌な予感って」
「わかりません。ただ、そんな気がしただけです」
「そんな事言われると不安になります」
「ユウマが付いているのなら大丈夫でしょう」
ラス様はそう答えて、また仕事をはじめてしまう。
さあ、私もそろそろお暇しようか。
あ、でも、スコーンは包むものがないから、今、食べちゃおうかな。
そう思って、一口だけまずかじってみる。
ん?
スコーンってなんか、こんな味だったっけ?
「なんか、あんまり美味しくないです、これ。ラス様も食べてみてくれません?」
「甘いものは苦手だと言ってるじゃないですか」
「スコーンだから甘くないですよ」
「手が汚れそうなので嫌です」
ラス様が渋い顔をして断ってくる。
あと一口くらいしかないから、言ってくれたら口にいれてあげられるのに。
うーん。
やっぱりおかしいな。
なんかあまり美味しくないというか、思っていた味じゃない。
大人の味?
普通のスコーンじゃないのかな。
お酒か何か、違うものが入ってる?
だから、アレンくんは私の好みじゃない、って言ったのかな?
だんだん、身体が熱くなってきて、自分の心臓の音が大きく聞こえるようになってきた。
あれ、これ、やばい感じがする。
お酒?
でも、お酒でこんなに急に身体が熱くなるなんてなかったのに。
もしかして、毒、とかじゃないよね?
その間に新しい友達が増えたり、ラス様の弟のイグスさんにすごい変化があったり、色々とあったりはしたけど、私的には楽しく、のんびりとした日々を過ごしていた。
そんなうららかなある日の午後、ラス様が私に言った。
「婚約お披露目パーティーはどうするんですか」
「しないと、駄目ですか、やっぱり」
「した方が良いでしょう」
「ユーニが嫌がってるしいいんじゃね?」
相変わらず、私達はラス様の執務室にたむろしている。
今はユウヤくんと私と部屋の主のラス様だけだけど、普段はユウマくんやリアもいる。
ラス様は仕事中で、どこかいつもより不機嫌そう。
私とユウヤくんがソファに座って飲み食いをしているから、もしかしたら八つ当たり的なものもあるかもしれない。
まあ、気持ちはわかるけど。
ここじゃなくても、自分の部屋で食べればいいもんね。
「嫌がってるしいいんじゃね、っていう問題じゃないだろ」
最近はだいぶ私の前でも敬語がぬけてきて、私としてはとても嬉しいかぎり。
それだけ心を開いてくれてるって事だよね。
呑気にニコニコしていると、ラス様から呆れた目で見られた。
「なんで笑ってるんですか」
「あ、いえ。お披露目パーティーなんてなかったら幸せだなぁって」
「婚約お披露目パーティーもせず、一足飛びで結婚されるおつもりで?」
「平民はそうですよ。相手の両親にご挨拶だけです。まあ友人同士でおめでとう、みたいなのはあるかもしれませんが」
もぐもぐと出してもらっていたケーキを食べていると、トントン、と扉がノックされた。
「あ、ユウヤくんもここにいたんだ!」
ラス様が返事をすると中に入ってきたのはリアだった。
リアがユウヤくんを見て反応したからか、ユウヤくんは不思議そうに聞き返す。
「なんかオレに用事か?」
「私じゃないけどね。セバスさんが来客の時間が近付いてきてるのに帰ってこないって探してたから、ラス様の所にこれから行くから、見かけたら言っときますって話をしてたの」
「わ、やっべ。忘れてた。ユーニ、一人で帰れるか?」
「大丈夫」
ユウヤくんは慌てて立ち上がって私に確認したあと、ラス様の方に振り返る。
「さっきのパーティーの話はまた今度な」
「今度っていつですか」
ラス様の言葉には何も返さず、すれ違うリアに笑いかけてから、ユウヤくんは部屋を出て行った。
リアは中に入ってくると、いつもの私の向かい側の場所に座って、何やら腕にかかえていたものをテーブルの上に置いた。
「それ、どうしたの?」
リアが抱えていたのは大量のチョコレートケーキだった。
一口サイズのケーキが、一つ一つ透明なシートにくるまれていて、とても美味しそう。
「アレンくんがくれたの」
「え、アレンくんが?」
名前を聞くだけでついつい警戒してしまうのをやめられない。
普段はいい子だけど、リアの事になると突拍子もない事をするからなぁ。
「うん。お客さんからもらった大きなケーキを一口サイズに切ったみたい。ほら、毒味しないといけないから」
「あ、そっか」
毒味と聞いて、ラス様の方を見てしまう。
リアはあの事件を知らないから、ラス様の前でこんな話を普通に出来るんだろうな。
当のラス様は私達の事など気にせずに仕事をしている。
「どうかした?」
「ううん。美味しそうだね」
「たくさんもらったから、ユーニも食べない? あと、こっちはユーニがあまり好きじゃないだろうからって渡さないでって言われたんだけど、どう? 食べる?」
そう言って、リアが指さしたのはレーズンの入ったスコーンだった。
レーズンは嫌いじゃないけれど、私個人は何も入ってない方が好きだから、アレンくんの言葉は間違っていない。
でも、なんとなく、今日はレーズンも食べてもいいような気がした。
「でも、リアに食べてほしいのかもしれないよね」
「じゃあ、半分こしない?」
「半分もいらないよ、三分の一くらいでいい」
「そんな面倒なこと言わないでよ。半分でいいでしょ」
部屋の主が何も言ってこないことをいいことに、私とリアはテーブルの上でスコーンを切り分け、チョコレートケーキを二人で分けていく。
「最近、アレンくんはどうなの?」
「うーん、大人しいといえば大人しいけど、私がアスラン王太子殿下を選ぼうか迷ってるのが耳に入ったらしくて、ちょっとそれが心配」
「え、そうなの?」
「アレンくん、裏で情報を買ってるみたいだね。といっても、城内の人によ?」
リアがアスラン王太子殿下との婚約を考えている、というのは、アレンくんに知られないように内密にすすめていたはず。
漏れるとすると、お城に勤めてる偉い人しかいないと思うんだけど、もしかして、昔のイグスさんが話したとか?
「なんか心配だね」
「嫌なこと言わないでよ。まさか、殺されるって事はないと思ってるんだけど」
「そ、それはないでしょ!」
リアの言葉を大きく首を横に振って否定する。
自分のものにならないからって殺しちゃうなんて・・・。
まあ、中にはそんな考えを持つ人もいるかもしれないけど、アレンくんはさすがにそんな人ではないと思う。
それにしても、アレンくんが大人になればなるほど、性格が黒くなっている気がするのは気のせいだろうか。
「さ、ユーニに渡せたし、またアレンくんの所に戻るわ」
「え? なんで?」
「わかんない。なんか、味の感想が聞きたいから、目の前で食べてほしいって言われたから」
「なんか怪しくない?」
目の前で食べないといけない理由がわからなくて、リアが心配になり止めようとすると、リアが笑顔で言った。
「大丈夫。二人になったりしないから。ユウマくんに伝えてから行くよ」
「ならいいけど」
「じゃあ、またね。ラス様も」
「リアさん」
リアが手を振って出ていこうとしたところ、ラス様が仕事の手を止めて呼び止める。
「どうしたんですか?」
「絶対にアレンと二人にならないようにしてください」
「え?」
「何か、嫌な予感がします」
ラス様がリアを強い眼差しで見つめながら言った。
「わ、わかりました! 気をつけます!」
リアも少し焦った表情になったあと、大きく頷き、自分の分のお菓子を持って部屋を出て行った。
「ラス様、嫌な予感って」
「わかりません。ただ、そんな気がしただけです」
「そんな事言われると不安になります」
「ユウマが付いているのなら大丈夫でしょう」
ラス様はそう答えて、また仕事をはじめてしまう。
さあ、私もそろそろお暇しようか。
あ、でも、スコーンは包むものがないから、今、食べちゃおうかな。
そう思って、一口だけまずかじってみる。
ん?
スコーンってなんか、こんな味だったっけ?
「なんか、あんまり美味しくないです、これ。ラス様も食べてみてくれません?」
「甘いものは苦手だと言ってるじゃないですか」
「スコーンだから甘くないですよ」
「手が汚れそうなので嫌です」
ラス様が渋い顔をして断ってくる。
あと一口くらいしかないから、言ってくれたら口にいれてあげられるのに。
うーん。
やっぱりおかしいな。
なんかあまり美味しくないというか、思っていた味じゃない。
大人の味?
普通のスコーンじゃないのかな。
お酒か何か、違うものが入ってる?
だから、アレンくんは私の好みじゃない、って言ったのかな?
だんだん、身体が熱くなってきて、自分の心臓の音が大きく聞こえるようになってきた。
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