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2 浮気は一度では終わらない?
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ハックが出て行った後、静まり返っていた店内が一気に騒がしくなり、隣の席の黒髪の女性が口をとがらせて、向かいに座っている連れの女性に言う。
「黒髪の何が悪いって言うのよ!」
「相手の女が金髪なだけでしょ。黒髪は一般的な髪色なんだから、気にしなくていいわよ。それにあの男、黒髪や黒髪好きを一気に敵に回したわよね」
「あの…、元婚約者が申し訳ございません」
私が謝ると、見知らぬ女性なのに本気でハックの事を怒ってくれる。
「謝る必要なんかありません! 悪いのは、あの男ですよ! 元婚約者でしたら余計に! 隣だったんで聞こえてしまってたんですけど、浮気野郎が何を言ってんだって感じです」
黒髪の人が怒り出すと、周りの人も一緒に怒ってくれる。
「自分の食べた分くらい払うのが普通でしょう!」
「無銭飲食扱いで出禁でいいと思うわ!」
ざわざわと店内が先程よりも騒がしくなった。
お店に迷惑をかけてしまっては良くないので、周りの人に侘びていると、お会計をメイドが済ます際に、お店の人が小声で言うのが聞こえた。
「男性の方のお代は結構です。よくお店に来られておられる方ですので、その時に請求いたします」
「……」
その言葉の意味に気が付いて、ぎゅっと唇を噛み締めた。
さっきの大きな声に驚いて、涙腺がゆるくなってしまっているから。
私にも悪いところはあるのかもしれない。
だけど、浮気したハックにあそこまで言われる筋合いはない。
でも、全然、言い返せなかったわ…。
だって、今までは本当に優しい人だったからショックで…。
「もし、次にあの男が恋人らしき女性と一緒に来たら、伝言をお願いしたいんですけど」
背後から声が聞こえて振り返ると、先程も文句を言っていた彼、ラルディ・アイレットが銀色の長い前髪と黒のローブを揺らし、整った顔を歪めてカウンターに近付くと、店員の言葉を待たずに続ける。
「おめでとう、もれなく浮気されるぞって伝えてください」
「ラル!!」
「浮気する奴は繰り返す奴が多い。助言してやってんだ。それから、お前も目をさませ」
私がラルディを愛称で呼ぶと、ラルは不機嫌そうな顔で振り返って私に言った。
おっとりした性格のため、怒りが後からくるから、よく周りからは反応が遅いと怒られるのだけれど、こういう様な他人に対しての失礼な発言にはすぐに反応できる。
だけど、それだけじゃ意味がないのよね。
「お嬢様。先程のラルディの発言で目をさまされる方は、まだ間に合う方です。どっぷりはまられている方はどんな話を聞いても相手にしませんから、多少は失礼な発言をしても良いかと思われます」
「そうね…。でも、その相手って、さっきのハックの発言では、子供が出来てしまった相手じゃないの? 責任を取るって言っていたのだから大丈夫でしょう?」
「……」
ラルと姉弟だと言われても違和感がないくらいに若く見える、ラルの母でもあり、私の専属メイドでもあるミルルはラルと顔を見合わせた後、大きくため息を吐いた。
2人の様子を見て、私は慌てて尋ねる。
「ちょっと、どういう事? まだハックは浮気するっていうの? 相手に子供ができたのよ?」
「お嬢様、とにかく、婚約破棄の件を家に帰って旦那様にご連絡しましょう」
ミルルに促され、背中を押される様にして、店の前まで迎えに来てくれていた馬車に乗り込んだのだった。
「黒髪の何が悪いって言うのよ!」
「相手の女が金髪なだけでしょ。黒髪は一般的な髪色なんだから、気にしなくていいわよ。それにあの男、黒髪や黒髪好きを一気に敵に回したわよね」
「あの…、元婚約者が申し訳ございません」
私が謝ると、見知らぬ女性なのに本気でハックの事を怒ってくれる。
「謝る必要なんかありません! 悪いのは、あの男ですよ! 元婚約者でしたら余計に! 隣だったんで聞こえてしまってたんですけど、浮気野郎が何を言ってんだって感じです」
黒髪の人が怒り出すと、周りの人も一緒に怒ってくれる。
「自分の食べた分くらい払うのが普通でしょう!」
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ざわざわと店内が先程よりも騒がしくなった。
お店に迷惑をかけてしまっては良くないので、周りの人に侘びていると、お会計をメイドが済ます際に、お店の人が小声で言うのが聞こえた。
「男性の方のお代は結構です。よくお店に来られておられる方ですので、その時に請求いたします」
「……」
その言葉の意味に気が付いて、ぎゅっと唇を噛み締めた。
さっきの大きな声に驚いて、涙腺がゆるくなってしまっているから。
私にも悪いところはあるのかもしれない。
だけど、浮気したハックにあそこまで言われる筋合いはない。
でも、全然、言い返せなかったわ…。
だって、今までは本当に優しい人だったからショックで…。
「もし、次にあの男が恋人らしき女性と一緒に来たら、伝言をお願いしたいんですけど」
背後から声が聞こえて振り返ると、先程も文句を言っていた彼、ラルディ・アイレットが銀色の長い前髪と黒のローブを揺らし、整った顔を歪めてカウンターに近付くと、店員の言葉を待たずに続ける。
「おめでとう、もれなく浮気されるぞって伝えてください」
「ラル!!」
「浮気する奴は繰り返す奴が多い。助言してやってんだ。それから、お前も目をさませ」
私がラルディを愛称で呼ぶと、ラルは不機嫌そうな顔で振り返って私に言った。
おっとりした性格のため、怒りが後からくるから、よく周りからは反応が遅いと怒られるのだけれど、こういう様な他人に対しての失礼な発言にはすぐに反応できる。
だけど、それだけじゃ意味がないのよね。
「お嬢様。先程のラルディの発言で目をさまされる方は、まだ間に合う方です。どっぷりはまられている方はどんな話を聞いても相手にしませんから、多少は失礼な発言をしても良いかと思われます」
「そうね…。でも、その相手って、さっきのハックの発言では、子供が出来てしまった相手じゃないの? 責任を取るって言っていたのだから大丈夫でしょう?」
「……」
ラルと姉弟だと言われても違和感がないくらいに若く見える、ラルの母でもあり、私の専属メイドでもあるミルルはラルと顔を見合わせた後、大きくため息を吐いた。
2人の様子を見て、私は慌てて尋ねる。
「ちょっと、どういう事? まだハックは浮気するっていうの? 相手に子供ができたのよ?」
「お嬢様、とにかく、婚約破棄の件を家に帰って旦那様にご連絡しましょう」
ミルルに促され、背中を押される様にして、店の前まで迎えに来てくれていた馬車に乗り込んだのだった。
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