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7-2 侯爵の本性 (ファリアーナ(妹)Side)
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アシュとの結婚が決まってからのファリアーナは、とても忙しくなった。
結婚式に着るためのドレスの採寸や、今からでも受け取りが間に合うと思われる招待客に花嫁が変更になったことを知らせる書状の作成。ダンスの練習、マナーの再確認など目まぐるしく時間が過ぎていった。
ある日の夕食時、アシュが一緒に食事をしていたファリアーナに話しかける。
「ソーダ伯爵夫妻と跡継ぎがシルフィーナと接触したって報告があったよ。ふざけた話をしたみたいだ」
「ふざけた話、ですか?」
「うん。どうしても君が僕の妻になったことを認めたくないみたいで、君はカムフラージュで、僕と結婚するのは、マナー講師のイクフェ侯爵令嬢らしい」
「サシャ様は婚約者はいらっしゃいませんが、恋人はいらっしゃるはずです。調べたらわかることですのに……」
「この話はイクフェ侯爵家に話をしている。それから彼女の恋人にもね」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
ファリアーナの目の前には、美味しそうなご馳走が並んでいるというのに、姉のせいでまったく食事が喉を通らない。
「シルフィーナと結婚するからという理由で、うちの家はソーダ伯爵家の事業に出資していた。離婚したから打ち切ろうかと思ったが、僕の相手が妹の君に代わったのでそのまま継続すると父は決めていたんだけど」
「そうだったのですね。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。馬鹿なことを言っているのは向こうですから、遠慮なく打ち切ってください!」
伯爵家の事業は彼らの利益であり、領民には関係ない。働いている人間は領民ではあるが、彼らへの補償は父が考えるべきだと、ファリアーナは思った。
「父上はそうするつもりだと言っていた。だって僕の妻になる人がソーダ伯爵の娘であるファリアーナではないと言い張るのなら、彼らに義理立てする必要ないからね」
「本当に私だとわかった時は、援助を求めてきそうですけど、その時はどうされるおつもりなのでしょう」
「あとからどうこう言ってきたって援助なんてしないよ。否定したのは向こうだから」
アシュは冷たい声でそう答えたあと、急に話題を変える。
「聞き忘れていたんだけど、君はどうしてニーカ侯爵に嫁いだの?」
「ど、どうしてと言われましても、私には婚約者になってくれる人がおらず、釣書がきたのはロヴァンス様だけだったのです」
「彼が過去に何をしたか、君は知ってる?」
「……はい? どういうことでしょう?」
ファリアーナが首を傾げると、アシュは眉間に皺を寄せて口を開く。
「彼、三年前にメイド数人に手を出してることがバレたんだ」
「ええっ!?」
「同意があったそうで罪には問われなかったし、本人は心を入れ替えると誓ったらしいけど、彼は懲りてないと思う」
「さ、三年前って私と彼が婚約した年です!」
(それで婚約者がいなかったのね! 両親はそれを知っていて私を彼に嫁がせたんだわ。ロヴァンス様は私が暮らしに慣れてから本性を出すつもりだったのかも)
アシュの言うことが本当ならば、初夜を迎えずに本当に良かったと、ファリアーナは心から思ったのだった。
結婚式に着るためのドレスの採寸や、今からでも受け取りが間に合うと思われる招待客に花嫁が変更になったことを知らせる書状の作成。ダンスの練習、マナーの再確認など目まぐるしく時間が過ぎていった。
ある日の夕食時、アシュが一緒に食事をしていたファリアーナに話しかける。
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「ふざけた話、ですか?」
「うん。どうしても君が僕の妻になったことを認めたくないみたいで、君はカムフラージュで、僕と結婚するのは、マナー講師のイクフェ侯爵令嬢らしい」
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ファリアーナの目の前には、美味しそうなご馳走が並んでいるというのに、姉のせいでまったく食事が喉を通らない。
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「本当に私だとわかった時は、援助を求めてきそうですけど、その時はどうされるおつもりなのでしょう」
「あとからどうこう言ってきたって援助なんてしないよ。否定したのは向こうだから」
アシュは冷たい声でそう答えたあと、急に話題を変える。
「聞き忘れていたんだけど、君はどうしてニーカ侯爵に嫁いだの?」
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(それで婚約者がいなかったのね! 両親はそれを知っていて私を彼に嫁がせたんだわ。ロヴァンス様は私が暮らしに慣れてから本性を出すつもりだったのかも)
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