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プロローグ
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18歳になったレイドック侯爵家の一人娘であるわたし、アルミラの婚約者はクロル王国の国境の検問所で働いている。
わたしが住んでいる場所から婚約者のオズック様が働いている職場まではとても離れていて、彼の実家からも遠い。
そのため彼は現在、職場の寮で暮らしていて、わたしとは遠距離恋愛中だった。
でも、不安はなかった。
手紙は毎日のように送ってくれるし、わたしも返事を欠かさなかった。
彼が食べたかっているお菓子を送ったり、欲しがっている物を送ると、彼からもお返しにと贈り物が届いた。
婚約を認めてはくれたものの、両親は彼との交際を喜んでいるわけではなかった。
でも、わたしは彼のことが大好きで、このまま結婚するのだと思っていた。
オズック様は仕事が忙しくて休みが取れず、なかなか会えない。
わたしから会いに行くからと休みの日を聞いても、変更になるかもしれないから教えられないと言われた。
わたしはどうしても彼に会いたくて、サプライズで会いにいこうと考えた。
彼の手紙には『君に会いたい』といつも書かれてあるから、喜んでくれると思ったのだ。
ちょうど、オズック様と同じ職場でわたしの親友のファニも働いているから、彼女に手紙を書いた。
『サプライズでオズック様に会いに行こうと思うの。彼の勤務が休みの日がわかったりするかしら。あなたにも会いたいから、あなたの休みの日でもいいわ』
彼女には二つ年上の恋人がいて、恋の相談をされていた。
そして、オズック様とのことも応援したいと言われていたからお願いしてみた。
するとすぐに返事がきて、こう書かれていた。
『素敵ね。きっと喜んでくれると思うわ。こちらに来る日だけど、この日はどうかしら。私もあなたに会いたいわ』
わたしは書かれていた日に婚約者と親友に会いに行くことに決めた。
そして、その日はやって来た。
今日の朝早くから家を出て、わたしはまず、彼が住んでいる寮に向かった。
すると、驚くことに彼は寮に住んでいないと管理人の人に言われてしまった。
わたしが送った手紙は全て転送されているのだと言う。
身分証を見せたところ、婚約者だとわかってもらえたので、彼の住んでいる家の住所を教えてもらった。
侍女と一緒に馬車でその住所に向かい、彼の住んでいるという家を見て驚いた。
お金に困っていると言っていたのに、オズック様は豪華な一軒家に住んでいた。
大きな2階建ての屋敷の周りを鉄の柵が囲んでいて、門の奥には綺麗な庭園が見えた。
門の近くには騎士はおらず、侍女に家の入り口にある呼び鈴を鳴らしてもらうため待っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ねえ、こんな所をアルミラに見られたら別れるって言われるんじゃない? そうなってくれたら、私としてはありがたいけど」
「大丈夫だよ。アルミラはオレにべた惚れだ。だから、逆にオレに捨てないでと泣いて縋ってくるはずだよ」
「……ねえ、どうしてアルミラと別れてくれないの? 彼女のことは好きじゃないんでしょう」
「しょうがないだろ。オレは伯爵家の次男だから伯爵家は継げない。だから、次期侯爵と言われているアルミラと結婚してオレが侯爵家を継ぐんだ。アルミラはオレの言うことは何でも信じるし、オレにとっては都合のいい女なんだよ。簡単に離すつもりはない」
「ひどーい。最初からそのつもりだったのね?」
「そうだよ。それに気付かずに、オレに本当に好かれていると思っているアルミラが悪いんだ。単純バカで良かった」
庭園のベンチに寄り添って、周囲の確認もせずに、大きな声で話す二人。
背中をこちらに向けているから顔はわからない。
でも、わたしには誰だかわかった。
わたしと遠距離恋愛をしているはずの婚約者とその恋を応援してくれているはずのわたしの親友だった。
「今日、実はアルミラが来るみたいなことを言っていたわ」
「ゲ、本当かよ? だからさっき、あんなことを聞いてきたのか?」
「ええ。そうよ」
「まあ、大丈夫だろ。アルミラはオレの言うことは何でも信じる女だから、この家も君と住むために買ったと言うよ」
「ちょっとオズック、あなた、彼女と結婚してあげるんでしょう。大事にしないと捨てられるかもよ」
「そんなわけないだろ。候爵の座を手に入れたらアルミラを捨てて君を妻にするよ。言ったろう? アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない。君も早く今の恋人と別れて、オレだけを見ていてほしい」
「本当に? 愛しているわ、オズック!」
抱き合う二人を見て、わたしの中にどす黒い感情が湧き上がるのを感じた。
わたしが住んでいる場所から婚約者のオズック様が働いている職場まではとても離れていて、彼の実家からも遠い。
そのため彼は現在、職場の寮で暮らしていて、わたしとは遠距離恋愛中だった。
でも、不安はなかった。
手紙は毎日のように送ってくれるし、わたしも返事を欠かさなかった。
彼が食べたかっているお菓子を送ったり、欲しがっている物を送ると、彼からもお返しにと贈り物が届いた。
婚約を認めてはくれたものの、両親は彼との交際を喜んでいるわけではなかった。
でも、わたしは彼のことが大好きで、このまま結婚するのだと思っていた。
オズック様は仕事が忙しくて休みが取れず、なかなか会えない。
わたしから会いに行くからと休みの日を聞いても、変更になるかもしれないから教えられないと言われた。
わたしはどうしても彼に会いたくて、サプライズで会いにいこうと考えた。
彼の手紙には『君に会いたい』といつも書かれてあるから、喜んでくれると思ったのだ。
ちょうど、オズック様と同じ職場でわたしの親友のファニも働いているから、彼女に手紙を書いた。
『サプライズでオズック様に会いに行こうと思うの。彼の勤務が休みの日がわかったりするかしら。あなたにも会いたいから、あなたの休みの日でもいいわ』
彼女には二つ年上の恋人がいて、恋の相談をされていた。
そして、オズック様とのことも応援したいと言われていたからお願いしてみた。
するとすぐに返事がきて、こう書かれていた。
『素敵ね。きっと喜んでくれると思うわ。こちらに来る日だけど、この日はどうかしら。私もあなたに会いたいわ』
わたしは書かれていた日に婚約者と親友に会いに行くことに決めた。
そして、その日はやって来た。
今日の朝早くから家を出て、わたしはまず、彼が住んでいる寮に向かった。
すると、驚くことに彼は寮に住んでいないと管理人の人に言われてしまった。
わたしが送った手紙は全て転送されているのだと言う。
身分証を見せたところ、婚約者だとわかってもらえたので、彼の住んでいる家の住所を教えてもらった。
侍女と一緒に馬車でその住所に向かい、彼の住んでいるという家を見て驚いた。
お金に困っていると言っていたのに、オズック様は豪華な一軒家に住んでいた。
大きな2階建ての屋敷の周りを鉄の柵が囲んでいて、門の奥には綺麗な庭園が見えた。
門の近くには騎士はおらず、侍女に家の入り口にある呼び鈴を鳴らしてもらうため待っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ねえ、こんな所をアルミラに見られたら別れるって言われるんじゃない? そうなってくれたら、私としてはありがたいけど」
「大丈夫だよ。アルミラはオレにべた惚れだ。だから、逆にオレに捨てないでと泣いて縋ってくるはずだよ」
「……ねえ、どうしてアルミラと別れてくれないの? 彼女のことは好きじゃないんでしょう」
「しょうがないだろ。オレは伯爵家の次男だから伯爵家は継げない。だから、次期侯爵と言われているアルミラと結婚してオレが侯爵家を継ぐんだ。アルミラはオレの言うことは何でも信じるし、オレにとっては都合のいい女なんだよ。簡単に離すつもりはない」
「ひどーい。最初からそのつもりだったのね?」
「そうだよ。それに気付かずに、オレに本当に好かれていると思っているアルミラが悪いんだ。単純バカで良かった」
庭園のベンチに寄り添って、周囲の確認もせずに、大きな声で話す二人。
背中をこちらに向けているから顔はわからない。
でも、わたしには誰だかわかった。
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「ええ。そうよ」
「まあ、大丈夫だろ。アルミラはオレの言うことは何でも信じる女だから、この家も君と住むために買ったと言うよ」
「ちょっとオズック、あなた、彼女と結婚してあげるんでしょう。大事にしないと捨てられるかもよ」
「そんなわけないだろ。候爵の座を手に入れたらアルミラを捨てて君を妻にするよ。言ったろう? アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない。君も早く今の恋人と別れて、オレだけを見ていてほしい」
「本当に? 愛しているわ、オズック!」
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