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37 自分は別格だと思っている令嬢②
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「何が言いたいのでしょうか」
尋ねてきたルララ辺境伯令嬢に尋ね返す。
「そのままの意味なのですが、理解できませんか?」
「理解するというよりかは納得できません」
一度、言葉を区切って大きなため息を吐いた、ルララ辺境伯令嬢は話題を変えてくる。
「オズック様の件は承知いたしました。このまま話を続けても、お互いに意見は変わらないかと思いますので、フィリップ様のお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「あなたの聞きたい答えを返せなくてごめんなさいね。それから、フィルについてのお話ということですが、どんなことでしょう」
「フィルだなんて、婚約者になられたばかりなのに、もう仲良くなられているんですね」
「お互いに色々ありましたので」
作り笑顔を見せると、ルララ辺境伯令嬢も笑顔を返してくる。
「わたくしもフィリップ様とは色々とありましたわ」
「フィルから聞いております」
「わたくしもアルミラ様のことはオズック様から、お話を伺っております」
ルララ辺境伯令嬢の中で、オズックを認めないわたしは敵と認定されたようだった。
あからさまではないけれど、先ほどとは声のトーンが低いものに変わっている。
そんなことで怯むわけにはいかないので言い返しておく。
「わたしにとってオズック様とのことは過去のことです。彼がどうなろうと、わたしには関係ありませんので、フィルの話をお願いいたします」
「承知いたしました。アルミラ様を心配しているから、お伝えすることだとわかっていただきたいのですが」
ルララ辺境伯令嬢は前置きしてから、話を続ける。
「わたくしとフィリップ様が婚約者の時は、意思疎通が難しかったのです」
「どういう意味でしょうか」
「あの方、無口でしょう。気が利かないわけではないのですが、一緒にいてもつまらないと思いませんか」
「特に無口だと思ったことはありませんし、話しかけたら返事はしてくれます。それに彼と一緒にいてつまらないと思ったことはありません。それは人の好みではないでしょうか」
「女性を楽しませることができない男性はどうかと思いますの」
社交界の女性の間で、彼女が言ったように女性を楽しませることができない男性は紳士ではないと言われているのは、この国では一般的だ。
だから、ルララ辺境伯令嬢は、そのことが言いたいのだと思う。
でも、わたしにしてみれば、先程も彼女に伝えたけれど、別につまらないと思ったことがない。
一緒にして楽しくないと思ったことはないので、そのことを伝える。
「人には合う合わないというものがありますわ。わたしは浮気をする男性よりもフィルのほうがよっぽど素敵だと思います。しかも、何かあった時には守ってくださるのでしょう? とても素敵じゃないですか」
「オズック様だって助けてくださいますわ!」
「どうかわかりませんわよ」
オズックは弱いわけではないけれど、大勢を相手にして対処できるかどうかはまた違ってくる。
フィルは辺境伯令息ということもあり、特に武術に力を入れて教育されていたらしいから、大勢の人に襲われても何とかなったのかもしれない。
どちらにしても、こんなことで言い争うのも馬鹿らしいので、話はここまでにしようと決めた。
「話はそれだけでしょうか」
「後悔するかもしれませんから、お伝えしているのです」
「気持ちはありがたく受け取っておきますわ。ですが、どう受け止めるかはわたしの自由かと思います」
ルララ辺境伯令嬢はわたしの言葉に無言で頷いたあと、立ち上がって頭を下げる。
「余計なことを申し上げたようで失礼いたしました。どうぞ、お幸せに」
「ルララ辺境伯令嬢もオズック様とお幸せに」
テーブルの上に置いていた呼び鈴を鳴らすと、メイドが中に入ってきたので指示をする。
「ルララ辺境伯令嬢がお帰りのようよ」
「承知いたしました。ご案内いたします」
メイドは深々と頭を下げると、扉を大きく開けた。
扉に向かっていく、ルララ辺境伯令嬢の背中に声を掛ける。
「ルララ辺境伯令嬢、一つだけ忠告しておきますわね」
「……何でしょうか」
ルララ辺境伯令嬢は立ち止まり、険しい表情でこちらを振り返った。
「オズック様はフィルほど強くはありません。ですから、暴漢に襲われた際にはすぐに逃げてくださいね」
「ご忠告いただきありがとうございます」
心がこもっていない声でそう言うと、ルララ辺境伯令嬢は部屋から出て行った。
さあ、彼女はどう出てくるかしら。
オズックが勝てることを証明するために、暴漢を手配するのかしらね。
尋ねてきたルララ辺境伯令嬢に尋ね返す。
「そのままの意味なのですが、理解できませんか?」
「理解するというよりかは納得できません」
一度、言葉を区切って大きなため息を吐いた、ルララ辺境伯令嬢は話題を変えてくる。
「オズック様の件は承知いたしました。このまま話を続けても、お互いに意見は変わらないかと思いますので、フィリップ様のお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「あなたの聞きたい答えを返せなくてごめんなさいね。それから、フィルについてのお話ということですが、どんなことでしょう」
「フィルだなんて、婚約者になられたばかりなのに、もう仲良くなられているんですね」
「お互いに色々ありましたので」
作り笑顔を見せると、ルララ辺境伯令嬢も笑顔を返してくる。
「わたくしもフィリップ様とは色々とありましたわ」
「フィルから聞いております」
「わたくしもアルミラ様のことはオズック様から、お話を伺っております」
ルララ辺境伯令嬢の中で、オズックを認めないわたしは敵と認定されたようだった。
あからさまではないけれど、先ほどとは声のトーンが低いものに変わっている。
そんなことで怯むわけにはいかないので言い返しておく。
「わたしにとってオズック様とのことは過去のことです。彼がどうなろうと、わたしには関係ありませんので、フィルの話をお願いいたします」
「承知いたしました。アルミラ様を心配しているから、お伝えすることだとわかっていただきたいのですが」
ルララ辺境伯令嬢は前置きしてから、話を続ける。
「わたくしとフィリップ様が婚約者の時は、意思疎通が難しかったのです」
「どういう意味でしょうか」
「あの方、無口でしょう。気が利かないわけではないのですが、一緒にいてもつまらないと思いませんか」
「特に無口だと思ったことはありませんし、話しかけたら返事はしてくれます。それに彼と一緒にいてつまらないと思ったことはありません。それは人の好みではないでしょうか」
「女性を楽しませることができない男性はどうかと思いますの」
社交界の女性の間で、彼女が言ったように女性を楽しませることができない男性は紳士ではないと言われているのは、この国では一般的だ。
だから、ルララ辺境伯令嬢は、そのことが言いたいのだと思う。
でも、わたしにしてみれば、先程も彼女に伝えたけれど、別につまらないと思ったことがない。
一緒にして楽しくないと思ったことはないので、そのことを伝える。
「人には合う合わないというものがありますわ。わたしは浮気をする男性よりもフィルのほうがよっぽど素敵だと思います。しかも、何かあった時には守ってくださるのでしょう? とても素敵じゃないですか」
「オズック様だって助けてくださいますわ!」
「どうかわかりませんわよ」
オズックは弱いわけではないけれど、大勢を相手にして対処できるかどうかはまた違ってくる。
フィルは辺境伯令息ということもあり、特に武術に力を入れて教育されていたらしいから、大勢の人に襲われても何とかなったのかもしれない。
どちらにしても、こんなことで言い争うのも馬鹿らしいので、話はここまでにしようと決めた。
「話はそれだけでしょうか」
「後悔するかもしれませんから、お伝えしているのです」
「気持ちはありがたく受け取っておきますわ。ですが、どう受け止めるかはわたしの自由かと思います」
ルララ辺境伯令嬢はわたしの言葉に無言で頷いたあと、立ち上がって頭を下げる。
「余計なことを申し上げたようで失礼いたしました。どうぞ、お幸せに」
「ルララ辺境伯令嬢もオズック様とお幸せに」
テーブルの上に置いていた呼び鈴を鳴らすと、メイドが中に入ってきたので指示をする。
「ルララ辺境伯令嬢がお帰りのようよ」
「承知いたしました。ご案内いたします」
メイドは深々と頭を下げると、扉を大きく開けた。
扉に向かっていく、ルララ辺境伯令嬢の背中に声を掛ける。
「ルララ辺境伯令嬢、一つだけ忠告しておきますわね」
「……何でしょうか」
ルララ辺境伯令嬢は立ち止まり、険しい表情でこちらを振り返った。
「オズック様はフィルほど強くはありません。ですから、暴漢に襲われた際にはすぐに逃げてくださいね」
「ご忠告いただきありがとうございます」
心がこもっていない声でそう言うと、ルララ辺境伯令嬢は部屋から出て行った。
さあ、彼女はどう出てくるかしら。
オズックが勝てることを証明するために、暴漢を手配するのかしらね。
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