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36 自分は別格だと思っている令嬢①
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ルララ辺境伯令嬢とは何度か社交場で顔を合わせたことはあったけれど、挨拶以外に話をしたことがないため、外見をはっきりとは覚えていなかった。
ルララ辺境伯令嬢はストレートの艷やかな黒髪を背中に流している目鼻立ちの整った女性で、雰囲気はファニと似ているといえば似ているような気がした。
フィルが自分が悪いのではないかと疑ってしまいたくなることが理解できるくらいに、彼女からは自信に満ち溢れているようなオーラが感じられる。
まだ、言葉を交わしていないので絶対とは言えないけれど、ファニやオズック、そしてアフック様と同じように自分は絶対に間違っていないという考えの持ち主のように見えた。
「お時間をいただき申し訳ございません。アルミラ様にお会いできて本当に光栄ですわ」
ルララ辺境伯令嬢がソファに腰を下ろす前に、わたしに微笑みかけてきた。
だから、わたしも立ったままで挨拶を返す。
「こちらこそ、お会いできて光栄ですわ。どうぞお掛けになって」
「失礼いたします」
赤色のドレスがシワにならないように気をつけながら、ルララ辺境伯令嬢はソファに腰を下ろした。
メイドがお茶を淹れて出て行ったあと、早速、わたしのほうから話しかける。
「本日、ルララ辺境伯令嬢がお話になりたいことは、オズック様の件とフィルの件ですわよね。どんなことをお話されたいのでしょうか」
「まずは、オズック様のお話からさせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまいませんわ。わたしが知り得る範囲であれば、お話させていただきますわ」
頷くと、ルララ辺境伯令嬢は挑戦的な眼差しを向けてくる。
「オズック様は本当に浮気性なのでしょうか」
「わたしにはそうとしか思えませんが、ルララ辺境伯令嬢にはそうは見えないのですか?」
「ええ。彼はわたくしのことをとても大事にしてくださっています」
「失礼なことを申し上げてもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
許可が下りたので、はっきりと言わせてもらう。
「彼に恋をしている間は皆、同じことを言いますわよ」
「……どういう意味でしょうか」
「オズック様は自分のことだけ見てくれていると思いこんでいるということです」
「実際は違うということですの?」
「違っていたから、わたしは婚約を破棄したのです。しかも、オズック様はわたしと婚約を破棄する原因となった相手とは破局しておりますわよね」
無言で見つめると、ルララ辺境伯令嬢は少しだけ眉をひそめて応える。
「アルミラ様と婚約を破棄する原因になったお相手は最低な女性ではないですか。オズック様は悪女に騙されたのです」
「でしたら、あなたの元婚約者である、ドーナモイ伯爵令息も同じなのではないでしょうか。それなのに、どうして彼との婚約を破棄されたのでしょう」
「彼とオズック様を一緒にしないでください」
「それは失礼しました。ですが、悪女に騙された男性という境遇は同じなのではないですか」
「彼は騙されたのではありません。彼女を選んだんです」
「それなら、オズック様もそうでしょう」
ルララ辺境伯令嬢は、オズックが悪く言われることが嫌なようで言い返してくる。
「オズック様の場合は、彼女を選ぶように脅されたということではないでしょうか」
「意味がわかりません。ルララ辺境伯令嬢、回りくどい言い方をするのはやめてください。多少の不敬は許しますので、言いたいことをどうぞ」
厳しい口調で言うと、ルララ辺境伯令嬢は怯む様子もなく首を縦に振る。
「では、言わせていただきます。オズック様が浮気をしたのはアルミラ様に何か非があったとは考えられないでしょうか」
「例えばどんなことでしょう」
「それはわかりません」
「わたしが何一つ悪くなかったとは言いません。でも、やってはいけないことをやるほうがおかしいと思いますし、そんなことを言ってくるあなたは、自分を正当化しようとしている人間にしか思えませんが?」
ルララ辺境伯令嬢は無言でわたしを見つめると、小さく頷く。
「そうですね。サレた側からみればそうなりますわよね」
「あなたも同じ立場になってみればわかると思いますわよ。近いうちに浮気されるでしょうから気持ちはわかるでしょう。といいますか、あなたも元婚約者に浮気された側ですから、そちら側の気持ちもわかるはずなのではないのですか?」
眉をひそめたままのルララ辺境伯令嬢に、わたしは静かに尋ねた。
ルララ辺境伯令嬢はストレートの艷やかな黒髪を背中に流している目鼻立ちの整った女性で、雰囲気はファニと似ているといえば似ているような気がした。
フィルが自分が悪いのではないかと疑ってしまいたくなることが理解できるくらいに、彼女からは自信に満ち溢れているようなオーラが感じられる。
まだ、言葉を交わしていないので絶対とは言えないけれど、ファニやオズック、そしてアフック様と同じように自分は絶対に間違っていないという考えの持ち主のように見えた。
「お時間をいただき申し訳ございません。アルミラ様にお会いできて本当に光栄ですわ」
ルララ辺境伯令嬢がソファに腰を下ろす前に、わたしに微笑みかけてきた。
だから、わたしも立ったままで挨拶を返す。
「こちらこそ、お会いできて光栄ですわ。どうぞお掛けになって」
「失礼いたします」
赤色のドレスがシワにならないように気をつけながら、ルララ辺境伯令嬢はソファに腰を下ろした。
メイドがお茶を淹れて出て行ったあと、早速、わたしのほうから話しかける。
「本日、ルララ辺境伯令嬢がお話になりたいことは、オズック様の件とフィルの件ですわよね。どんなことをお話されたいのでしょうか」
「まずは、オズック様のお話からさせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまいませんわ。わたしが知り得る範囲であれば、お話させていただきますわ」
頷くと、ルララ辺境伯令嬢は挑戦的な眼差しを向けてくる。
「オズック様は本当に浮気性なのでしょうか」
「わたしにはそうとしか思えませんが、ルララ辺境伯令嬢にはそうは見えないのですか?」
「ええ。彼はわたくしのことをとても大事にしてくださっています」
「失礼なことを申し上げてもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
許可が下りたので、はっきりと言わせてもらう。
「彼に恋をしている間は皆、同じことを言いますわよ」
「……どういう意味でしょうか」
「オズック様は自分のことだけ見てくれていると思いこんでいるということです」
「実際は違うということですの?」
「違っていたから、わたしは婚約を破棄したのです。しかも、オズック様はわたしと婚約を破棄する原因となった相手とは破局しておりますわよね」
無言で見つめると、ルララ辺境伯令嬢は少しだけ眉をひそめて応える。
「アルミラ様と婚約を破棄する原因になったお相手は最低な女性ではないですか。オズック様は悪女に騙されたのです」
「でしたら、あなたの元婚約者である、ドーナモイ伯爵令息も同じなのではないでしょうか。それなのに、どうして彼との婚約を破棄されたのでしょう」
「彼とオズック様を一緒にしないでください」
「それは失礼しました。ですが、悪女に騙された男性という境遇は同じなのではないですか」
「彼は騙されたのではありません。彼女を選んだんです」
「それなら、オズック様もそうでしょう」
ルララ辺境伯令嬢は、オズックが悪く言われることが嫌なようで言い返してくる。
「オズック様の場合は、彼女を選ぶように脅されたということではないでしょうか」
「意味がわかりません。ルララ辺境伯令嬢、回りくどい言い方をするのはやめてください。多少の不敬は許しますので、言いたいことをどうぞ」
厳しい口調で言うと、ルララ辺境伯令嬢は怯む様子もなく首を縦に振る。
「では、言わせていただきます。オズック様が浮気をしたのはアルミラ様に何か非があったとは考えられないでしょうか」
「例えばどんなことでしょう」
「それはわかりません」
「わたしが何一つ悪くなかったとは言いません。でも、やってはいけないことをやるほうがおかしいと思いますし、そんなことを言ってくるあなたは、自分を正当化しようとしている人間にしか思えませんが?」
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「そうですね。サレた側からみればそうなりますわよね」
「あなたも同じ立場になってみればわかると思いますわよ。近いうちに浮気されるでしょうから気持ちはわかるでしょう。といいますか、あなたも元婚約者に浮気された側ですから、そちら側の気持ちもわかるはずなのではないのですか?」
眉をひそめたままのルララ辺境伯令嬢に、わたしは静かに尋ねた。
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