【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ

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39 助けを求めてきた人②

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 ドーナモイ伯爵令息がルララ辺境伯令嬢に婚約を破棄されてからどうなったかまでは調べていなかった。

 それにしても、どうして彼はこんな所にいるのかしら。

 不思議に思いつつ、ドーナモイ伯爵令息を見つめていると、フィルが話しかけてくる。

「どうする? たぶん、俺かアルミラに用事なんだと思うけど話を聞いてやるのか?」
「迷うわね。ここで話さなくても人を使って調べることになるでしょうから、その分の時間と手間を省こうかしら」

 フィルにそう答えてから、ドーナモイ伯爵令息を見る。彼が無抵抗であることを確認して、フィルと一緒に彼に近づいていく。

 ドーナモイ伯爵令息は必死に訴えてくる。

「危害を加えようとしているわけではありません! アルミラ様に助けていただきたくて、ここまで来たんです!」
「どうしてアルミラがお前を助けないといけないんだ?」

 わたしの代わりにフィルが尋ねると、ドーナモイ伯爵は顔だけ上げて叫ぶ。

「アルミラ様がオズック様を野放しにしたからですよ!」

 そう言われてしまうと、わたしが甘かったということは認めざるを得ない。

 でも、この人に言われたくない。

「ルララ辺境伯令嬢との件は、あなたが先に浮気をしたんでしょう。だから、あなたは切り捨てられたんじゃないの? それに浮気相手のファニの話はあなたも貴族なんだから噂では知っていたでしょう」

 わたしが言い返すと、ドーナモイ伯爵令息は唇をかみしめて睨んできた。

「俺にしてみれば、あんたがそのことを言えんのかって言いたいんだが」
「そ、それはっ……」

 黙って聞いていたフィルがわたしの前に立って言った。

 ドーナモイ伯爵令息の焦ったような声は聞こえたけれど、フィルの背中で全く前が見えない。

 こんなことを比較するのはどうかと思うけれど、オズックにはこんな風に守ってもらったことはなかったわ。

 守ってもらいたいわけじゃないけど、オズックは自分のことしか考えてなかった。
 だから、目を覚ますことができて本当に良かった。

「どうしたら助けてもらえますか」

 弱々しい声が聞こえたので、フィルの後ろから顔を覗かせてみると、ドーナモイ伯爵は顎を地面に付けて泣きべそをかいていた。
 そんな彼を見てフィルが吐き捨てるように言う。

「アルミラに助けを求めることが間違ってるんだよ。家族に助けてもらえ」
「それができないから、アルミラ様を頼ってきたんです!」

 さっきはわたしを責めていたのに、頼ってきたなんてよく言うわ。

「何で家族に助けてもらえないんだ。アルミラ、意味がわからないから相手にするだけ無駄だ。行こう」

 フィルが背を向けようとした時、ドーナモイ伯爵令息が叫ぶ。

「僕は嵌められて家を追い出されたんです!」
「「嵌められた?」」

 わたしとフィルの声が重なった。
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