【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ

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48 それぞれのこれから①

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 泣いているヒスティー嬢をわたしの家のメイドに任せて、フィルたちにヒスティー嬢のことを相談してみた。
 すると、やったことは良くないことではあるけれど、本当に反省していて、エルモード卿のやろうとしたことを警察に正直に話すのなら重い罰は求めないと言ってくれた。

 このことを伝えて気を大きくされても困るので、警察に口添えはしたけれど、ヒスティー嬢にはその話は伝えなかった。

 だからか、彼女は素直にリアド辺境伯家での話をして、エルモード卿から指示されたことを伝えた。

 その話はすぐにヨレドロール公爵家にも伝わり、エルモード兄弟の除籍を決めた。

 エルモード伯爵夫妻はせめてオズックだけでも助けてくれと訴えた。
 でも、セルロッテ様だけでなく、彼女の旦那様のヨレドロール閣下の命令でもあったため、渋々、エルモード伯爵は息子たちの除籍を応じたそうだ。

 オズックの怪我は未だに治らず、このままでは下半身不随になる可能性があると言われている。

 現在は車椅子生活を送っているようだけど、エルモード伯爵家からの援助がなくなれば、彼は医療費を払えなくなり、どうなるかはわからない。

 今の段階では金の取り立てにあいそうだから、オズックは過去の女性に連絡を取ることもできないようだった。
 だから今は、追い出された兄と一緒に生活しているらしい。


*****


 柔らかな日差しの下で、フィルと一緒にレイドック侯爵邸の庭をゆっくりと歩きながら、わたしたちは会話を続ける。

「エルモード伯爵家の跡継ぎはどうなるのかしら」
「今の伯爵の代で途絶えるんじゃないかと言われている」
「そうなの?」
「ああ。今の時点でもちゃんとした仕事ができてなくて、他の伯爵家が代理でやり始めたらしい」
「じゃあ、その伯爵家の領地に組み込まれる可能性があるのね」
「ああ。エルモード家の領民もそのほうが良いと思う」

 フィルが苦笑して頷いた。

「跡継ぎ予定の人が悪いことをしたことは多くの人に知られたんでしょう?」
「社交界だけじゃなく平民にも流れたよ。兄弟揃っての除籍だから、理由を知りたい人が多かっただろうからな」
「オズックはこのままいけばどうなるのかしら」
「……女性たちの気持ち次第じゃないか?」

 フィルが眉尻を下げて私を見つめるので聞き返す。

「どういうこと?」
「オズックに騙された自分が悪いと思うだけなのか。その他の感情が生まれるのか」
「……そうね。わたしはオズック様にとって、都合の良い女にはなりたくないという感情が勝っていたわ」
「目を覚ましてくれて良かったよ」

 優しく微笑んでくれたフィルに、胸をときめかせつつも聞いてみる。

「目を覚まさなかったら、あなたに迷惑をかけていたかしら」
「迷惑どころか親しくなることもなかっただろうな」
「そうかもしれないわね」

 立ち止まって、近くにある池に目をやった。
 水が綺麗だからか、池の底がはっきりと見える。

 オズックのことは本当に好きだった。
 でも、思った以上に早く立ち直れたのは――

「まだ、オズックのことが好きなのか?」

 同じように足を止めたフィルの質問に、わたしは目を丸くする。

「そんなわけないじゃない」
「なら良いけど」
「何か気になることでもあるの?」
「何もない」

 フィルはなぜか拗ねたような顔をして、わたしの右手を取って歩き出す。
 そんな彼に付いて歩きながら、わたしはファニの話をすることにした。




 
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