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49 それぞれのこれから②
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液体をかけられて顔に傷を負ったファニは、現在は実家に戻ることを許されて、ブァーカルド子爵邸で大人しくしていた。
このままではいけないと、顔を治してくれそうな名医を彼女の両親が見つけ出して、その人に治療をしてもらおうとした。
でも、お医者様は相手がファニだと知ると断ってきたのだという。
「どうして、医者は断ったんだ?」
「お医者様の娘さんの恋人がファニに誘惑されて、娘さんを捨てて、ファニのところへ走ったらしいわ。娘さんは自分で命を落とそうとしたそうよ」
「それは私情をはさみたくなるな。相手の男はどうなったんだ」
「ファニと連絡が取れなくなったので、一時は娘さんとよりを戻そうとしたみたい。お断りされたみたいで、今は家族からも爪弾きにされているそうよ」
「普通はそうだろうな」
フィルが呆れた顔で言った。
「ファニも因果応報といったところかしら。悪いことを何度もしてしまったんだもの。傷つくのはわたしだけで良かったのに」
「アルミラだって傷ついて良いわけじゃない」
「……ありがとうフィル」
微笑むと、フィルは何か言う代わりに私の手を優しく握り直してくれた。
ファニは何とか自分の顔を治してもらおうと必死になっていて、他の名医と懇意にしているセルロッテ様と仲良くなろうとしている。
でも、相手にされないから、わたしと連絡を取って仲介してもらおうとしているんだそうだ。
ブァーカルド子爵がわたしへの手紙を送らないように使用人に命令しているから、一度も届いたことはない。
どんな内容が書いてあるのか気にならないわけじゃないけど、知らなくても良いことだとは思うし、反省するまでは知るつもりもない。
「アルミラはこうなることは予想してたのか?」
「はっきりとした予想はしていなかったわ。だけど、反省しなければ絶対に何か起きるし、自分の手を汚すのが嫌だったの」
一度言葉を止めてから、苦笑してからフィルに尋ねる。
「嫌な女でしょう? どうせ誰かがやると思っていて、それを止めなかったんだから」
「……そうだな。忠告はしても止めなかったもんな」
フィルは頷いてから、すぐに首を横に振る。
「でも、関わりたくないっていう気持ちもわかる。自分がやらなくても誰かがやるし、それにやった誰かは捕まってる。自分の家の名誉を傷つけることになるからな」
「そうなのよね。わたしはまだ若いから、今、没落するわけにはいかないのよ」
「暮らしていけなくなるからか」
「そうよ。平民になったら、誰ももらってくれないわ」
笑いながら言うと、フィルは「これからはその心配をしなくても大丈夫だぞ」と小さな声で言った。
どういう意味かわからなくて聞いてみる。
「フィルはわたしが平民になっても良いの?」
「かまわない。今の仕事があるし暮らしてはいける。貴族の時みたいに多くの金は使えないけど、それでも良かったら」
「ありがとう。嬉しい」
「俺も嬉しい」
「どうしてフィルが喜ぶの?」
笑い合っていると、邸のほうからメイドがわたしたちの元に駆け寄ってくるのが見えた。
「お話中のところ申し訳ございません。ヨレドロール公爵夫人がアフック様のことでお話があるそうで、今からこちらに向かうとの連絡がありました」
話を聞いたフィルとわたしは思わず顔を見合わせた。
※あと2話で完結いたします。
もう少しだけお付き合いくださいませ。
このままではいけないと、顔を治してくれそうな名医を彼女の両親が見つけ出して、その人に治療をしてもらおうとした。
でも、お医者様は相手がファニだと知ると断ってきたのだという。
「どうして、医者は断ったんだ?」
「お医者様の娘さんの恋人がファニに誘惑されて、娘さんを捨てて、ファニのところへ走ったらしいわ。娘さんは自分で命を落とそうとしたそうよ」
「それは私情をはさみたくなるな。相手の男はどうなったんだ」
「ファニと連絡が取れなくなったので、一時は娘さんとよりを戻そうとしたみたい。お断りされたみたいで、今は家族からも爪弾きにされているそうよ」
「普通はそうだろうな」
フィルが呆れた顔で言った。
「ファニも因果応報といったところかしら。悪いことを何度もしてしまったんだもの。傷つくのはわたしだけで良かったのに」
「アルミラだって傷ついて良いわけじゃない」
「……ありがとうフィル」
微笑むと、フィルは何か言う代わりに私の手を優しく握り直してくれた。
ファニは何とか自分の顔を治してもらおうと必死になっていて、他の名医と懇意にしているセルロッテ様と仲良くなろうとしている。
でも、相手にされないから、わたしと連絡を取って仲介してもらおうとしているんだそうだ。
ブァーカルド子爵がわたしへの手紙を送らないように使用人に命令しているから、一度も届いたことはない。
どんな内容が書いてあるのか気にならないわけじゃないけど、知らなくても良いことだとは思うし、反省するまでは知るつもりもない。
「アルミラはこうなることは予想してたのか?」
「はっきりとした予想はしていなかったわ。だけど、反省しなければ絶対に何か起きるし、自分の手を汚すのが嫌だったの」
一度言葉を止めてから、苦笑してからフィルに尋ねる。
「嫌な女でしょう? どうせ誰かがやると思っていて、それを止めなかったんだから」
「……そうだな。忠告はしても止めなかったもんな」
フィルは頷いてから、すぐに首を横に振る。
「でも、関わりたくないっていう気持ちもわかる。自分がやらなくても誰かがやるし、それにやった誰かは捕まってる。自分の家の名誉を傷つけることになるからな」
「そうなのよね。わたしはまだ若いから、今、没落するわけにはいかないのよ」
「暮らしていけなくなるからか」
「そうよ。平民になったら、誰ももらってくれないわ」
笑いながら言うと、フィルは「これからはその心配をしなくても大丈夫だぞ」と小さな声で言った。
どういう意味かわからなくて聞いてみる。
「フィルはわたしが平民になっても良いの?」
「かまわない。今の仕事があるし暮らしてはいける。貴族の時みたいに多くの金は使えないけど、それでも良かったら」
「ありがとう。嬉しい」
「俺も嬉しい」
「どうしてフィルが喜ぶの?」
笑い合っていると、邸のほうからメイドがわたしたちの元に駆け寄ってくるのが見えた。
「お話中のところ申し訳ございません。ヨレドロール公爵夫人がアフック様のことでお話があるそうで、今からこちらに向かうとの連絡がありました」
話を聞いたフィルとわたしは思わず顔を見合わせた。
※あと2話で完結いたします。
もう少しだけお付き合いくださいませ。
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