【完結】どうしていつまでも愛してくれるなんて思えるの?

風見ゆうみ

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9   理解していらっしゃいますか?

  怯える妻の背中を撫でて、クムトは気持ちを落ち着けると、笑みを浮かべてリーナに話しかける。

「リーナ、いい加減にしろと言っているだろう? お前は私たちの娘であり、エランナの姉でもある。幼い頃のお前は妹が幸せならそれでいいと言っていたじゃないか」
「昔の私はそう思っていたのでしょう。ですが、人を騙してまでエランナを幸せにしたいとは思っていなかったはずです。大人のあなたがそんな嘘をついてもいいと思ったことが驚きですが」
「エランナもその場にいたんだろう? なら、嘘ではない」

 苦しい言い訳ではあるが、押し通そうと考えたクムトに待ったが入る。

「お待ちください。私たちの命の恩人はエランナ王女ではないとおっしゃるのですか?」

 ベローナが眉間のシワを深くして尋ねると、クムトは笑みを引きつらせた。

「に、似たようなものです。あの日、エランナも一緒にいましたから」
「……事実を話してください」

 ノッシュの父、ルークスに睨みつけられたクムトは視線を彷徨わせた。埒が明かないと考えたルークスはリーナに視線を移して促す。

「真実を話してくれ」
「承知いたしました」

 リーナは、ノッシュの看病をしたり、ルークスたちにクヨキヨクを譲ったのは自分であるにも拘らず、エランナがしたことになっていたと伝えると、ルークスはこめかみを押さえる。

「では、ノッシュが本当に嫁に希望していた相手は、エランナ王女ではなく、リーナ王女だったということか」
「当たり前のことをしただけですから、まさか、その理由で婚約の話が出ていたなんて知りませんでしたわ」

 リーナは冷たい目をクムトたちに向けて続ける。

「どうしてもエランナをノッシュ様の妻にしたかったのであれば、嘘などつかずに、そうおっしゃれば良かったのではないですか?」
「リーナ! あなたは言いたいことを言っているけれど、自分がどれだけ私たちに迷惑をかけたか自覚はあるの?」

 震えていたソフリーが涙を流しながら訴える。

「あなたは幼い頃から変わった子だと言われていたわ。普通の子が好むようなお人形には興味を示さず、植物のことばかり。あなたに似合うと思って買ったドレスも、すぐに泥まみれ。どうしてあなたは私の嫌がることばかりするの!」

 母親の立場になってみれば、言うことを聞いてもらえず、苛立つ気持ちは理解できるかもしれない。だが、母親になったことのないリーナには、子育てがうまくいかない苛立ちは理解できなかった。

「あなたの思い通りに育ったエランナを優先させたいということですか」
「幼い頃のあなたは家族を愛していると言っていたわ。愛しているのなら、それくらいのことは苦痛ではないでしょう?」

(私には納得できないわ。ドレスを汚したり、お母様の気持ちに応えられなかったことについては申し訳なく思うけれど、子供の頃の私は嫌がらせをしたくて、そんなことをしていたわけじゃない。大体、今の私には家族への愛は弟にしかないわ)

 リーナがため息を吐くと、ベローナが口を開く。

「考え方は人それぞれです。私にとってはそんなことと思うことであっても、あなたには辛かったのでしょう。だが、それを理由に自分の娘に格差をつけるのはおかしいし、他人に嘘をついていいことにはなりません」
「私も妻の意見に同意する。このことについては改めて話をさせてもらうが、エランナ王女の浮気の件は、チゴノイ王国側はどう責任をとってくれるのだろうか」

 ルークスに尋ねられたクムトは、少しの間考えたあと、リーナを指さす。

「では、お詫びにリーナを差し出しましょう。この娘がクヨキヨクを見つけ、薬を作ったのです。式の直前にわかったということにすればいいのです」

 クムトの勝手な言い分に、ノッシュたちは呆れ返って眉根を寄せた。

「お父様、あなたは自分が何を言っているか、理解していらっしゃいますか?」
「当たり前だ」

 怒りを抑えてリーナが尋ねると、クムトはうなずいた。

(付き合っていられないわ)

「そんなことをしても、ムネラノ王国にメリットなどありません」

 リーナにはっきりと言われたクムトは、助けを求めてノッシュたちに目を向けたが、ただ、冷たい視線を送られただけだった。



 
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