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16 負けたりしないわ
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それから三十分も経たないうちに、約束の時間になり、応接室で話をすることになった。
四人がけのソファが二つとローテーブル。暖炉があるが、今の時期は温かい時期なので火はついていない。
メイドがお茶を淹れて出ていくと、リックは今の私の暮らしについて聞いてきた。
「仕事は楽しいか?」
「そうね。あなたの推薦ということもあってみんな優しいし、料理長にも食べっぷりを褒められたわ」
「自分の作った料理を美味しく食べてもらえるのは作り手にとっては嬉しいものだろう」
「そうね。今までは自分で作っていたし、食料が途絶えた時は野草を食べていたから、プロが作ったものが何でも美味しく感じるというのはあるのかもしれないけど、食材が新鮮かどうか見抜く自信はあるわ」
「身をもって覚えたんだろう?」
子供の頃は食べるものがなくて、腐ったものを食べてしまったことがあった。
その時は腹痛で寝込んだし、リックが薬を持ってきてくれて助かったことを覚えている。
「あなたとイセンさんがいなければ、あの時、死んでしまっていたかもしれないわ。助けてくれて本当にありがとう」
「礼はその時に聞いたよ。言わなくても分かってると思うけど、二度とあんなことをするなよ」
「あの時はお腹が減って、口に入れられるものなら何でも良くなっていたのよ」
「嫌な予感がしたから無理して見に行ってよかった」
ふぅと息を吐いて、リックは話題を変えた。
「君の様子が気になっていたのもあるが、今日来てもらったのには別の理由もある」
「クルリン王国の陛下のこと?」
「そうだ。どうして知ってるんだ?」
「イセンさんから聞いたの」
「どこまで聞いたかわからないが、陛下は君に会いたがっている」
「どうしても仕返しがしたいのね。するなら、チャルブッレ家にすればいいのに!」
好きにできる女性がほしいなら元姉を選んでくれたらいいのに!
……とまで言うのは、さすがに駄目か。
「会うのは構わないけれど、二人で会うのは嫌ね」
「当たり前だ。そんなことはさせない。ただ、一つ面倒なお願いをされた」
「どんなこと?」
「君の元姉を俺の婚約者にする気はないかと言ってきた」
「はい?」
「君の元姉をこっちに送り込みたいんだろう」
「そういうこと」
内部に入り込んで、私をどうにかして外に出してジヤ陛下に会わせようとしているのね。
もしくは、あの言葉通り死にたくなるまでいじめるために追いかけてきた?
リックを巻き込むのは申し訳ないけれどいい機会かもしれない。
「断るつもりだが、理由をどうしようか考えている」
こめかみを押さえるリックに提案してみる。
「王太子妃にふさわしいかテストをして合格点なら考えると言ってみるのはどうかしら」
「テスト?」
「私も同じことをするから、私よりも優れていたらいいと言ってみるのもいいかもしれないわ」
追いかけてくるのなら、追いかけてこられないようにするだけよ。
死にたくなるまでいじめてやるなんて言葉を吐く人に絶対に負けたりしないわ。
四人がけのソファが二つとローテーブル。暖炉があるが、今の時期は温かい時期なので火はついていない。
メイドがお茶を淹れて出ていくと、リックは今の私の暮らしについて聞いてきた。
「仕事は楽しいか?」
「そうね。あなたの推薦ということもあってみんな優しいし、料理長にも食べっぷりを褒められたわ」
「自分の作った料理を美味しく食べてもらえるのは作り手にとっては嬉しいものだろう」
「そうね。今までは自分で作っていたし、食料が途絶えた時は野草を食べていたから、プロが作ったものが何でも美味しく感じるというのはあるのかもしれないけど、食材が新鮮かどうか見抜く自信はあるわ」
「身をもって覚えたんだろう?」
子供の頃は食べるものがなくて、腐ったものを食べてしまったことがあった。
その時は腹痛で寝込んだし、リックが薬を持ってきてくれて助かったことを覚えている。
「あなたとイセンさんがいなければ、あの時、死んでしまっていたかもしれないわ。助けてくれて本当にありがとう」
「礼はその時に聞いたよ。言わなくても分かってると思うけど、二度とあんなことをするなよ」
「あの時はお腹が減って、口に入れられるものなら何でも良くなっていたのよ」
「嫌な予感がしたから無理して見に行ってよかった」
ふぅと息を吐いて、リックは話題を変えた。
「君の様子が気になっていたのもあるが、今日来てもらったのには別の理由もある」
「クルリン王国の陛下のこと?」
「そうだ。どうして知ってるんだ?」
「イセンさんから聞いたの」
「どこまで聞いたかわからないが、陛下は君に会いたがっている」
「どうしても仕返しがしたいのね。するなら、チャルブッレ家にすればいいのに!」
好きにできる女性がほしいなら元姉を選んでくれたらいいのに!
……とまで言うのは、さすがに駄目か。
「会うのは構わないけれど、二人で会うのは嫌ね」
「当たり前だ。そんなことはさせない。ただ、一つ面倒なお願いをされた」
「どんなこと?」
「君の元姉を俺の婚約者にする気はないかと言ってきた」
「はい?」
「君の元姉をこっちに送り込みたいんだろう」
「そういうこと」
内部に入り込んで、私をどうにかして外に出してジヤ陛下に会わせようとしているのね。
もしくは、あの言葉通り死にたくなるまでいじめるために追いかけてきた?
リックを巻き込むのは申し訳ないけれどいい機会かもしれない。
「断るつもりだが、理由をどうしようか考えている」
こめかみを押さえるリックに提案してみる。
「王太子妃にふさわしいかテストをして合格点なら考えると言ってみるのはどうかしら」
「テスト?」
「私も同じことをするから、私よりも優れていたらいいと言ってみるのもいいかもしれないわ」
追いかけてくるのなら、追いかけてこられないようにするだけよ。
死にたくなるまでいじめてやるなんて言葉を吐く人に絶対に負けたりしないわ。
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