あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ

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「証拠はないけど、彼女とレイズの仲が良かったことは間違いはないよ」
「それはわたしも知っています。それだけなら浮気相手と断定できないでしょう」
「君がそう言うだろうとわかっているから、火遊びのつもりだったのかもしれない。あんなことをするから、レイズは罰があたったんだ」

 ディール様は冷たい口調でそう言った。

 彼が帰ったあと、わたしはこう考えた。

 ディール様が悪い人だということは間違いない。

 そう思う根拠は、レイズへの対応だ。

 今日の言動もそうだけど、レイズの葬儀の時も親友が死んだというのに、あまりにも落ち着いていた。

 それが紳士の対応なのだと言われてしまえばそれまでだけど、何かが違う。

 義父も涙を流さなかったけど、沈痛な面持ちだった。

 そのことを思い出すと、ディール様が悲しんでいるようには、どうしても見えなかった。

 その日の夕食はお母様と二人だった。

「あなたと婚約が決まってからのディール様は明るい表情になってきたわね」

 お母様は顔を合わせるたびに、ディール様のことを褒める。

 もし、わたしがディール様を疑っているなんて知ったら怒り出しそうね。

 それにしても、お母様のこんな姿を見るのは不快だわ。

 冷静になって考えたら、お母様だってわたしの気持ちがわかるはずなのに、お父様の言う通り、ディール様に入れ込んでしまっているのね。

 お父様も何度か注意してはくれているみたいだけど、無駄みたいだった。

「お母様は誰の母親なんでしょうか」
「……どういうこと?」
「お母様はわたしの気持ちよりディール様の気持ちを優先してますよね」
「それはそうでしょう。向こうは人間ができているんだから」
「……そうですね。それは認めます。わたしはよくできた人間ではありません」
「そうよ。浮気されてしまうような子なんだもの。ちゃんとしていれば、私のように浮気なんてされないの。ディール様だってそう言っていたわ」
「もう、結構です」

 話をするのも嫌になり、話を打ち切ると、お母様に一礼して、わたしはダイニングルームをあとにした。


*****



 わたしなりに調べてみた結果、やはり、レイズが浮気をしている痕跡はなかった。

 メティの行動も、一応調べた結果、レイズが亡くなったあの日は屋敷にはいなかったけれど、家族と一緒にいたことは確認できた。

 家族だけの証言じゃなくて、宿屋の人の証言もあるから間違いはないはずだ。

 ディール様が浮気相手はあなただと言っていたと、メティに伝えるべきか迷った。
 そして、わざとメティと揉めるふりをすることに決めた。

 そうすれば、ディール様の興味をメティからそらせると思った。

 結果、それは上手くいった。
 そしてわかったことは、ディール様はわたしを孤立させて、彼に依存させようとしているということだった。
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