あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ

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8   過去

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 彼の名前はオードル・スノン。
 代々の当主が王家直属の騎士団に入団している、騎士としては名門の家系だ。

 まだ30歳にもならない彼は、現在、仇討ち業を陰で営んでいると聞いたことがある。

 仇討ち業なんて違法なので、風の噂でしかない。
 
 もしかして、レイズの仇討ちをしてくれるのかと思ったら違った。

「後を追って死んでも、周りが悲しむだけだぞ」
「……助言いただきありがとうございます。ですが、わたしはこれを自分に使うつもりではございません」

 苦笑しながら小声で言うと、オードル様は小さく息を吐いた。

「ならいい」

 彼の妹は夫が殺されたショックに耐えきれず、後を追ったと聞いている。

 そして、彼は妹が亡くなる理由は義弟が亡くなったことだとみなし、義弟の仇討ちを彼が実行した。

 義弟は人違いで殺されたため、余計に世間の同情が集まっていた。

「あの……、どうしてわたしを気にかけてくださるのでしょうか」
「……罪滅ぼしだ」
「……罪滅ぼし?」

 心臓の音がいつもよりも大きく聞こえる。

 まさか、この人が……?

「エンドル子爵令息からトルリス伯爵を殺せと依頼されたのは俺だ。そして、俺は仲間と一緒にその依頼を受けた」
「どうして!?」

 周りに人がいることも忘れて、わたしが声を荒らげた時、オードル様はわたしの口を押さえて身をかがめた。

「最後まで話を聞け」
「ううっ!」

 聞くことはできるけど、黙っていることもできなくて、手を引き剥がそうとすると、オードル様は言った。

「引き受けたあとの話をしてやる」

 そう言ったあと、彼は薬師に目で合図をすると、わたしをバックヤードに連れて行ったのだった。

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