騙されていたのは私ではありません

風見ゆうみ

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15  元夫とその恋人の末路 中編

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 エヴァンス家に仕えてくれていた兵士や使用人たちには、30日程度の有給休暇を与えていた。タオズクやナターシャには仕えたくないので、私が屋敷を出たら、仕事を辞めると言う人が続出したからだ。
 屋敷は私名義のものだから、すぐに取り戻すということを伝えると、タオズクが屋敷にいる間だけ、無給でかまわないので、屋敷を出ていかせてくれという話をしてきた。

 だから、有給休暇を取るように提案したのだ。

 一から人を集めるよりも、元々、働いていた人たちを戻すほうが即戦力になる。使用人たちは私の案に喜び、無給の期間があっても待つと言ってくれた。

 使用人たちがいなくなって、タオズクは今頃、どんな顔をしているのかしら。

 王都に向かう馬車の中で考えていると、向かい側に座るリドリー殿下が話しかけてきた。

「何だか楽しそうだね」
「性格が悪いと言われるかもしれませんが、今頃、タオズクたちは使用人がいなくなって困っているだろうなと思いまして、つい、笑みがこぼれてしまいました」
「気持ちはわかるよ」

 リドリー殿下は微笑んで同意してくれた。


******


 王都に着くまでに、何度か宿に泊まることになったけれど、全て、王家が管理している宿に泊まっていた。そこには全て伝書鳩がいて、それぞれの宿屋に飛んでいくように調教されていた。鳩の飛ぶスピードは私たちの移動速度よりも速いので、宿屋に着くたびに、外から見たタオズクたちの様子が書かれた手紙が届いていた。

 それは全て、リドリー殿下が手配してくれたもので、感謝の気持ちを伝えると「可愛い婚約者のためだからね」と笑ってくれた。

 手紙には屋敷内での様子はわからないが、彼らが使用人を求めて街に出ていることや、ナターシャが何も考えずに浪費していることなどが書かれていた。

 そして、家のことで精一杯だったタオズクが、辺境伯家の財政状況に気がついたのは、わたしが王都にたどり着き、国王陛下への謁見を済ませた5日後のことだった。


◇◆◇◆◇◆
(タオズク視点)

 使用人が少しずつ集まり始めて、やっと、仕事に手を付けられるようになった。まずは、お金の面を調べてみようと思い、帳簿を見てみると、大変なことがわかって僕は思わず大声を上げた。

「一体、どういうことだ?」
「どうかしましたか?」

 一人でいることが嫌いなナターシャは、僕がいる執務室のソファで本を読んでいたのだが、僕の声に驚き、本から目を上げて尋ねてきた。

「現金がないんだ」
「……どういうことですか? ま、まさか、ソアが盗んだの!?」
「違うよ。最初からお金がないんだ!」
「はい?」
「帳簿を見てみたら、ここ数年、ずっとギリギリの状況なんだよ! 国に払う税金も延滞していて、逆に補助金を受けてる」
「ということは、贅沢できないってこと!?」

 ナターシャがソファから立ち上がって、僕に近づいてきた。

「贅沢どころか、領地を運営していくことも難しい。国からの補助金も僕が辺境伯を継いだ時点で打ち切られている!」
「ええっ!? じゃあ、どうするんですか?」
「今は鉱山で働けるようになっているから、領民から税金が取れるようになるけど、それまでが大変だ。何かを売って、現金を手に入れないと」
「う、売るって何を売るつもりなの!?」

 そこで僕は思いついた。

 いま、住んでいるこの家を売れば良いのではないかと。でも、それはできなかった。家の名義が僕のものではなく、ソアのものだったからだ。

「王都に出かけてくるよ」
「旅行に行くの!? 新婚旅行に行くのかしら」
「違うよ。補助金の継続をお願いしに行くんだ」

 破産するかもしれないという状況の時に、呑気なことを言うナターシャに苛立ちを覚えた。でも、何も言わずにグッとこらえた。
 今を乗り越えられれば、きっと、ナターシャと幸せな生活を送ることができる。今は我慢しかない。

 そう思い、王都に発つ準備を進めていると、王家からの書状が届いた。
 
 補助金の話だ!

 そう思って明るい気持ちで書状を読み始めたが、内容は予想とは違っていた。

 手紙にはこのまま僕に任せていては、テンプラリー辺境伯領は財政破綻してしまう可能性があるため、王家が管理に入るということ。そして、こんな大変な状況にあるというのに、補助金を打ち切られてすぐに連絡をしてこなかったことは、僕の管理不足だということで、爵位を剥奪すると書かれていた。
 
 
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