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28 弟の住む場所
話を聞いてみたところ、ロブはソナルナ伯爵夫人の所へ喜んで行ったのは良いものの、狭くて汚い部屋に連れて行かれたことは、彼にとっては辛いものだったらしい。
ここ最近は温かい食事ばかりしていたから、食事は冷めているし、嫌なことばかりだと泣いているようだった。
伯爵夫人のほうは、そんなロブにイライラしているみただけど、ロブと一緒にいるということで、今までの冷たい石の壁と鉄格子に囲まれた牢屋ではなく、個室に移動できたから文句は言えないようだった。
「ロブは自分のことしか考えてないんですね」
話を聞いたロザンナはぽつりと呟いた。
「明日の朝に様子を見に行ってみるわ。ロザンナはどうする?」
「私は勉強があるからやめておきます。ロブが反省しているなら良いけど、きっと反省していないと思うから」
「そうね。反省していたら、わたしに助けを求めないわよね。それとも、ロブの年齢では自分のやったことを理解するのは難しいのかしら」
「わかりません。でも、不敬罪については意味を理解できていなかったとしても、お姉様に言った暴言は言ってはいけないことを言ってしまったんだと反省すべきです」
「あまり気にしていないけれど、すぐに許してしまうのもどうかと思うから、今日は会いに行かないわ」
ロブには、あんなことを言われたら言われた人がどう思うか、ある程度は察することのできる人になってほしいと思う。
今は、ワガママを言っているだけだから、わたしに謝りたいという気持ちは反省しているわけではないでしょう。
「明日、様子を見に行くつもりですが、どうして、わたしに謝りたいのかロブに聞いておいてもらえますか?」
報告しに来てくれた人にお願いすると「確認しておきます」と言って帰っていった。
*****
次の日の昼、アクス様と用事があったわたしは、事情を伝えて、用事を済ます前に、アクス様と一緒にロブの様子を見に行った。
面会室に連れてこられたロブは、わたしの顔を見るなり叫ぶ。
「どうして昨日のうちに来てくれなかったの? ちゃんと謝ろうと思ったのに!」
「昨日の内に来なければ、君は謝ることはできないのか?」
一緒に付いてきてくれていたアクス様に尋ねられたロブは怯えた顔になった。
面会室に来る前に、昨日の質問に対する答えを聞いていた。
ロブの答えは「よくわからないけど、リアンナお姉様が怒っているみたいだから」だったらしい。
7歳の子供の記憶なんてそんなものなのかしら。
わたしが7歳の頃は学園に通っていたし、長期休暇の時は戦場にいた。
たくさんの人と関わっていたから、人の顔色ばかり窺っていた気がする。
ロブは家に閉じこもっていたし、使用人たちにはワガママだからということで、親身になってもらえていなかったらしい。
みんな、ロブを邪険にすることはなくても、必要以上に面倒を見なかったみたいだった。
集団生活をすることによって覚えていくものもある。
「別に、今でも謝れるけど……」
「納得いっていないような顔だな」
「テイル公爵令息には関係ないじゃないですか!」
「ロブ! やめて!」
王族のほうが公爵家よりも偉いにしても、伯爵家にしてみれば公爵家だって、かなりの格上だ。
馬鹿なことを口にしない内に止める。
「あなた、どうして捕まってしまったのか、もう忘れたの?」
「……ごめんなさい」
素直に謝るロブに、わたしは妥協案を提案するために、まずは質問する。
「ロブはここにいたくないのよね?」
「うん!」
「じゃあ、どこに行きたいの?」
「とりあえずはリアンナお姉様の家で、お母様たちと皆で住むのがいいかな」
「わたしは嫌よ」
断ると、ロブは座っていた椅子から立ち上がって叫ぶ。
「どうして、そんな意地悪を言うの!?」
「意地悪じゃないわ。ソナルナ伯爵夫妻が、わたしの住んでいる所で住むなんてことはありえない」
「じゃあ、僕にどうしろって言うの!?」
「あなたの願いは、清潔な部屋で眠れて、温かい食事がとれれば良いと考えても良いかしら?」
「うん」
ロブはこれから何を言われるかも知らずに、大きく頷いた。
「なら、あなたを学園の寮に入れるわ」
「えっ!?」
予想もしていなかったのか、ロブはぽかんと口を大きく開けて、わたしを見つめた。
ここ最近は温かい食事ばかりしていたから、食事は冷めているし、嫌なことばかりだと泣いているようだった。
伯爵夫人のほうは、そんなロブにイライラしているみただけど、ロブと一緒にいるということで、今までの冷たい石の壁と鉄格子に囲まれた牢屋ではなく、個室に移動できたから文句は言えないようだった。
「ロブは自分のことしか考えてないんですね」
話を聞いたロザンナはぽつりと呟いた。
「明日の朝に様子を見に行ってみるわ。ロザンナはどうする?」
「私は勉強があるからやめておきます。ロブが反省しているなら良いけど、きっと反省していないと思うから」
「そうね。反省していたら、わたしに助けを求めないわよね。それとも、ロブの年齢では自分のやったことを理解するのは難しいのかしら」
「わかりません。でも、不敬罪については意味を理解できていなかったとしても、お姉様に言った暴言は言ってはいけないことを言ってしまったんだと反省すべきです」
「あまり気にしていないけれど、すぐに許してしまうのもどうかと思うから、今日は会いに行かないわ」
ロブには、あんなことを言われたら言われた人がどう思うか、ある程度は察することのできる人になってほしいと思う。
今は、ワガママを言っているだけだから、わたしに謝りたいという気持ちは反省しているわけではないでしょう。
「明日、様子を見に行くつもりですが、どうして、わたしに謝りたいのかロブに聞いておいてもらえますか?」
報告しに来てくれた人にお願いすると「確認しておきます」と言って帰っていった。
*****
次の日の昼、アクス様と用事があったわたしは、事情を伝えて、用事を済ます前に、アクス様と一緒にロブの様子を見に行った。
面会室に連れてこられたロブは、わたしの顔を見るなり叫ぶ。
「どうして昨日のうちに来てくれなかったの? ちゃんと謝ろうと思ったのに!」
「昨日の内に来なければ、君は謝ることはできないのか?」
一緒に付いてきてくれていたアクス様に尋ねられたロブは怯えた顔になった。
面会室に来る前に、昨日の質問に対する答えを聞いていた。
ロブの答えは「よくわからないけど、リアンナお姉様が怒っているみたいだから」だったらしい。
7歳の子供の記憶なんてそんなものなのかしら。
わたしが7歳の頃は学園に通っていたし、長期休暇の時は戦場にいた。
たくさんの人と関わっていたから、人の顔色ばかり窺っていた気がする。
ロブは家に閉じこもっていたし、使用人たちにはワガママだからということで、親身になってもらえていなかったらしい。
みんな、ロブを邪険にすることはなくても、必要以上に面倒を見なかったみたいだった。
集団生活をすることによって覚えていくものもある。
「別に、今でも謝れるけど……」
「納得いっていないような顔だな」
「テイル公爵令息には関係ないじゃないですか!」
「ロブ! やめて!」
王族のほうが公爵家よりも偉いにしても、伯爵家にしてみれば公爵家だって、かなりの格上だ。
馬鹿なことを口にしない内に止める。
「あなた、どうして捕まってしまったのか、もう忘れたの?」
「……ごめんなさい」
素直に謝るロブに、わたしは妥協案を提案するために、まずは質問する。
「ロブはここにいたくないのよね?」
「うん!」
「じゃあ、どこに行きたいの?」
「とりあえずはリアンナお姉様の家で、お母様たちと皆で住むのがいいかな」
「わたしは嫌よ」
断ると、ロブは座っていた椅子から立ち上がって叫ぶ。
「どうして、そんな意地悪を言うの!?」
「意地悪じゃないわ。ソナルナ伯爵夫妻が、わたしの住んでいる所で住むなんてことはありえない」
「じゃあ、僕にどうしろって言うの!?」
「あなたの願いは、清潔な部屋で眠れて、温かい食事がとれれば良いと考えても良いかしら?」
「うん」
ロブはこれから何を言われるかも知らずに、大きく頷いた。
「なら、あなたを学園の寮に入れるわ」
「えっ!?」
予想もしていなかったのか、ロブはぽかんと口を大きく開けて、わたしを見つめた。
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