あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ

文字の大きさ
23 / 52
第4章 切らなければならない縁

4  (フィーナ視点)

しおりを挟む
※フィーナ(姉)視点です。


 セフィリアとシード様に言いたいことを言われて何も言い返せなくなった私は、悔しくて部屋で泣いていた。

 どうして、誰も私のことをわかってくれないの?

 セフィリアの言いたいことはわかるわ。
 だけど、私には痩せることもロビースト様を諦めることもできない。

 私らしく生きていくには、痩せるという努力はストレスでしかない。
 食べることが好きな私を好きだと言ってくれる人を探せば良いだけかもしれない。

 でも、そんな人はこの世にいないのでしょう?

 ロビースト様はそう言っていたもの。
 
 ロビースト様と私が初めて会ったのは約3年前。
 3年前は私も今よりも痩せていて、ぽっちゃり体型といった感じだった。

 ロビースト様は少し神経質そうだけど、顔立ちは悪くなかったし、次期公爵だから体型などの悪口を言ってきたりしないと思って、私はこの人と結婚すると決めた。

 彼は会うたびに、自分がどんなにすごい人間なのかを教えてくれた。
 そして、彼の話を聞くたびに、自分がどれだけ駄目な人間なのかも実感させられた。

『妻は夫の言うことを何でも聞くべきなのです。ということは、あなたもいつかわたくしの妻になるのですから、わたくしの言うことを何でも聞くべきなのです』

 ロビースト様は優しく微笑んで、そう言った。

 私はロビースト様以外の男性で会話するといえば、お父様かテック、もしくは使用人くらいで、他の男性と話をしたことがなかった。

 だから、こんな風に優しく微笑んでくれる男性は初めてだった。

 彼にふさわしい女性になりたいと思った。
 セフィリアも陰では自分磨きを頑張っていたし、私も頑張ろうと思った。

 でも、それがいけなかった。
 努力することはストレスになってしまい、食欲に走った。

 お父様に止められても、夜中に隠れて食べた。

 だんだん太ってきていたのに、誰も何も言わなかった。
 セフィリアは同じ量、もしくは私よりももっと食べていた。
 でも、セフィリアの場合は運動することが好きで、庭園内をランニングしていたから太ることはなかった。
 
 セフィリアは私にも一緒に走ろうと誘ってきたけど、運動が嫌いな私は誘いを断った。
 そして、どんどん太っていき、2年前にロビースト様にこう言われたのだ。

『痩せなければ婚約を解消させていただきます』

 その言葉を聞いた時、目の前が真っ暗になった気がした。

『あなたのような人を妻にするような人間は、わたくしくらいしかいませんよ?』

 ロビースト様にはいつもそう言われていた。
 セフィリアやテックはそんなことはないと言ってくれていたけど、それは私を慰めてくれていただけだ。

 ロビースト様以外に私を妻にしてくれる人はいない。
 なら、彼に捨てられてしまったら、私はどうなるの?

 テックが公爵の座を継いだら、私は家にいられなくなる。
 追い出したりしないなんて言ってるけど、そんなの嘘よ。
 価値のない人間なんて追い出されるに決まっているわ!

 不安でイライラして食べてしまう。
 私はセフィリアみたいに強くない。

 強い人が弱い人を守るべきなんじゃないの?

 姉だからとか、妹だからとか関係ない!

 どうして、セフィリアは私を守ってくれないの!?
 どうして、セフィリアは私からロビースト様を奪おうとするの!?

 私にはロビースト様しかいないのに!

 トントン。

 部屋の扉が叩かれ、メイドが言う。

「セフィリア様は本日、この家を出て行かれるそうです。フィーナ様はどうされますか?」

 その言葉を聞いて、私の心に希望の光が灯った気がした。

 ソレーヌとかいう女性を太らせればいい。
 私よりももっと彼女が太れば、ロビースト様は私を選んでくれるはず。

「私はここに残るわ」

 そして、絶対にロビースト様と結婚するのよ。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです

コトミ
恋愛
 もうほとんど結婚は決まっているようなものだった。これほど唐突な婚約破棄は中々ない。そのためアンナはその瞬間酷く困惑していた。婚約者であったエリックは優秀な人間であった。公爵家の次男で眉目秀麗。おまけに騎士団の次期団長を言い渡されるほど強い。そんな彼の隣には自分よりも胸が大きく、顔が整っている女性が座っている。一つ一つに品があり、瞬きをする瞬間に長い睫毛が揺れ動いた。勝てる気がしない上に、張り合う気も失せていた。エリックに何とここぞとばかりに罵られた。今まで募っていた鬱憤を晴らすように。そしてアンナは婚約者の取り合いという女の闘いから速やかにその場を退いた。その後エリックは意中の相手と結婚し侯爵となった。しかしながら次期騎士団団長という命は解かれた。アンナと婚約破棄をした途端に負け知らずだった剣の腕は衰え、誰にも勝てなくなった。

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】

小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」 ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。 きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。 いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

処理中です...