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21 旧友との再会

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「アイリスは街に着いたら、行きたいお店とかはあるのかな?」

 嫌な話題を変えるために、リアム様が明るい話題を振ってくれた。

「そうですね。リアム様が予定してくださっている店でかまわないのですが、普段使うものを買いたいです。お小遣いもいただいていますので、そちらのお金を使って買い物したいと思います」
「アイリスがお金の心配をする必要はないよ。ただ、今考えたら、誰か女性を連れてくるべきだったな。女性しか入れなかったり、男性が入りづらい場所もあるからね」
「そう言われてみればそうですね」

 トーイがリアム様の言葉に頷いた。

 実は、今までどうしようか悩んでいたことがあった。

 誰かに頼んでもいいのだけれど、下着はなぜか自分で選びたかった。

 だから、いつか買いに行こうと考えながらも、言い出せなくて今に至る。

 それを今、伝えても良いかしら?

 でも、今日はデートの日なんだから、リアム様と一緒に行動したほうが良いわよね。

 女性の下着を一緒に選ぶ男性もいるけれど、私とリアム様はそういう関係でもない。

 1人で納得していると、リアム様が不思議そうな顔で私を見つめているのに気が付いた。

 馬車が停まっていて、目的地に着いていて、降りようとしない私を不思議に思ったみたいだった。

「あ、あの、申し訳ございません。考えてみましたが、今日はリアム様と一緒に出かけられるなら、それで良いです」
「本当に?」

 街の中央にある噴水の前で馬車からおりて、リアム様に尋ねられた時だった。

「アイリス!」

 名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは、男爵家時代ではただ1人の友人と呼べる子爵令嬢のサマンサがいた。

「え? サマンサ!?」
「やっぱり、アイリスね!」

 サマンサは赤毛の腰まであるウェーブのかかった長い髪とピンク色のドレスのすそを揺らしながら、こちらに向かって手を振っている。

 彼女とは学園に通っていた頃に知り合い、もう10年以上の付き合いだ。

 幼い頃、何も考えずに彼女にした悪戯をきっかけに、そんな事をするなんておかしいと、私に気付かせるきっかけを作ってくれたのも彼女だった。

「久しぶりね、アイリス! あなたが突然いなくなったって、お父様から聞いた時は本当にビックリしたのよ!」

 サマンサは駆け寄ってくると、愛らしい笑顔を見せて言った。

「ごめんね。急遽決まったものだから、すぐには連絡が出来なかったの」
「本当に心配したのよ! でも、すぐに社交界であなたとマオニール公爵閣下が結婚したって話が流れてるって聞いたの。連絡を取りたかったけれど、あなたから連絡が来るまで待とうと思って待っていたのよ。手紙を送って、友達じゃないなんて言われたらショックだから」

 サマンサが私の手をつかんで冗談ぽく笑った時だった。

「アイリス。お友達に時間があるのなら、せっかくだし、2人で美味しいものを食べにいっておいで」

 リアム様が微笑んで私に話しかけてきた。

 その時に、やっとサマンサは、リアム様の存在に気が付いたようで、飛び跳ねるようにして後退り、カーテシーをする。

「マ、マオニール公爵閣下!? お目にかかれて至極光栄に存じます」
「アイリスの友人に会えて僕も嬉しいよ。アイリスとはこれからも引き続き、仲良くしてあげてほしいな」
「はっ! はい! もちろんです!」
「ありがとう。あ、アイリス、ランチだけじゃなくスイーツも食べられる店を予約してるから、そこで2人で好きなものを食べればいい。友人と久しぶりにゆっくりしたらいいよ」
「で、ですが!」

 サマンサと話せるのは嬉しいけれど、今日はリアム様とデートの日なのに!

「いいから。その間、僕はトーイと一緒に仕事をしてくるよ」
 
 リアム様は焦っている私の頭を優しく撫でて言ったあと、今度はサマンサに言う。

「僕の妻の相手をお願いできるかな? 予約している店があるんだ。僕の妻と仲良くしてくれる、お礼になるかはわからないけど、好きなものを遠慮なく食べてくれたらいいから」
「あ、ありがとうございます!」

 サマンサがぺこりと頭を下げると、リアム様は私達に向かって微笑んでから、私達を予約している店まで連れて行ってくれたあとは、3時間後に迎えに来ると言って、トーイ様と護衛の騎士を2人だけ連れて行ってしまわれた。

「本当にマオニール公爵閣下と結婚していたのね」
「う…、うん、そうなの」

 頷くと、サマンサは目をキラキラさせる。

「馴れ初めを聞かせてくれるわよね!?」
「……う、うん」

 お飾りの妻だとは言えないから、話せることだけ、正直に話そうと思った。

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