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22 契約違反?
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「さっきまではアイリスについての話は半信半疑だったんだけど、マオニール公爵閣下との結婚は本当の話だったのね! しかも、仲良くやっているみたいだし、本当に良かったわ!」
興奮冷めやらぬといった感じで、サマンサが自分の胸を両手でおさえながら言った。
白い頬がピンク色に染まっていて、とても可愛らしい。
リアム様が予約をしてくださっていたお店は、貴族しか入れない、セキュリティのしっかりした店で個室しかない店だった。
予約時間よりも早く着いてしまったけれど、お店の人は歓迎してくれた。
公爵夫人相手に嫌な顔が出来ないだけかもしれないので、申し訳なく思った。
個室に案内され、サマンサと私は、手渡されたメニューに書かれた金額を見て、注文を躊躇していたけれど、毒見をしてくれる人がリアム様のオススメを教えてくれたので、大人しくそのコース料理を頼んだ。
オーダーを終えたあと、食事が運ばれてくるのを待っている間に、サマンサに謝罪する。
「ごめんね、サマンサ。なんて連絡すれば良いのか迷っていたのよ」
「かまわないわ。公爵夫人って、とても忙しそうだものね。そうだわ。公爵夫人に、こんな態度を取るなんて失礼ですよね。申し訳ございません」
「やめてよ。公の場ならまだしも、ここには私とサマンサしかいないんだから、今までと態度は変えないで」
サマンサは細かいことは気にしない、おおらかな性格なので、いつも精神的に助けてもらっていたのを思い出す。
だから、今まで通りは難しくても、せめて2人きりの時は友人として接してほしかった。
「では、今はお言葉に甘えるわね。それにしても、一体何があったの? いきなり、マオニール公爵閣下と結婚だなんて。それに、あなたの事で、色んな噂が流れてるわよ?」
「色んな噂って、どういう事?」
聞き返すと、サマンサは困った顔をして聞いてくる。
「アイリス、何が本当なのかわからないし、これは聞いた話であって、私が言ったわけじゃないから怒らないでね?」
「もちろんよ」
私が頷いたのを確認してから、サマンサが教えてくれたのは、私とリアム様の結婚について社交場で流れている、いくつもの噂だった。
「社交場では、色々な噂が流れてるわ。1つはアイリスの両親や婚約者が、マオニール公爵閣下のパーティーで閣下に迷惑をかけたから、迷惑料を請求された。その迷惑料を支払えないかわりに、マオニール公爵閣下が、あなたを妻にしたと」
「……」
間違ってはいない。
あの時、たくさんの人がいたから、誰かが話をしてしまったんでしょうね。
「でもそれは、マオニール公爵閣下があなたに一目惚れをしたから、という前提でもあるみたいだけれど」
リアム様は、そういう風に噂を流すと言われていたから、事実に嘘を混ぜられた感じかしら。
「他にはどんな噂があるの?」
「元婚約者のロバート様はあなたの両親があなたをお金目当てでマオニール公爵閣下に売りに出そうとしたから、自分はそれを拒んだって。そうしたら、マオニール公爵閣下に脅されたって言っていたみたいよ」
サマンサはそこで言葉を区切って苦笑する。
「それに関しては、マオニール公爵閣下から苦情がきたみたいで、ロバート様はそれ以降は何も言わなくなったらしいけれど」
「間違っているような、そうでないような話ね」
小さく息を吐いて答えると、サマンサは苦笑したまま話を再開する。
「あなたの両親は自分達のやったイタズラをマオニール公爵閣下が気に入って、その血を継いでいる自分の娘を欲しいと言い出したって言っているわ。アイリス、どれが本当なの? あなたの両親が言っていることだけは真実ではないと、私は勝手に思っているけど」
サマンサが言い終えたところで、ちょうど料理が運ばれてきた。
だから、料理を美味しくいただきながら、サマンサに答える。
「私の家族が言っているのは本当の嘘ね。どうして、そんな嘘が平気でつけるのかしら。そんな事をしたらどうなるかってことがわからないの?」
「あなたのご両親も妹も本当に変わっているものね。こんなことを言っては失礼だけれど、あまり常識もなさそうだし」
サマンサが大きく息を吐いて続ける。
「あなたの家族のことも気になるけれど、プリステッド公爵令嬢の話も気になるのよね」
「プリステッド公爵令嬢が何か言っているの?」
慌てて尋ねると、サマンサは首を縦に振る。
「マオニール公爵閣下は自分と結婚するつもりだったのに、アイリスに奪われてしまったって。でも、その話に関しては、信じている人は少ないわ」
「そうなの?」
「ええ。どちらかというと、アイリスに奪われたのではなく、フラれただけなんじゃないかと陰で言われているわ」
私達以外、誰もいないのに、サマンサは小声で言った。
「ごめんね、サマンサ」
「……どうしてアイリスが謝るの?」
「色々と心配させてしまって……。もっと早くに連絡すべきだったわよね?」
肩を落とした私に、サマンサは笑顔で言う。
「……そうね。でも、今は気にならないわ。だって、あなたはとても幸せそうだし、私はそんなアイリスと美味しいご飯を食べれて幸せよ」
「ありがとう、サマンサ」
「良いのよ。アイリスは本当に綺麗になったわ。マオニール公爵閣下に恋をしているのね、って、夫婦なのだから、当たり前なのかしら?」
サマンサの言葉を聞いて、私は動きを止める。
「どうしたの、アイリス?」
「あ、あの、恋って、どういうこと?」
「え? もしかして、自覚してないの? それとも本当に恋じゃないの?」
「え? 恋?」
動揺してしまい、上手く答えることが出来なかった。
サマンサから見たわたしは、リアム様のことを好きなんだとわかったと言われて、どうしたら良いのかわからなくなった。
恋なんてしてしまったら、契約違反じゃないの?
興奮冷めやらぬといった感じで、サマンサが自分の胸を両手でおさえながら言った。
白い頬がピンク色に染まっていて、とても可愛らしい。
リアム様が予約をしてくださっていたお店は、貴族しか入れない、セキュリティのしっかりした店で個室しかない店だった。
予約時間よりも早く着いてしまったけれど、お店の人は歓迎してくれた。
公爵夫人相手に嫌な顔が出来ないだけかもしれないので、申し訳なく思った。
個室に案内され、サマンサと私は、手渡されたメニューに書かれた金額を見て、注文を躊躇していたけれど、毒見をしてくれる人がリアム様のオススメを教えてくれたので、大人しくそのコース料理を頼んだ。
オーダーを終えたあと、食事が運ばれてくるのを待っている間に、サマンサに謝罪する。
「ごめんね、サマンサ。なんて連絡すれば良いのか迷っていたのよ」
「かまわないわ。公爵夫人って、とても忙しそうだものね。そうだわ。公爵夫人に、こんな態度を取るなんて失礼ですよね。申し訳ございません」
「やめてよ。公の場ならまだしも、ここには私とサマンサしかいないんだから、今までと態度は変えないで」
サマンサは細かいことは気にしない、おおらかな性格なので、いつも精神的に助けてもらっていたのを思い出す。
だから、今まで通りは難しくても、せめて2人きりの時は友人として接してほしかった。
「では、今はお言葉に甘えるわね。それにしても、一体何があったの? いきなり、マオニール公爵閣下と結婚だなんて。それに、あなたの事で、色んな噂が流れてるわよ?」
「色んな噂って、どういう事?」
聞き返すと、サマンサは困った顔をして聞いてくる。
「アイリス、何が本当なのかわからないし、これは聞いた話であって、私が言ったわけじゃないから怒らないでね?」
「もちろんよ」
私が頷いたのを確認してから、サマンサが教えてくれたのは、私とリアム様の結婚について社交場で流れている、いくつもの噂だった。
「社交場では、色々な噂が流れてるわ。1つはアイリスの両親や婚約者が、マオニール公爵閣下のパーティーで閣下に迷惑をかけたから、迷惑料を請求された。その迷惑料を支払えないかわりに、マオニール公爵閣下が、あなたを妻にしたと」
「……」
間違ってはいない。
あの時、たくさんの人がいたから、誰かが話をしてしまったんでしょうね。
「でもそれは、マオニール公爵閣下があなたに一目惚れをしたから、という前提でもあるみたいだけれど」
リアム様は、そういう風に噂を流すと言われていたから、事実に嘘を混ぜられた感じかしら。
「他にはどんな噂があるの?」
「元婚約者のロバート様はあなたの両親があなたをお金目当てでマオニール公爵閣下に売りに出そうとしたから、自分はそれを拒んだって。そうしたら、マオニール公爵閣下に脅されたって言っていたみたいよ」
サマンサはそこで言葉を区切って苦笑する。
「それに関しては、マオニール公爵閣下から苦情がきたみたいで、ロバート様はそれ以降は何も言わなくなったらしいけれど」
「間違っているような、そうでないような話ね」
小さく息を吐いて答えると、サマンサは苦笑したまま話を再開する。
「あなたの両親は自分達のやったイタズラをマオニール公爵閣下が気に入って、その血を継いでいる自分の娘を欲しいと言い出したって言っているわ。アイリス、どれが本当なの? あなたの両親が言っていることだけは真実ではないと、私は勝手に思っているけど」
サマンサが言い終えたところで、ちょうど料理が運ばれてきた。
だから、料理を美味しくいただきながら、サマンサに答える。
「私の家族が言っているのは本当の嘘ね。どうして、そんな嘘が平気でつけるのかしら。そんな事をしたらどうなるかってことがわからないの?」
「あなたのご両親も妹も本当に変わっているものね。こんなことを言っては失礼だけれど、あまり常識もなさそうだし」
サマンサが大きく息を吐いて続ける。
「あなたの家族のことも気になるけれど、プリステッド公爵令嬢の話も気になるのよね」
「プリステッド公爵令嬢が何か言っているの?」
慌てて尋ねると、サマンサは首を縦に振る。
「マオニール公爵閣下は自分と結婚するつもりだったのに、アイリスに奪われてしまったって。でも、その話に関しては、信じている人は少ないわ」
「そうなの?」
「ええ。どちらかというと、アイリスに奪われたのではなく、フラれただけなんじゃないかと陰で言われているわ」
私達以外、誰もいないのに、サマンサは小声で言った。
「ごめんね、サマンサ」
「……どうしてアイリスが謝るの?」
「色々と心配させてしまって……。もっと早くに連絡すべきだったわよね?」
肩を落とした私に、サマンサは笑顔で言う。
「……そうね。でも、今は気にならないわ。だって、あなたはとても幸せそうだし、私はそんなアイリスと美味しいご飯を食べれて幸せよ」
「ありがとう、サマンサ」
「良いのよ。アイリスは本当に綺麗になったわ。マオニール公爵閣下に恋をしているのね、って、夫婦なのだから、当たり前なのかしら?」
サマンサの言葉を聞いて、私は動きを止める。
「どうしたの、アイリス?」
「あ、あの、恋って、どういうこと?」
「え? もしかして、自覚してないの? それとも本当に恋じゃないの?」
「え? 恋?」
動揺してしまい、上手く答えることが出来なかった。
サマンサから見たわたしは、リアム様のことを好きなんだとわかったと言われて、どうしたら良いのかわからなくなった。
恋なんてしてしまったら、契約違反じゃないの?
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