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20 馬車の中での会話
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エニス達に最後の仕上げをしてもらい、姿見で自分の姿を確認する。
今日は既製品ではあるけれど、お義母さまに買ってもらった、薄い青色のシュミーズドレスに、同じ日に買ってもらったアクセサリーを身につけた。
リアム様の服装と合わせようかと思ったけれど、彼は黒い服しか着ないので、お義母様から止められてしまったのでやめておいた。
メイクはいつもより、少しだけ濃いめにし、髪型もハーフアップではなくシニヨンにした。
「お待たせいたしました!」
最終確認を終えて、急いでエントランスホールに向かうと、リアム様の姿が見えたので声をかけた。
トーイとの会話を止めて、リアム様がこちらに振り返る。
いつもおろしている前髪をあげているだけなのに、全然イメージが違って、ドキドキしてしまった。
そのせいで一気に緊張してしまい、不自然な動きをしながら近付いていくと、リアム様は俯き気味になっていた私の顔を覗き込む。
「アイリス、ちゃんと顔を見せてよ」
「顔は見せていますが……」
「下を向いてるから、ちゃんとわからないよ」
そう言われて、ゆっくりと顔を上げると、リアム様とばっちり目があった。
「今日は髪型だけじゃなく、メイクも変えてるんだね。普段のアイリスも可愛いけど、今日のアイリスも可愛いよ。僕の為におしゃれしてくれたのかな?」
「そそそそ、そうですわぁ!」
社交辞令でも褒め言葉に対して耐性のない私に、リアム様のような素敵な方から言われたということもあり、動揺したせいで声が裏返ってしまった。
そのため、リアム様に爆笑されてしまった。
横にいたトーイも必死に笑いをこらえてくれていて、本当に恥ずかしかった。
「酷いですわ!」
「ご、ごめん! そこまで動揺するだなんて思ってなくて」
拗ねたような顔をしたからか、リアム様は笑うのをやめて、手を差し出してくる。
「では、出かけましょうか、奥様」
「よろしくお願いいたします」
リアム様の手を取って頷いた。
私の左隣にリアム様が座り、リアム様の向かい側にトーイが座り、一台の馬車で今日の目的地に向かった。
護衛の騎士の方も、馬に乗り馬車を囲むようにして付いてきてくれている。
今日は街に買い物と食事に行くことになっている。
トーイはちょうど街に用事があって、別の馬車で行こうとしていたけれど、どうせだから街までは一緒に行こうと、私が誘った。
街に着くまでに時間がかかるので、先程の手紙の件を話したかったということもあった。
手紙についての話を聞いたトーイは、まず謝ってきた。
「アイリス様、申し訳ございません。筆跡までは調べておりませんでした」
手紙の振り分けはトーイの仕事だったらしい。
そうじゃないとわかっているのに、私が読んだだけの話だから、慌てて首を横に振る。
「トーイは悪くないわ。家族からの手紙だとわかっていて読んでいるのですから、誰が悪いかと言われると、読んでしまった私が悪いのです」
「いえ、もっと私が警戒すべきでした」
「そんなことはありません!」
私とトーイ、どちらも譲らないからか、リアム様が言う。
「2人共落ち着いてくれ。今回はトーイもアイリスも悪くないということにしよう。悪いのは嘘をついたノマド男爵だ。それでいいね?」
「……わかりました」
申し訳無さそうな顔をしていたトーイだったけれど、リアム様の言葉に頷き、いつもの冷静な表情に戻って言葉を続ける。
「アイリス様、お許し願えますでしょうか」
「もちろんです! 元々は私の家族が悪いんですから。本当に申し訳ございません」
「アイリスは謝りグセがぬけないね。僕がさっき君もトーイも悪くないって言ったばっかりだろ?」
「そ、それはそうかもしれませんね」
家族の悪戯が私以外にも向けられていた時期は、家族に止めてとお願いしても聞いてくれないし、迷惑をかけた人に対して、私が出来る事は謝る事くらいしかできなかった。
その時のクセが抜けていない。
謝りすぎても反省しているのかと怒られたけれど、子供の頃は、謝ることしか出来なかった。
「それについては少しずつ直していこうか。で、君の毒親をどうするかだけど、やっぱり潰すしかないのかな。そうじゃないとアイリスが辛い思いをするだけだから」
「いつ、また私の目の前に現れるのかと思うと、恐怖ではあります。無理矢理、家に連れて帰られそうなので」
「君の自由を尊重したいから、行動制限をするつもりはないけど、出来れば邸内から1人で出ないでほしい。万が一、アイリスが連れ帰られるようなことがあったら、君には申し訳ないけど、君の家族は生きて次の朝を迎えられないかもしれない」
リアム様はとても爽やかな笑顔で、さらりと恐ろしいことを言われたような…?
「えっと、リアム様、今、なんとおっしゃいました?」
「アイリス様、リアム様は、アイリス様に何かあれば、あなたのご家族が元気に次の日の朝を迎えられないと仰ったんです」
「ど、どういうことでしょうか?」
答えてくれたトーイに聞き返すと説明してくれる。
「ノマド家の方々がアイリス様に会いに来られることに関しては、こちらは何も言いません。ただ、アイリス様がお会いする気がない場合は、マオニール公爵家の敷地内には入れるつもりはありません」
「あ、ああ、そういうことですか。……不法侵入した場合のことを言っておられるんですね」
「そうです」
「その場合はしょうがないと思います」
トーイの言葉に納得する。
公爵家に不法侵入しようとするなんて、ありえないことだものね。
お父様もお母様もそこまで馬鹿じゃないはず。
「リアム様」
「何かな」
「もし、私の家族がご迷惑をかけた場合は、私の事は気にせずに、適切な罰を与えてくださいませ」
「ありがとう。じゃあ、遠慮なくそうさせてもらう」
リアム様は、ホッとしたような顔をして頷いた。
今日は既製品ではあるけれど、お義母さまに買ってもらった、薄い青色のシュミーズドレスに、同じ日に買ってもらったアクセサリーを身につけた。
リアム様の服装と合わせようかと思ったけれど、彼は黒い服しか着ないので、お義母様から止められてしまったのでやめておいた。
メイクはいつもより、少しだけ濃いめにし、髪型もハーフアップではなくシニヨンにした。
「お待たせいたしました!」
最終確認を終えて、急いでエントランスホールに向かうと、リアム様の姿が見えたので声をかけた。
トーイとの会話を止めて、リアム様がこちらに振り返る。
いつもおろしている前髪をあげているだけなのに、全然イメージが違って、ドキドキしてしまった。
そのせいで一気に緊張してしまい、不自然な動きをしながら近付いていくと、リアム様は俯き気味になっていた私の顔を覗き込む。
「アイリス、ちゃんと顔を見せてよ」
「顔は見せていますが……」
「下を向いてるから、ちゃんとわからないよ」
そう言われて、ゆっくりと顔を上げると、リアム様とばっちり目があった。
「今日は髪型だけじゃなく、メイクも変えてるんだね。普段のアイリスも可愛いけど、今日のアイリスも可愛いよ。僕の為におしゃれしてくれたのかな?」
「そそそそ、そうですわぁ!」
社交辞令でも褒め言葉に対して耐性のない私に、リアム様のような素敵な方から言われたということもあり、動揺したせいで声が裏返ってしまった。
そのため、リアム様に爆笑されてしまった。
横にいたトーイも必死に笑いをこらえてくれていて、本当に恥ずかしかった。
「酷いですわ!」
「ご、ごめん! そこまで動揺するだなんて思ってなくて」
拗ねたような顔をしたからか、リアム様は笑うのをやめて、手を差し出してくる。
「では、出かけましょうか、奥様」
「よろしくお願いいたします」
リアム様の手を取って頷いた。
私の左隣にリアム様が座り、リアム様の向かい側にトーイが座り、一台の馬車で今日の目的地に向かった。
護衛の騎士の方も、馬に乗り馬車を囲むようにして付いてきてくれている。
今日は街に買い物と食事に行くことになっている。
トーイはちょうど街に用事があって、別の馬車で行こうとしていたけれど、どうせだから街までは一緒に行こうと、私が誘った。
街に着くまでに時間がかかるので、先程の手紙の件を話したかったということもあった。
手紙についての話を聞いたトーイは、まず謝ってきた。
「アイリス様、申し訳ございません。筆跡までは調べておりませんでした」
手紙の振り分けはトーイの仕事だったらしい。
そうじゃないとわかっているのに、私が読んだだけの話だから、慌てて首を横に振る。
「トーイは悪くないわ。家族からの手紙だとわかっていて読んでいるのですから、誰が悪いかと言われると、読んでしまった私が悪いのです」
「いえ、もっと私が警戒すべきでした」
「そんなことはありません!」
私とトーイ、どちらも譲らないからか、リアム様が言う。
「2人共落ち着いてくれ。今回はトーイもアイリスも悪くないということにしよう。悪いのは嘘をついたノマド男爵だ。それでいいね?」
「……わかりました」
申し訳無さそうな顔をしていたトーイだったけれど、リアム様の言葉に頷き、いつもの冷静な表情に戻って言葉を続ける。
「アイリス様、お許し願えますでしょうか」
「もちろんです! 元々は私の家族が悪いんですから。本当に申し訳ございません」
「アイリスは謝りグセがぬけないね。僕がさっき君もトーイも悪くないって言ったばっかりだろ?」
「そ、それはそうかもしれませんね」
家族の悪戯が私以外にも向けられていた時期は、家族に止めてとお願いしても聞いてくれないし、迷惑をかけた人に対して、私が出来る事は謝る事くらいしかできなかった。
その時のクセが抜けていない。
謝りすぎても反省しているのかと怒られたけれど、子供の頃は、謝ることしか出来なかった。
「それについては少しずつ直していこうか。で、君の毒親をどうするかだけど、やっぱり潰すしかないのかな。そうじゃないとアイリスが辛い思いをするだけだから」
「いつ、また私の目の前に現れるのかと思うと、恐怖ではあります。無理矢理、家に連れて帰られそうなので」
「君の自由を尊重したいから、行動制限をするつもりはないけど、出来れば邸内から1人で出ないでほしい。万が一、アイリスが連れ帰られるようなことがあったら、君には申し訳ないけど、君の家族は生きて次の朝を迎えられないかもしれない」
リアム様はとても爽やかな笑顔で、さらりと恐ろしいことを言われたような…?
「えっと、リアム様、今、なんとおっしゃいました?」
「アイリス様、リアム様は、アイリス様に何かあれば、あなたのご家族が元気に次の日の朝を迎えられないと仰ったんです」
「ど、どういうことでしょうか?」
答えてくれたトーイに聞き返すと説明してくれる。
「ノマド家の方々がアイリス様に会いに来られることに関しては、こちらは何も言いません。ただ、アイリス様がお会いする気がない場合は、マオニール公爵家の敷地内には入れるつもりはありません」
「あ、ああ、そういうことですか。……不法侵入した場合のことを言っておられるんですね」
「そうです」
「その場合はしょうがないと思います」
トーイの言葉に納得する。
公爵家に不法侵入しようとするなんて、ありえないことだものね。
お父様もお母様もそこまで馬鹿じゃないはず。
「リアム様」
「何かな」
「もし、私の家族がご迷惑をかけた場合は、私の事は気にせずに、適切な罰を与えてくださいませ」
「ありがとう。じゃあ、遠慮なくそうさせてもらう」
リアム様は、ホッとしたような顔をして頷いた。
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