19 / 69
19 憂鬱になる手紙
しおりを挟む
お父様達は、リアム様達がその日は行けないと断ったにも関わらず、案の定、指定した店にやって来ていた。
私達が来ないと怒りながら飲食をしたあと、マオニール公爵の奢りだと言って、お金を払わずに帰ろうとしたそうだった。
当たり前だけれど、そんなことが許されるわけもなく、そのレストランが雇っていた用心棒に無銭飲食だと捕まえられた。
事前にリアム様がお店に連絡を入れていたので、最終的には家族は怖い思いをして、店から放り出されただけで済んだらしかった。
家族が迷惑をかけたことに対して、リアム様に何度も謝っていたら「謝らなくてもいいから、そのかわり、リアムと呼んでくれないか?」と言われてしまった。
リアム様にはとてもお世話になっているので、何かお返ししたい。
だから、せめてリアム、と呼ぶ事くらいは、と思っているんだけど、中々、それが簡単なようで難しかった。
「そうだな。それが無理なら、2人で街に出かけないか」
「2人で、ですか?」
お義母様と一緒に3人でなら何度か出かけたことはあっても、リアム様と2人というのは今までになかった。
「うん。契約違反かな」
「いいえ! それが恩返しになるのでしたら、ぜひお出かけさせてください!」
「アイリスは本当にいいの? 嫌じゃない?」
私にとって、リアム様とのお出かけが嫌なものであるはずはないから、首を横に振る。
「嫌なわけありません。楽しみにしています」
「僕も楽しみにしてるよ。駄目な日にちはあったりするのかな?」
「いいえ。特にありませんので、リアム様の都合にあわせます」
こうして、私はリアム様と初デートをすることになった。
日にちはリアム様から後ほど教えてもらい、その日は、緊張と嬉しい気持ちとでいっぱいになった。
そして、デート当日の朝、出かける準備をある程度終えて、よく日の当たる窓際に置いてある安楽椅子に座り、時間が来るまでソワソワしていた。
すると、部屋の外からメイドのエニスの声が聞こえた。
「アイリス様宛にお手紙が届いております」
「私に……?」
部屋に入ってもらって手紙を受け取り、差出人の名を確認すると、サマンサという私の友人の名前が書かれてあった。
けれど、学生時代に見慣れたサマンサの文字ではなく、ココルの文字だとわかった。
「これ、ココルからだわ……」
「申し訳ございません、アイリス様! ご家族からのお手紙はアイリス様にはお見せしないようにと言われておりますので持ち帰りますね」
「何が書かれてあるか見てもいいかしら?」
「おすすめは出来ませんが……」
エニスが心配そうに私を見つめて言った。
エニスには部屋から出てもらい、封筒を見つめて1人で考えた後、結局、私は何が書いてあるのか確かめることに決めた。
手紙の内容は予想していた通り、本当にくだらなかった。
家計管理の仕方が全くわからないという事、金庫を開ける番号がわからない。
結納金はもう少し欲しかったなど、わかってはいたけれど、読むのが無駄としか思えない事が多く書かれていた。
今まで、父や家族からの手紙は、全部リアム様が私に渡さずに燃やしてくれていたらしい。
父はそれに気が付いたのか、友人の名前をココルに書かせ、改めて私宛に手紙を送ってきたんだと思われる。
リアム様達も友人の名前が書いてあるものを勝手に処理する事は出来ないだろうから。
手紙の内容で1番かちんときたのは、使用人の給料に関してで、月給がいくらかわからなかったらしく、言い値で支払ったそう。
そのことについて、ちゃんと管理も出来ていなかったのか、と文句が書かれていた。
ノマド家の財政が今、どうなっているのかわからないけれど、もしかすると、大赤字かもしれない。
金庫の番号やその他諸々については、簡単にだけれど、ノートにまとめて置いてきたから、それを見ればわかるはずだし、使用人への給料だって、帳簿を見ればわかるはず。
他の人にまで迷惑をかけているのなら、返事を返した方が良いの?
迷ったけれど、手紙の最後に書かれていた一文を見ると、返事を書く気持ちは一瞬にしてなくなった。
『近々、ロバートと一緒にお前に会いに行く』
私が返事を返さないから、とうとう会いに来ることに決めたのね。
しかも、ロバートを連れてくる必要はあるの?
それならそれで、もういいわ。
それまでに新たにノートを用意して、そこに質問の答えを書いて、それを渡したら帰ってもらうことにしましょう。
読んだことにより、お父様達が来ることがわかっただけでも良いということにしようと思った。
けれど、このことを、リアム様に伝えないといけないことは憂鬱だった。
「アイリス様、リアム様が早めにご準備が出来たそうで、アイリス様の準備が整ったら出かけたいと仰っています」
部屋の外からエニスの声が聞こえた。
「わかったわ! じゃあ、申し訳ないけれど、準備をしてくれる?」
手紙を書き物机の上に放り投げるようにして置いて、ドアの向こうのエニスに言った。
私達が来ないと怒りながら飲食をしたあと、マオニール公爵の奢りだと言って、お金を払わずに帰ろうとしたそうだった。
当たり前だけれど、そんなことが許されるわけもなく、そのレストランが雇っていた用心棒に無銭飲食だと捕まえられた。
事前にリアム様がお店に連絡を入れていたので、最終的には家族は怖い思いをして、店から放り出されただけで済んだらしかった。
家族が迷惑をかけたことに対して、リアム様に何度も謝っていたら「謝らなくてもいいから、そのかわり、リアムと呼んでくれないか?」と言われてしまった。
リアム様にはとてもお世話になっているので、何かお返ししたい。
だから、せめてリアム、と呼ぶ事くらいは、と思っているんだけど、中々、それが簡単なようで難しかった。
「そうだな。それが無理なら、2人で街に出かけないか」
「2人で、ですか?」
お義母様と一緒に3人でなら何度か出かけたことはあっても、リアム様と2人というのは今までになかった。
「うん。契約違反かな」
「いいえ! それが恩返しになるのでしたら、ぜひお出かけさせてください!」
「アイリスは本当にいいの? 嫌じゃない?」
私にとって、リアム様とのお出かけが嫌なものであるはずはないから、首を横に振る。
「嫌なわけありません。楽しみにしています」
「僕も楽しみにしてるよ。駄目な日にちはあったりするのかな?」
「いいえ。特にありませんので、リアム様の都合にあわせます」
こうして、私はリアム様と初デートをすることになった。
日にちはリアム様から後ほど教えてもらい、その日は、緊張と嬉しい気持ちとでいっぱいになった。
そして、デート当日の朝、出かける準備をある程度終えて、よく日の当たる窓際に置いてある安楽椅子に座り、時間が来るまでソワソワしていた。
すると、部屋の外からメイドのエニスの声が聞こえた。
「アイリス様宛にお手紙が届いております」
「私に……?」
部屋に入ってもらって手紙を受け取り、差出人の名を確認すると、サマンサという私の友人の名前が書かれてあった。
けれど、学生時代に見慣れたサマンサの文字ではなく、ココルの文字だとわかった。
「これ、ココルからだわ……」
「申し訳ございません、アイリス様! ご家族からのお手紙はアイリス様にはお見せしないようにと言われておりますので持ち帰りますね」
「何が書かれてあるか見てもいいかしら?」
「おすすめは出来ませんが……」
エニスが心配そうに私を見つめて言った。
エニスには部屋から出てもらい、封筒を見つめて1人で考えた後、結局、私は何が書いてあるのか確かめることに決めた。
手紙の内容は予想していた通り、本当にくだらなかった。
家計管理の仕方が全くわからないという事、金庫を開ける番号がわからない。
結納金はもう少し欲しかったなど、わかってはいたけれど、読むのが無駄としか思えない事が多く書かれていた。
今まで、父や家族からの手紙は、全部リアム様が私に渡さずに燃やしてくれていたらしい。
父はそれに気が付いたのか、友人の名前をココルに書かせ、改めて私宛に手紙を送ってきたんだと思われる。
リアム様達も友人の名前が書いてあるものを勝手に処理する事は出来ないだろうから。
手紙の内容で1番かちんときたのは、使用人の給料に関してで、月給がいくらかわからなかったらしく、言い値で支払ったそう。
そのことについて、ちゃんと管理も出来ていなかったのか、と文句が書かれていた。
ノマド家の財政が今、どうなっているのかわからないけれど、もしかすると、大赤字かもしれない。
金庫の番号やその他諸々については、簡単にだけれど、ノートにまとめて置いてきたから、それを見ればわかるはずだし、使用人への給料だって、帳簿を見ればわかるはず。
他の人にまで迷惑をかけているのなら、返事を返した方が良いの?
迷ったけれど、手紙の最後に書かれていた一文を見ると、返事を書く気持ちは一瞬にしてなくなった。
『近々、ロバートと一緒にお前に会いに行く』
私が返事を返さないから、とうとう会いに来ることに決めたのね。
しかも、ロバートを連れてくる必要はあるの?
それならそれで、もういいわ。
それまでに新たにノートを用意して、そこに質問の答えを書いて、それを渡したら帰ってもらうことにしましょう。
読んだことにより、お父様達が来ることがわかっただけでも良いということにしようと思った。
けれど、このことを、リアム様に伝えないといけないことは憂鬱だった。
「アイリス様、リアム様が早めにご準備が出来たそうで、アイリス様の準備が整ったら出かけたいと仰っています」
部屋の外からエニスの声が聞こえた。
「わかったわ! じゃあ、申し訳ないけれど、準備をしてくれる?」
手紙を書き物机の上に放り投げるようにして置いて、ドアの向こうのエニスに言った。
147
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
『婚約破棄されましたが、孤児院を作ったら国が変わりました』
ふわふわ
恋愛
了解です。
では、アルファポリス掲載向け・最適化済みの内容紹介を書きます。
(本命タイトル①を前提にしていますが、他タイトルにも流用可能です)
---
内容紹介
婚約破棄を告げられたとき、
ノエリアは怒りもしなければ、悲しみもしなかった。
それは政略結婚。
家同士の都合で決まり、家同士の都合で終わる話。
貴族の娘として当然の義務が、一つ消えただけだった。
――だから、その後の人生は自由に生きることにした。
捨て猫を拾い、
行き倒れの孤児の少女を保護し、
「収容するだけではない」孤児院を作る。
教育を施し、働く力を与え、
やがて孤児たちは領地を支える人材へと育っていく。
しかしその制度は、
貴族社会の“当たり前”を静かに壊していった。
反発、批判、正論という名の圧力。
それでもノエリアは感情を振り回さず、
ただ淡々と線を引き、責任を果たし続ける。
ざまぁは叫ばれない。
断罪も復讐もない。
あるのは、
「選ばれなかった令嬢」が選び続けた生き方と、
彼女がいなくても回り続ける世界。
これは、
恋愛よりも生き方を選んだ一人の令嬢が、
静かに国を変えていく物語。
---
併せておすすめタグ(参考)
婚約破棄
女主人公
貴族令嬢
孤児院
内政
知的ヒロイン
スローざまぁ
日常系
猫
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる