人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

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17 同じ立場だと訴える者①

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 これ以上は馬鹿なことは言わないでほしい。
 廃嫡もそうだけれど、家から追い出されてしまったりしたら、お姉様との婚約が解消されてしまう。

 そんなことは絶対に駄目よ。

 そう思っていた時、デイリ様が口を開く。

「父上、本当に僕は……」
「まだ言うのか?」

 シンス侯爵に尋ねられたデイリ様は、私に助けを求めるかのように情けない顔をして見つめてくる。

 さすがにお人好しの私でも助ける気にはなれないわ。

「私はデイリ様のしたことはいじめだと思っています。遊びだなんてありえません!」

 エディ様に抱きしめられた状態で叫ぶと、デイリ様は不満そうな顔になって言い返してくる。

「……わかったよ! 君がいじめだというのならいじめなんだろう。認めるよ! そんなつもりじゃなかってんだ。悪かったよ」

 デイリ様は投げやりな口調でそう言ってから、悲しげな表情になって話を続ける。

「でも、それなら今のこの状況は僕にしてみればいじめだよ。君はいじめというやってはいけないということを僕にもやってるんだ。それは許されるのか?」
「は?」

 私が聞き返す前に、エディ様が反応した。

「君が悪いことをしたからいけないことだと注意することがいじめになるのか?」
「そうです。そんな話はこんなに大勢の前でする話じゃない! 僕は傷付いているんです! どんなことで辛いと思うかは人それぞれでしょう!? いじめられているという立場なら、僕はリネと同じです!」
「デイリ、お前は……」

 デイリ様の言い分を聞いたシンス候爵が大きく息を吐いた。

 このままでは本当にまずいわ。

 どうして、火に油を注ぐようなことばかり言うの?

 デイリ様には期待できないので、私はシンス侯爵に考えていることを伝えようと決めた。

「エディ様、シンス侯爵、場所を変えてお話させていただけませんか?」
「リネのお願いなら」
「もちろんだよ」

 私とエディ様、そしてシンス侯爵は教室から出て、廊下で立ち話をすることになった。

「シンス侯爵、私情を挟んでしまうのですが、私はお姉様のことも許せません。もし、シンス侯爵が今回のことで少しでも私に申し訳ないと思ってくださるのなら」
「もちろん、申し訳なく思っているよ。私に出来ることといえば、デイリとトワナ嬢の婚約を破棄することかな?」
「いいえ、逆です。婚約の破棄も解消もできないようにしていただきたいのです」
「……だが、少なくとも私はデイリを廃嫡するつもりでいるんだ。君にした行為は到底許されるものではないから」
「それは私もそう思います。ですが、今、それをされると困るんです。お姉様はデイリ様との婚約を解消したがっています。お姉様の思い通りにさせたくないんです」
「だが、廃嫡したら、君の両親が婚約の継続を許さないだろう?」

 困った顔をされるシンス候爵に、エディ様がお願いしてくれる。

「廃嫡の件については、公にするのは控えてくださいませんか。もしくは、二人が結婚後に廃嫡、縁を切るなどの処置をしてください」
「正直に言えば、性格の悪いもの同士で結婚してほしいんです。結婚後にデイリ様を廃嫡、もしくは縁を切ってもらえば、二人は幸せにはなれないのではないかと……。もちろん、性格の悪いことを言っていると理解しております」

 エディ様と私の話を聞いたシンス候爵は大きなため息を吐く。
 
「そんな騙し討ちのようなことをしても良いのだろうか」
「やはり、御子息相手では決断できませんか?」
「……」

 エディ様の挑戦的な口調に、シンス候爵は眉根を寄せた。
 けれど、すぐに表情を緩めて首を横に振る。

「いいえ。私はデイリの父でもありますが、候爵でもあります」

 シンス候爵は私とエディ様を見て言葉を続ける。

「承知しました。どうやら、リネとの婚約破棄について、ティファス伯爵夫妻は私に嘘を言っているようですから、こちらも何か言われた際にはということにしましょう」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 私が頭を下げると、頭上からシンス候爵の焦った声が聞こえてくる。

「リネ、頭を上げてくれ。謝らないといけないのは私のほうだよ。君のご両親やデイリ、トワナ嬢の言うことを真に受けて、君に話を聞くことさえしなかった。しかも、デイリがあんなことまで……、本当に申し訳ない」
「私にも問題はあったのだと思います。でも、いじめをしても良いわけではありませんので、それだけはデイリ様にわかっていただきたいです」

 顔を上げてお願いすると、シンス候爵は頷く。

「わかっているよ。デイリは退学処分だろうから、この後に学園長に会っね、退学の手続きをするつもりだよ。ただ、主犯はデイリだけじゃないようだけど、どうするつもりだい?」

 チープ男爵令息とフールー伯爵令嬢のことを言っているのだと思われる。

 二人についてはまだ、何も考えていなかった。

 セルフ先生とデイリ様とのことで、今の私には精一杯だった。

 私が疲れた顔をしていたからか、エディ様が代わりに答えてくれる。

「シンス候爵、ご心配なく。無罪放免にはしませんよ。ただ、今日のリネはもう……」
「……そうだな。リネ、本当に悪かった」
「いいえ」

 首を横に振ると、シンス候爵は教室のほうに目を向けて口を開く。

「馬鹿息子を連れて帰るよ。すぐには家から追い出しはしないが、結婚までは屋敷に閉じ込めるし、結婚後は小間使いの話は無しにして、君と二度と会うことのできない場所に送ることにする。もちろんトワナ嬢も一緒にだ」
「お願いいたします」

 私が頭を下げると、シンス候爵は先に教室の中に入っていかれた。
 
 
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