人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

文字の大きさ
41 / 59

33 絶縁状①

しおりを挟む
 次の日、学校が休みだったので、朝からテーブルマナーの授業を受けていた時だった。
 お父様から手紙が届いたという連絡があった。
 私の慌てる様子を見た先生が今日の授業を早めに切り上げてくれたので、先生を見送ったあと、手紙を読んでみた。
 簡単に言うと、手紙の内容はお父様からの絶縁状だった。
 今日の内に役場に出向き手続きをして、ティファス家の名を名乗れないようにしてやると書かれていた。

 その手紙を見せるためにお義父様の執務室に向かうと、エディ様もお仕事のお手伝いをされていたのかその場にいて、私を見ると笑顔になった。

 でも、私が手紙を握りしめているのに気付くと、慌てて近づいてくる。

「リネ、どうかしたの?」
「手紙が実家から届いたんです」
「手紙が届いていたことは知っている。何と書いてあったんだ?」

 お義父様は執務机の椅子から立ち上がり、私に近くのソファーに座るように促してきた。
 エディ様と並んで座り、お義父様がテーブルを挟んだ向かい側に座ったところで、絶縁状が届けられたことをお話した。
 すると、エディ様は私を優しく抱きしめて言う。

「大丈夫だよ、リネ。びっくりしたよね。でも、手は打ってあるから」
「そうだ。向こうから絶縁してくれるのは有り難い。ティファス家と親戚付き合いをする気にはなれなかったからな」
「ですが、このままでは私は平民になってしまいます」

 たとえ、エディ様が私を好きだと言ってくれても、平民と公爵令息では身分があまりにも不釣り合いすぎる。
 ここを出ていかないといけないわ。

「リネを受け入れたいと言っている家があるんだ」
「はい?」

 お義父様の言葉に驚いて、俯いてしまっていた顔を上げると、お義父様は笑みを浮かべて話をしてくれる。

「こうなるだろうということはリネだって覚悟はしていたはずだ。でも、ここまで早くなるとは思っていなかったのだろう?」
「はい。追い詰めすぎてしまいました。申し訳ございません」
「いや。私としてもちょうど良い。それよりもリネが苦手だった姉に対して、あそこまで言えるようになったことのほうが嬉しい」
「僕もだよ。昨日のリネは今までのリネとは違って見えた」

 エディ様は私から体を離して、私の頬を優しく人差し指で撫でながら続ける。

「昔のリネは儚くてとても可愛かったけど、今のリネは強くなってカッコ良いリネになったよ。もちろん、可愛いのは変わらないけどね」
「お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいです」
「素直に褒め言葉を受け取らないと駄目だよ。もちろん、嫌味はスルーして良いけどね」

 エディ様はそう言って苦笑する。

「エディ、お前がリネへの愛を語りだしたら長くなるから後にしなさい」
「申し訳ございません」

 エディ様は、私の顔から手を離して、お義父様に向き合うように座り直す。
 でも、すぐに私の左手を握ったので、お義父様は苦笑した。

「まあ、それくらいなら良いだろう。で、リネ、このままでは君の言う通り、君は平民扱いになってしまう。ニーソン公爵家的にはそれはまずい。そのことを少し前から、仲の良い友人に話をしていたんだ。すると、リネを養女にしたいという家族を見つけてくれた」
「私を養女に、ですか?」
「ああ。ここから少し離れた場所に住んでいる伯爵家の夫婦で、息子はいるんだが娘はいない」
「ですが、息子さんがいらっしゃるのであれば、私なんかが家族になったら嫌がるのではないですか?」
「その伯爵家の息子はまだ5歳でね。姉ができるかもしれないと聞いたら大喜びしているんだそうだ。リネが良いなら、その家族に会ってみないか?」

 お父様は今頃、役場に届けを出していると思う。
 だから、悩んでいる暇なんてないわ。

「本当に甘えてしまっても良いのでしょうか?」
「当たり前だろう。今更断られても困る。向こうもその気でいるんだ」

 どうしても確認したくて聞いてみると、お義父様は大きく頷いてくれた。
 まだまだ独り立ちできない自分が悔しいけれど、ここは甘えてさせてもらうことにする。

「ありがとうございます」
「では、早速、顔合わせに行くことにするか」
「僕も行っていいですよね? 手続きとか顔合わせの時は大人しく馬車の中で待っていますので」

 挙手するエディ様を見て、お義父様は呆れた顔をしたあと、私のほうを見る。

「もちろんです」
「だそうだ」

 笑顔で頷くと、お義父様も微笑んでエディ様に許可を出した。

 

 


お読みいただきありがとうございます!
次の話はトワナ視点になります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...