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33 絶縁状①
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次の日、学校が休みだったので、朝からテーブルマナーの授業を受けていた時だった。
お父様から手紙が届いたという連絡があった。
私の慌てる様子を見た先生が今日の授業を早めに切り上げてくれたので、先生を見送ったあと、手紙を読んでみた。
簡単に言うと、手紙の内容はお父様からの絶縁状だった。
今日の内に役場に出向き手続きをして、ティファス家の名を名乗れないようにしてやると書かれていた。
その手紙を見せるためにお義父様の執務室に向かうと、エディ様もお仕事のお手伝いをされていたのかその場にいて、私を見ると笑顔になった。
でも、私が手紙を握りしめているのに気付くと、慌てて近づいてくる。
「リネ、どうかしたの?」
「手紙が実家から届いたんです」
「手紙が届いていたことは知っている。何と書いてあったんだ?」
お義父様は執務机の椅子から立ち上がり、私に近くのソファーに座るように促してきた。
エディ様と並んで座り、お義父様がテーブルを挟んだ向かい側に座ったところで、絶縁状が届けられたことをお話した。
すると、エディ様は私を優しく抱きしめて言う。
「大丈夫だよ、リネ。びっくりしたよね。でも、手は打ってあるから」
「そうだ。向こうから絶縁してくれるのは有り難い。ティファス家と親戚付き合いをする気にはなれなかったからな」
「ですが、このままでは私は平民になってしまいます」
たとえ、エディ様が私を好きだと言ってくれても、平民と公爵令息では身分があまりにも不釣り合いすぎる。
ここを出ていかないといけないわ。
「リネを受け入れたいと言っている家があるんだ」
「はい?」
お義父様の言葉に驚いて、俯いてしまっていた顔を上げると、お義父様は笑みを浮かべて話をしてくれる。
「こうなるだろうということはリネだって覚悟はしていたはずだ。でも、ここまで早くなるとは思っていなかったのだろう?」
「はい。追い詰めすぎてしまいました。申し訳ございません」
「いや。私としてもちょうど良い。それよりもリネが苦手だった姉に対して、あそこまで言えるようになったことのほうが嬉しい」
「僕もだよ。昨日のリネは今までのリネとは違って見えた」
エディ様は私から体を離して、私の頬を優しく人差し指で撫でながら続ける。
「昔のリネは儚くてとても可愛かったけど、今のリネは強くなってカッコ良いリネになったよ。もちろん、可愛いのは変わらないけどね」
「お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいです」
「素直に褒め言葉を受け取らないと駄目だよ。もちろん、嫌味はスルーして良いけどね」
エディ様はそう言って苦笑する。
「エディ、お前がリネへの愛を語りだしたら長くなるから後にしなさい」
「申し訳ございません」
エディ様は、私の顔から手を離して、お義父様に向き合うように座り直す。
でも、すぐに私の左手を握ったので、お義父様は苦笑した。
「まあ、それくらいなら良いだろう。で、リネ、このままでは君の言う通り、君は平民扱いになってしまう。ニーソン公爵家的にはそれはまずい。そのことを少し前から、仲の良い友人に話をしていたんだ。すると、リネを養女にしたいという家族を見つけてくれた」
「私を養女に、ですか?」
「ああ。ここから少し離れた場所に住んでいる伯爵家の夫婦で、息子はいるんだが娘はいない」
「ですが、息子さんがいらっしゃるのであれば、私なんかが家族になったら嫌がるのではないですか?」
「その伯爵家の息子はまだ5歳でね。姉ができるかもしれないと聞いたら大喜びしているんだそうだ。リネが良いなら、その家族に会ってみないか?」
お父様は今頃、役場に届けを出していると思う。
だから、悩んでいる暇なんてないわ。
「本当に甘えてしまっても良いのでしょうか?」
「当たり前だろう。今更断られても困る。向こうもその気でいるんだ」
どうしても確認したくて聞いてみると、お義父様は大きく頷いてくれた。
まだまだ独り立ちできない自分が悔しいけれど、ここは甘えてさせてもらうことにする。
「ありがとうございます」
「では、早速、顔合わせに行くことにするか」
「僕も行っていいですよね? 手続きとか顔合わせの時は大人しく馬車の中で待っていますので」
挙手するエディ様を見て、お義父様は呆れた顔をしたあと、私のほうを見る。
「もちろんです」
「だそうだ」
笑顔で頷くと、お義父様も微笑んでエディ様に許可を出した。
※
お読みいただきありがとうございます!
次の話はトワナ視点になります。
お父様から手紙が届いたという連絡があった。
私の慌てる様子を見た先生が今日の授業を早めに切り上げてくれたので、先生を見送ったあと、手紙を読んでみた。
簡単に言うと、手紙の内容はお父様からの絶縁状だった。
今日の内に役場に出向き手続きをして、ティファス家の名を名乗れないようにしてやると書かれていた。
その手紙を見せるためにお義父様の執務室に向かうと、エディ様もお仕事のお手伝いをされていたのかその場にいて、私を見ると笑顔になった。
でも、私が手紙を握りしめているのに気付くと、慌てて近づいてくる。
「リネ、どうかしたの?」
「手紙が実家から届いたんです」
「手紙が届いていたことは知っている。何と書いてあったんだ?」
お義父様は執務机の椅子から立ち上がり、私に近くのソファーに座るように促してきた。
エディ様と並んで座り、お義父様がテーブルを挟んだ向かい側に座ったところで、絶縁状が届けられたことをお話した。
すると、エディ様は私を優しく抱きしめて言う。
「大丈夫だよ、リネ。びっくりしたよね。でも、手は打ってあるから」
「そうだ。向こうから絶縁してくれるのは有り難い。ティファス家と親戚付き合いをする気にはなれなかったからな」
「ですが、このままでは私は平民になってしまいます」
たとえ、エディ様が私を好きだと言ってくれても、平民と公爵令息では身分があまりにも不釣り合いすぎる。
ここを出ていかないといけないわ。
「リネを受け入れたいと言っている家があるんだ」
「はい?」
お義父様の言葉に驚いて、俯いてしまっていた顔を上げると、お義父様は笑みを浮かべて話をしてくれる。
「こうなるだろうということはリネだって覚悟はしていたはずだ。でも、ここまで早くなるとは思っていなかったのだろう?」
「はい。追い詰めすぎてしまいました。申し訳ございません」
「いや。私としてもちょうど良い。それよりもリネが苦手だった姉に対して、あそこまで言えるようになったことのほうが嬉しい」
「僕もだよ。昨日のリネは今までのリネとは違って見えた」
エディ様は私から体を離して、私の頬を優しく人差し指で撫でながら続ける。
「昔のリネは儚くてとても可愛かったけど、今のリネは強くなってカッコ良いリネになったよ。もちろん、可愛いのは変わらないけどね」
「お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいです」
「素直に褒め言葉を受け取らないと駄目だよ。もちろん、嫌味はスルーして良いけどね」
エディ様はそう言って苦笑する。
「エディ、お前がリネへの愛を語りだしたら長くなるから後にしなさい」
「申し訳ございません」
エディ様は、私の顔から手を離して、お義父様に向き合うように座り直す。
でも、すぐに私の左手を握ったので、お義父様は苦笑した。
「まあ、それくらいなら良いだろう。で、リネ、このままでは君の言う通り、君は平民扱いになってしまう。ニーソン公爵家的にはそれはまずい。そのことを少し前から、仲の良い友人に話をしていたんだ。すると、リネを養女にしたいという家族を見つけてくれた」
「私を養女に、ですか?」
「ああ。ここから少し離れた場所に住んでいる伯爵家の夫婦で、息子はいるんだが娘はいない」
「ですが、息子さんがいらっしゃるのであれば、私なんかが家族になったら嫌がるのではないですか?」
「その伯爵家の息子はまだ5歳でね。姉ができるかもしれないと聞いたら大喜びしているんだそうだ。リネが良いなら、その家族に会ってみないか?」
お父様は今頃、役場に届けを出していると思う。
だから、悩んでいる暇なんてないわ。
「本当に甘えてしまっても良いのでしょうか?」
「当たり前だろう。今更断られても困る。向こうもその気でいるんだ」
どうしても確認したくて聞いてみると、お義父様は大きく頷いてくれた。
まだまだ独り立ちできない自分が悔しいけれど、ここは甘えてさせてもらうことにする。
「ありがとうございます」
「では、早速、顔合わせに行くことにするか」
「僕も行っていいですよね? 手続きとか顔合わせの時は大人しく馬車の中で待っていますので」
挙手するエディ様を見て、お義父様は呆れた顔をしたあと、私のほうを見る。
「もちろんです」
「だそうだ」
笑顔で頷くと、お義父様も微笑んでエディ様に許可を出した。
※
お読みいただきありがとうございます!
次の話はトワナ視点になります。
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