人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

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44 姉との最終決戦③

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 トワナ様はセング子爵令息に、私が彼のことを好きだと嘘をついていて、セング子爵令息は、素直にその話を信じたみたいだった。

 それにしても会ったこともない人をどうやって好きになれるのかしら。
 それほど、自分に自信があるということ?
 でも、エディ様よりも自分が上だと思えるなんて、かなり前向きすぎる気がする。

 というか、そんなことを呑気に考えている場合じゃなかった。
 このままでは、エディ様とセング子爵令息の戦いになってしまう。

「エディ様、きっとトワナ様が嘘を教えたに決まっています」
「そうだとしても」
「エディ様」

 振り返って軽く睨むと、エディ様は目を大きく見開いたあと、無言で頷いた。

 睨むなんて失礼だったかしら。
 あとで謝らないといけないわ。

「トワナ様、今のセング子爵令息の発言も含めてお話したいことがあります。パーティー後にお時間をいただくことは可能でしょうか?」
「かまわないけれど、条件があるわ」
「はい?」

 胸の前で腕を組み、偉そうにしているトワナ様に不快感を露わにして聞き返した。
 すると、トワナ様は鼻で笑ってから口を開く。

「私はあなたに興味はないの。興味があるのはエディ様よ」
「何を考えているんですか。しかも、よくも自分の婚約者の前でそんなことを言えますわね」
「リネ嬢、僕としては君が婚約者のほうが嬉しいなと思っていたんだ。家柄のこともそうだけれど、僕は可愛らしい人のほうが」

 話に勝手に入ってきたセング子爵令息だったけれど、途中で言葉を止めた。
 エディ様が彼のほうに一歩踏み出して忠告する。

「リネは僕の婚約者だぞ。彼女を口説こうとしているということは、僕を敵に回すことと一緒だということは理解してるんだろうな?」
「え? あ、そ、その、申し訳ございません!」

 セング子爵令息は後退りしたかと思うと、腰を折り曲げるようにして頭を下げ、トワナ様を置いてこの場から逃げ出した。

「トワナ様を置いて逃げるだなんて素敵な婚約者ですわね」

 嫌味を言うと、トワナ様は私を忌々しそうに見つめた後は、すぐに表情を変えてエディ様に話しかける。

「婚約者に裏切られてしまいました。どうしたら良いのでしょう?」

 胸元が大きくあいたドレスを着ているから、トワナ様は両腕で自分の胸を挟むようにして、エディ様の前で祈るようなポーズをする。

 胸の谷間が際立って、普通の男性なら目のやり場に困るところでしょう。
 今までこうやって男性を悩殺してきたのかしら。

 冷静にそんなことを思っていると、エディ様が応える。

「とにかく追いかけて怒ったらいいんじゃないかな?」
「追いかけて、怒る、ですか?」

 トワナ様はきょとんとした顔でエディ様を見つめる。

「そうだよ。君の婚約者なんだろ? 彼のしたことは酷いと思うし怒って良いと思うよ。まあ、君が先にやり出したから、向こうからも怒られるかもしれないけど」
「え、と、その、私はもう、あんな婚約者はいらないんです」

 トワナ様はエディ様に取り入ろうと必死だった。

 今までの彼女が出会ってきた多くの男性は、彼女にこんな風に縋られたら、自分の恋人や婚約者よりも彼女を優先していた。
 それに慣れてしまっている彼女は、エディ様の反応が信じられないみたいだった。

「それは君たちの問題だろ? 僕には関係ない。とにかく、僕は君と話すことなんてないんだよ」
「そんな!」

 トワナ様が大きな声で叫んだからか、周りの視線が一斉にこちらに集まった。
 それに気が付いたトワナ様が、私を睨んで言う。

「あなたの言う通り会ってあげるわよ。どこで会うの?」
「この近くに高位貴族御用達のレストランがあります。そこの個室を予約してもらっているんです。そこでお話しましょう」
「わかったわ。そのかわり、エディ様も連れてきてよね?」
「エディ様は関係ないでしょう?」
「エディ様がいなければ、私はあなたと話す気にならないのよ!」

 自分勝手な言い分なので、このまま話をしないことににしようかと思った。
 ティファス伯爵家はこのままいけば、私が何もしなくても没落する。
 そうすれば、トワナ様はエディ様に近付くことはできなくなる。

 だけど、自分で決着をつけたかった。
 エディ様を巻き込みたくはないんだけど……。
 そう思った時、エディ様がトワナ様に話しかける。

「いいよ。リネと一緒に行こう。だけど、僕は話し合いには参加しない。不敬だと思う発言に関しては口を挟むかも知れないけどね」
「承知しましたわ!」

 トワナ様はエディ様の言葉を聞いて、表情を明るくした。
 その後は約束の時間と場所を伝え、私たちは一度別れて、王女様のお誕生日を祝うことに専念したのだった。
 
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