人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

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45 姉との最終決戦④

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 パーティー会場を出て、約束のレストランに向かう頃には、日が暮れかけていた。
 トワナ様と話し合いを終えたあとは、エディ様やお義父様たちと一緒に夕食をとることになっている。
 だから、早く話を終わらせて、トワナ様には出ていってもらわなければならない。

 今日はエレインもテッド様も来ていないから、馬車の中ではエディ様と二人きりだった。

「あの感じだと分かってくれそうな気がしないけど、本当に話をするの?」
「はい。あの、先程は睨んでしまって申し訳ございませんでした」
「……ショックではあったけど、リネの戦いなのに邪魔をしてしまいそうになったんだから、今は気にしてないよ」
「良かったです」

 微笑んで見せると、エディ様がふにゃりと笑う。

「今日のリネも可愛い。……って、あ!」

 エディ様がいきなり大きな声を上げるので驚いてしまう。

「どうかなさいましたか?」
「いや、さっき聞かれた時に、まだ怒ってるって答えてたら、どうなってたのかなと思って」
「……どうなってたのかなというのは?」
「許すかわりにキスしてほしいとか言ったら、リネはしてくれてたのかな?」
「そ……、それは。その、頬で良ければ」

 照れながら言うと、エディ様が両手で顔を覆う。

「ああ、さっきの僕は本当に馬鹿だ! 時間を戻ってくれないかな? あ、それか、リネ、もう一回やり直さない?」

 ぱっと両手を離してエディ様が聞いてくる。

「エディ様、申し訳ございませんが、今回はやり直しは不可です」
「そ、そんなあ」

 エディ様がしょぼんと肩を落とした。
 そんな様子を見て、今から戦いに向かうというのに何だか和んでしまう。

 もしかしたら、これはエディ様なりの気遣いなのかもしれない。
 そう思うと、落ち着いたら頬にキスくらいはしても良いかもしれないだなんて、大胆なことを思ってしまった。

 少しすると、目的のレストランに着いた。
 お店の人から、すでにトワナ様が来ていると教えてもらい、個室に案内された。
 公爵家が予約しただけに、VIPルームのようで違う意味でも緊張してしまう。
 お義父様とお義母様は少し遅れてやって来ることになっている。
 だから、二人が来る前に話を終わらせなければならない。

 案内された部屋は、そう広くはなかった。
 入って真正面に大きな窓があり、部屋の真ん中にはテーブル、そして部屋の端の方には店の人を呼ぶためのベルが置かれたサイドテーブルがあった。
 部屋は狭いけれど、窓の外にはライトアップされた庭園が見えるため、特別感がある。

 トワナ様は綺麗な景色を窓際で眺めていて、私たちに気付くと笑顔で振り返った。

「エディ様、お待ちしておりましたわ」
「だから、僕は付き添いなだけであって、君と話すつもりはない。今からは君に話しかけられても、僕は口を開かないから」

 そう言って、エディ様はテーブルの椅子を引いて座り、足を組んだ。
 私は座らずに、トワナ様に近づいていきながら話しかける。

「トワナ様、もう、終わりにしましょう。いいかげんに負けを認めてください」
「私がリネなんかに負けるわけがないでしょう!」

 トワナ様は私を睨み付けてくる。
 今までなら、怖くて目を逸らして俯いてしまっていた。

 でも、今の私は違う。
 臆せずに睨み返すと、トワナ様は少しだけ勢いをそがれたのか、声を小さくして言う。

「あなた、本当に調子にのってるわね? エディ様やニーソン公爵閣下の後ろ盾がなければ何も出来ないくせに!」
「エディ様やニーソン公爵閣下だけじゃない。奥様やエレインやテッド様が支えてくれたから、今のようになれたことは間違いないわ。でも、人は変われるのよ!」
「変われるわけないでしょう! あなたはウジウジしてオドオドして、人の顔色を見て態度を変えていた女よ!? そんなに自分に自信のない女がそう簡単に変われるはずがない!」
「そうよ! だから、人の力を借りたの! 変わりたいと思えば、たとえ一人ぼっちだったとしても、いつかは必ず変われたと思う。だけど、それではかなり時間がかかっていたはず。でも、私は一人じゃなかった! こんな私でも支えてくれる人がいたの。だから、自分のためだけじゃなく、その人たちのために変わろうと思えた!」

 言い終えてから、興奮した気持ちを落ち着かせるために、大きく深呼吸する。

 私が大きな声を出したからか、トワナ様は驚いた顔をして動きを止めてくれていたから助かった。

 トワナ様が何か言い出す前に、私は彼女に告げる。

「トワナ様、今の私はあなたが知っている私ではありません」
「は?」

 トワナ様は馬鹿にするように鼻で笑った。
 でも、そんなことは気にしない。

「ですから、人の顔色ばかり気にしていた私はもういませんと言っているんです」
「そんなの信じられるわけないでしょう!」

 トワナ様が恐ろしい形相で、私に掴みかかってきた。
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