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19 後悔先に立たず
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エルンの言い分を聞き、心底呆れ返ったシアルリアだったが、段々、彼女が憐れに思えてきた。
(助けてあげるつもりはないけど、こんな考えになるような育て方をされたのなら、少しだけ気の毒になるわね)
今からでも遅くない。現実を知ってもらおうと話しかける。
「では、エルン王女殿下、あなたも苦労を知るべきです」
「そんなっ! 私が何をしたというのですか!?」
「生きていく以上、辛い思いや嫌な思いをすることは誰にでもあることです。それを乗り越えることも大事ですわ」
「無茶なことを言わないでください。そんなことができるわけがない!」
エルンははなから嫌な思いをするつもりはなかったが、今、自分がその状況に立っていることに気づいていない。シアルリアは優しく尋ねる。
「エルン王女、あなたは自分のしたことをどう思っていますか?」
「自分のしたこと?」
「はい。あなたはブレイズ陛下と結婚したくないからと、婚約者のいる男性を誘惑し、自分のものにしようとしましたよね。そして、実際に私からマロックを奪いました」
「そ、それは……、そのことについては悪いと思っています。ですから、あなたにお返しします!」
跪いたままのエルンはそう言うと、立ち尽くしているマロックのスラックスの裾を引っ張る。
「何を突っ立っている! お前も頼むんだ!」
「あ、は、はい!」
マロックはエルンの横に跪くと、シアルリアを見つめて叫んだ。
「シアルリア! 本当に申し訳ない! 後悔している!」
「おい! 無礼だぞ!」
敬語を使わない彼をエルンが窘めたが、そんなことは気にしない。彼にとって、シアルリアは元婚約者であり、親しい人物だった。これくらいなら許されると思っていた。
シアルリアがそのことをたしなめる前に、ブレイズが口を開く。
「どうしてお前は俺の妻に馴れ馴れしいんだ? 元婚約者だったからって偉そうにするな」
「も、申し訳ございません!」
殺意のこもった目で睨まれたマロックは、体を震わせて謝った後に、額をカーペットにつける。
「シアルリア様、お願いします! 僕とやり直すのが無理なら、愛玩動物として僕を飼ってください! 贅沢な暮らしを約束してくれるのならば、僕はあなたの言うことを何でも聞きます!」
「デメリットしかないのに、あなたを飼うだなんてありえません」
「俺がそんなことを許すわけがないだろ」
シアルリアとブレイズから即座に却下され、マロックの額に汗が流れた。
「馬鹿馬鹿しい。時間の無駄だ。話はもう終わりだ。今日は城下町の高級宿を手配してある。一泊したらさっさと帰ってくれ」
「「お待ちください!」」
玉座から立ち上がり、シアルリアと共に立ち去ろうとしたブレイズを、エルンたちが必死に呼び止める。
「こんなにも頼んでいるのに一考もしないなんて、あなたたちに人の心はあるのですか!」
「シアルリア様! 僕は確かに悪いことをしたかもしれません! ですが、長年婚約者だったんです! そのよしみで助けてくれたっていいじゃないですか!」
自分勝手な主張しかしない二人に、シアルリアたちは足を止めて、彼らに微笑みかける。
「悪いな。善業ができない人間に優しくする心はないんだ」
「マロック、あなたは私に失礼な発言をしているわ。それが許されているのは長年のよしみで見逃しているからだと思わない? それとも、そんな優しさはいらないの?」
「「そんなっ……」」
絶望的な表情になった二人を置いて、シアルリアたちはその場を去った。しばらくの間、謁見の間から動こうとしなかったエルンたちは兵士の手によって、無理やり王城内から追い出されたのだった。
(助けてあげるつもりはないけど、こんな考えになるような育て方をされたのなら、少しだけ気の毒になるわね)
今からでも遅くない。現実を知ってもらおうと話しかける。
「では、エルン王女殿下、あなたも苦労を知るべきです」
「そんなっ! 私が何をしたというのですか!?」
「生きていく以上、辛い思いや嫌な思いをすることは誰にでもあることです。それを乗り越えることも大事ですわ」
「無茶なことを言わないでください。そんなことができるわけがない!」
エルンははなから嫌な思いをするつもりはなかったが、今、自分がその状況に立っていることに気づいていない。シアルリアは優しく尋ねる。
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「自分のしたこと?」
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「シアルリア! 本当に申し訳ない! 後悔している!」
「おい! 無礼だぞ!」
敬語を使わない彼をエルンが窘めたが、そんなことは気にしない。彼にとって、シアルリアは元婚約者であり、親しい人物だった。これくらいなら許されると思っていた。
シアルリアがそのことをたしなめる前に、ブレイズが口を開く。
「どうしてお前は俺の妻に馴れ馴れしいんだ? 元婚約者だったからって偉そうにするな」
「も、申し訳ございません!」
殺意のこもった目で睨まれたマロックは、体を震わせて謝った後に、額をカーペットにつける。
「シアルリア様、お願いします! 僕とやり直すのが無理なら、愛玩動物として僕を飼ってください! 贅沢な暮らしを約束してくれるのならば、僕はあなたの言うことを何でも聞きます!」
「デメリットしかないのに、あなたを飼うだなんてありえません」
「俺がそんなことを許すわけがないだろ」
シアルリアとブレイズから即座に却下され、マロックの額に汗が流れた。
「馬鹿馬鹿しい。時間の無駄だ。話はもう終わりだ。今日は城下町の高級宿を手配してある。一泊したらさっさと帰ってくれ」
「「お待ちください!」」
玉座から立ち上がり、シアルリアと共に立ち去ろうとしたブレイズを、エルンたちが必死に呼び止める。
「こんなにも頼んでいるのに一考もしないなんて、あなたたちに人の心はあるのですか!」
「シアルリア様! 僕は確かに悪いことをしたかもしれません! ですが、長年婚約者だったんです! そのよしみで助けてくれたっていいじゃないですか!」
自分勝手な主張しかしない二人に、シアルリアたちは足を止めて、彼らに微笑みかける。
「悪いな。善業ができない人間に優しくする心はないんだ」
「マロック、あなたは私に失礼な発言をしているわ。それが許されているのは長年のよしみで見逃しているからだと思わない? それとも、そんな優しさはいらないの?」
「「そんなっ……」」
絶望的な表情になった二人を置いて、シアルリアたちはその場を去った。しばらくの間、謁見の間から動こうとしなかったエルンたちは兵士の手によって、無理やり王城内から追い出されたのだった。
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