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23 自分の幸せ
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マロックとエルンが離婚したという話は、結婚式当日にネノナカル王国のチャペルにやって来たイヨトによって知らされた。
「マロックとエルン様は何のために結婚したんでしょうか」
「彼女は元王女であって、今は平民だ。敬称はつけなくてもいいんじゃないのか?」
「それはそうですね。エルンさんと呼ぶようにします」
平民になったのだとしても、元王女であることは変わりない。尊敬できる人物とは思えないが、礼儀的にシアルリアはエルンさんと呼び、イヨトは元王女と呼ぶことにした。
「エルンさんは何を考えているのだと思いますか?」
シロのウェディングドレスに身を包んだシアルリアが尋ねると、彼女の父は眉をひそめて首をひねった。
「彼女はすでに爵位を継いでいて、独身の男性ばかりを狙って訪ね回っているらしい」
「もしかして、再婚しようとしているんですか」
「そのまさかだろうな」
エルンは若い貴族には婚約者がいるため、離婚した、もしくは妻と死に別れた貴族に自分を妻にしないかと交渉していた。
「自分の父親のことはまったく気にならないのでしょうか。元々は、自分がマロックを誘惑したことで起きたことなのに……」
「そんなことを気にするような人間なら、人の婚約者を奪ってまで他国の王太子との婚約を解消しようとしたりしないだろう」
「結果的に交換という形になったので、自分は悪いことをしていないと思っているのかもしれませんね」
シアルリアが大きなため息をつくと、父は彼女の肩に右手を置く。
「元王女のことが気になるのはわかるが、今日はお前の結婚式だ。今は自分やブレイズ陛下の幸せを考え、落ち着いてからはネノナカル王国の国民のことを考えなさい」
「……そうですね。他国だからどうでもいいとは思いませんが、まずは自国民のことを考えないといけませんね」
父に笑いかけ、思考を切り替える。
(そうよ。今はあの人のことを考える時間がもったいないわ。今日くらいは幸せな気持ちにさせてもらいましょう)
シアルリアたちがこんな会話をしていた頃、チモチノモ王国内では国王の処分内容が決まっていた。そして、エルンをこのまま放置するのか、勝手な行動についての罰を与えるのかの話題に移っていたのだった。
「マロックとエルン様は何のために結婚したんでしょうか」
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(そうよ。今はあの人のことを考える時間がもったいないわ。今日くらいは幸せな気持ちにさせてもらいましょう)
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