【完結】王女殿下に婚約者を奪われた私が隣国の訳あり国王陛下に嫁いだ結果

風見ゆうみ

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24  王女の誤算 ⑥

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 自分はもう王女ではない。だから、何のお咎めもないと思っていたエルンは、新しい婿探しに必死になっていた。

「私を妻にする気はないですか? 私はまだ若い。跡継ぎを生んでやれますよ?」

 そう訴えても、どの男性も首を縦に振ってくれなかった。嫁にすることはできないが、情けということで、その日は屋敷に泊まらせてくれるだけでなく、食事も出してもらえた。次の日の天気が悪ければ、延泊させてくれるところもあった。

「王城に戻ってはいかがでしょうか」

 誘惑しようとした全ての人間にそう言われたが、エルンは戻る気はなかった。勝手に結婚して離婚しただけでなく、国王である父は身動きがとれない状態で当てにならなかった。

(お父様のことだから、私の幸せを優先してくれる)

 そう思っている彼女は父に対しての罪悪感など一切ないし、持つ必要もないと思っていた。
 
「さあ、明日はどこへ行こうか。次こそは私の婿を決められるだろう」

 自分の美貌に自信のある彼女は、自分が選んでもらえないのはたまたまだと思っていた。平民になってしまったというネックはあるが、元王女である。元々の家柄は良く、若くて美しい自分なら、誰かが受け入れてくれると信じていた。
 シアルリアとブレイズの結婚の話題が出ていたが、そんなことは気にせずに、自分のことにだけ集中していた。
 そんなエルンの希望が打ち砕かれる日がやって来る。
 それは雨が上がり、太陽が二日ぶりに顔を出した日のことだった。
 当日の朝まで滞在していた屋敷の主人が、独身の貴族の男性を紹介してくれた。馬車で半日ほどの場所にあったため、エルンは今日の宿にしようと馬車を借り、急いで向かった。
 
「紹介されてやって来たんだ。私を妻にしてくれないか? いや、妻にしてくれませんか?」

 立派な髭を蓄えた中年の男爵は、エルンを見て鼻で笑った。

「何がおかしいんだ?」

 下手に出なければならないとわかってはいたが、馬鹿にされることは気に食わなかった。
 眉をひそめて聞くと、男爵は質問を返す。

「あなたは自分の噂を聞いていないのですか?」
「……噂?」
「はい。男を誘惑し、都合が悪くなったら捨てる悪い女性だと言われています。それに、あなたは国内を混乱させる原因を作った人物だとも言われています。処罰される可能性がある。そんな人物を誰が娶ると言うのです?」
「そんな……」

 自分の立場が思った以上に悪いものだと知ったエルンは呆然とした表情で男爵を見つめた。
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