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28 元王女の後悔と元公爵令嬢のこれから
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元々、貴族たちはエルンを教会に預けるという案も考えていた。しかし、その案を教会側に打診してみたところ、エルンから断られてしまったことや、反省する気のない人間を受け入れることはできないと返事が返ってきた。再度、エルンに確認してみたところ、やはり彼女からは反省の色が見えず、この案は取り消された。
そして、彼女に言い渡された罰は山奥の狩猟場にある山小屋の管理だった。彼女はそこで一人で暮らすことになり、食料などは三日に一度、元々の管理人が持ってきてくれることになっている。
逃げ出すことは可能だが、遭難の可能性もあるし、昼間は狩猟中の者が多く、鹿などと間違えて撃たれる可能性があり、夜は肉食獣が徘徊するため危険な場所でもあるため、山の中から案内人なしに生きて出ることは難しいと言われていた。
「どうして私がそんな所に行かなければならないんだ!?」
留置場の一室で、エルンが涙ながらに訴えると、彼女への罰を伝えに来た中年の貴族の男が答える。
「あなたは多くの男性を誘惑していた。そんなにも男性が好きなら、女性が少ない場所に行けばいいという結論に至ったんですよ。それから逃げても無駄です。たとえ下山できたとしても、あなたの顔は割れています。それに、シスターさえもあなたを助けることを拒んでいるんです。そんな人間を助ける人間なんていません。いたとしたら、あなたを犯罪に巻き込もうとする人間くらいでしょう」
「……そんなっ! 嫌だ! そんな所に行くくらいなら教会に行く!」
「シスターからの申し出を断ったのはあなた自身ですよ。明日に移動です。心の準備をしておいてください」
無機質な口調で男はそう言うと、話は終わりだと言わんばかりに椅子から立ち上がった。
「い、嫌だ! 見知らぬ男の慰みものになんてなりたくない!」
「そんなことをする男性ばかりじゃありませんよ」
男はそう言うと、部屋を出て行く。
「待って! やっぱり教会に行きたい! 反省する! 反省するから許して!」
手枷と足枷で動けないエルンは、しばらくの間、その場で泣き続けていた。
******
父からの手紙を読み終えたシアルリアは、大きく息を吐いた。
(教会での暮らしも大変だと聞くけど、山小屋の生活のほうが辛いわよね。音を上げて逃げ出しそう)
エルンが最後まで反省しなかったことについては残念に思うが、そんなことができるタイプなら、こうはならなかっただろうと結論づけた。ちなみにガズクは娘を恨んでいないらしく、エルンにまた会える日がくることを信じて、幽閉生活を送っているようだった。
その時、扉がノックされ、笑顔の侍女が部屋に入ってくると、ブレイズが来たことを教えてくれた。
「どうかなさいましたか?」
「国民にシアを紹介する日に、俺の精神的な問題が片付いた話をするつもりだったけど、やめておいたほうがいいか?」
「どうしてです?」
「シアが目立たないといけない日だろ? それに無邪気に俺の奥さんを自慢したい」
「どうせいつかは伝えるのですから、あの時は演技をしていたのだとバレてしまいますよ?」
苦笑すると、ブレイズは微笑む。
「その時はその時だ」
「それなら演技はせずに、普通に褒めてください」
「……そうだな」
ブレイズは照れくさそうな顔をしたが、素直にうなずいた後、シアルリアを抱きしめた。
王女に婚約者を奪われた令嬢が訳ありの国王に嫁いだ結果、王女と婚約者は罰が当たって不幸になり、令嬢と訳ありの国王は心を通わせて幸せに暮らしたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございました。最後は駆け足になってしまいましたが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。
いつものごとく「皆さまにお尋ねしたいことがあります」という新作を投稿しております。
気が向かれましたら読んでいただけますと幸いです!
感想を書いてくださる方、あとがきという言い訳に付き合ってくださる方はスクロールをお願いします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
最後のほうは駆け足で申し訳ございませんでした。本当はもっと丁寧に書いていくつもりが精神的に余裕がなく……!
改めていつか書き直せたらいいなと思っております。
マロックについてもちゃんとざまぁを書きたかったのですが、本当に申し訳ございません。
バタバタしてしまいましたが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです!
お気に入り、しおり、エール、いいねをありがとうございました。感想もありがとうございました!
そして、恒例の宣伝を!
「皆さまにお尋ねしたいことがございます」という新作を投稿しています。
こちらはバタバタする前に書きためておいた分になります。ストックがすぐになくなりそうなので、これから頑張って書いていきます。
また、新作や他の作品でお会いできますと幸いです。
そして、私の体調などを心配してくださる温かいコメントをくださった方々(非承認の方も含め)本当にありがとうございました。
さらっと後で書かせていただきますので、気になる方は下のほうにスクロールをお願いいたします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
これからも頑張ってまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
風見ゆうみ
ご心配くださった方、本当にありがとうございます。
アトピーもそうなのですが、精神的な余裕がなくなったのは、主人が緊急入院したのが原因でございます。
何があったのか気になるし詳しく知りたいと思ってくださった方はお手数ですが「執筆予定と日記みたいなもの」に足を運んでいただけますと幸いです。
体調を崩しやすい季節ですのでご自愛くださいませ。
そして、彼女に言い渡された罰は山奥の狩猟場にある山小屋の管理だった。彼女はそこで一人で暮らすことになり、食料などは三日に一度、元々の管理人が持ってきてくれることになっている。
逃げ出すことは可能だが、遭難の可能性もあるし、昼間は狩猟中の者が多く、鹿などと間違えて撃たれる可能性があり、夜は肉食獣が徘徊するため危険な場所でもあるため、山の中から案内人なしに生きて出ることは難しいと言われていた。
「どうして私がそんな所に行かなければならないんだ!?」
留置場の一室で、エルンが涙ながらに訴えると、彼女への罰を伝えに来た中年の貴族の男が答える。
「あなたは多くの男性を誘惑していた。そんなにも男性が好きなら、女性が少ない場所に行けばいいという結論に至ったんですよ。それから逃げても無駄です。たとえ下山できたとしても、あなたの顔は割れています。それに、シスターさえもあなたを助けることを拒んでいるんです。そんな人間を助ける人間なんていません。いたとしたら、あなたを犯罪に巻き込もうとする人間くらいでしょう」
「……そんなっ! 嫌だ! そんな所に行くくらいなら教会に行く!」
「シスターからの申し出を断ったのはあなた自身ですよ。明日に移動です。心の準備をしておいてください」
無機質な口調で男はそう言うと、話は終わりだと言わんばかりに椅子から立ち上がった。
「い、嫌だ! 見知らぬ男の慰みものになんてなりたくない!」
「そんなことをする男性ばかりじゃありませんよ」
男はそう言うと、部屋を出て行く。
「待って! やっぱり教会に行きたい! 反省する! 反省するから許して!」
手枷と足枷で動けないエルンは、しばらくの間、その場で泣き続けていた。
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父からの手紙を読み終えたシアルリアは、大きく息を吐いた。
(教会での暮らしも大変だと聞くけど、山小屋の生活のほうが辛いわよね。音を上げて逃げ出しそう)
エルンが最後まで反省しなかったことについては残念に思うが、そんなことができるタイプなら、こうはならなかっただろうと結論づけた。ちなみにガズクは娘を恨んでいないらしく、エルンにまた会える日がくることを信じて、幽閉生活を送っているようだった。
その時、扉がノックされ、笑顔の侍女が部屋に入ってくると、ブレイズが来たことを教えてくれた。
「どうかなさいましたか?」
「国民にシアを紹介する日に、俺の精神的な問題が片付いた話をするつもりだったけど、やめておいたほうがいいか?」
「どうしてです?」
「シアが目立たないといけない日だろ? それに無邪気に俺の奥さんを自慢したい」
「どうせいつかは伝えるのですから、あの時は演技をしていたのだとバレてしまいますよ?」
苦笑すると、ブレイズは微笑む。
「その時はその時だ」
「それなら演技はせずに、普通に褒めてください」
「……そうだな」
ブレイズは照れくさそうな顔をしたが、素直にうなずいた後、シアルリアを抱きしめた。
王女に婚約者を奪われた令嬢が訳ありの国王に嫁いだ結果、王女と婚約者は罰が当たって不幸になり、令嬢と訳ありの国王は心を通わせて幸せに暮らしたのだった。
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お読みいただきありがとうございました。最後は駆け足になってしまいましたが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。
いつものごとく「皆さまにお尋ねしたいことがあります」という新作を投稿しております。
気が向かれましたら読んでいただけますと幸いです!
感想を書いてくださる方、あとがきという言い訳に付き合ってくださる方はスクロールをお願いします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
最後のほうは駆け足で申し訳ございませんでした。本当はもっと丁寧に書いていくつもりが精神的に余裕がなく……!
改めていつか書き直せたらいいなと思っております。
マロックについてもちゃんとざまぁを書きたかったのですが、本当に申し訳ございません。
バタバタしてしまいましたが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです!
お気に入り、しおり、エール、いいねをありがとうございました。感想もありがとうございました!
そして、恒例の宣伝を!
「皆さまにお尋ねしたいことがございます」という新作を投稿しています。
こちらはバタバタする前に書きためておいた分になります。ストックがすぐになくなりそうなので、これから頑張って書いていきます。
また、新作や他の作品でお会いできますと幸いです。
そして、私の体調などを心配してくださる温かいコメントをくださった方々(非承認の方も含め)本当にありがとうございました。
さらっと後で書かせていただきますので、気になる方は下のほうにスクロールをお願いいたします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
これからも頑張ってまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
風見ゆうみ
ご心配くださった方、本当にありがとうございます。
アトピーもそうなのですが、精神的な余裕がなくなったのは、主人が緊急入院したのが原因でございます。
何があったのか気になるし詳しく知りたいと思ってくださった方はお手数ですが「執筆予定と日記みたいなもの」に足を運んでいただけますと幸いです。
体調を崩しやすい季節ですのでご自愛くださいませ。
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