【完結】私はあなたの愛する人ではありません

風見ゆうみ

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第一章  誰かの代わりになるのはもうやめました!

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 ロゼリアがレフス王国に来るまでに調べた限りでは、ラブックはとても爽やかな青年で、城の使用人たちにもとても愛されていた。逆に弟のルディウスは、王家直属の騎士団の騎士たちと仲が良いことで、使用人たちは彼のことをお高くとまっていると思っているようだった。

 王子なんだし、偉そうにしていてもそう問題はないと思うけど、よっぽど酷いのかしら。

 今日から生活することになる部屋に行く前に、ラブックの部屋に案内されることになったロゼリアは、メイドの後ろを歩きながら、呑気にそんなことを考えた。

「やあ、ロゼリア。待っていたよ。君に会えて本当に嬉しい。これから仲良くやっていこうね」
「お役に立てるよう、精一杯励んでまいりますのでよろしくお願いいたします」
「やだなあ、ロゼリア。堅苦しいことを言わないでよ」

 ラブックは部屋の扉を大きく開けて、ロゼリアを促す。

「さあ、中に入ってくれ」
「ラブック殿下、申し訳ございません。今日は殿下へのご挨拶のあとはすぐに部屋で休むようにと言われたのです。また、後日にお伺いさせてもらってもよろしいでしょうか」
「……かまわないけど」

 少しの間はあったものの、ラブックは笑顔でうなずく。

「来たばかりで疲れているよね。ゆっくり休んでほしい」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いいたします」

 ロゼリアは深々と頭を下げて、ラブックと別れて移動する。
 部屋まで案内されている途中で、メイドが振り返って、ロゼリアに尋ねた。

「どうして、ピンク色のドレスを着ておられないのですか?」
「この城内はピンク色のドレスを着ていないといけない決まりでもあるの?」
「そういうわけではありませんが……」

 どこか不満そうな若いメイドをロゼリアは無言で見つめる。

 ラブック殿下の本性を知らない人間は、私がノエルファ様の代わりをしていないことが気に食わないみたいね。

「言いたいことがあるならはっきり言ってもらっていいわよ」

 先ほどの話し合いで国王からは城内では王子と同等の権限を与えられることを約束してもらった。
 書面にしてもらってからのほうが確実だが、窘めないのもよくない。

 ロゼリアは無表情でメイドに言うと、焦った顔で謝罪する。

「あの、申し訳ございませんでした」
「どうして謝るの?」
「不快な思いをさせてしまったことについてです」
「悪いと思うなら、聞きたいことがあるんだけど答えてくれる?」

 メイドは困った顔をして、ロゼリアの後ろに控えていた仲間に目を向けた。
 私に聞かないでよと言わんばかりに、助けを求められたメイドは不満げな顔をしたが、ロゼリアの視線に気がついて頭を下げた。

「ロゼリア様、申し訳ございません。彼女はラブック殿下に心酔しているのです」
「それがピンク色のドレスを着ていないことを聞いてきた理由なの?」
「それは……」

 メイドたちが顔を見合わせるのを見て、ロゼリアは苦笑する。

「意地悪したいわけではないのよ。私はここでロゼリアとしてうまくやっていきたいだけ。気になることがあるなら尋ねるし、あなたたちにも陰でどうこう言われるのではなく、ちゃんと私に伝えてほしいのよ」
「「承知いたしました」」 
 
 同時にうなずいたメイドに、ロゼリアは、まずは部屋に案内してもらうことを優先するように伝えた。

 ロゼリアに用意された部屋には、ドレスを収納するための衣装部屋に続く扉があった。
 置かれている家具は最低限のもので、シンプルなキングサイズのベッドにドレッサー、書物机や空の本棚があるだけだった。

 ソファやローテーブル、ティーテーブルなどは、落ち着いてから業者を呼んで、ロゼリアの好みのものを用意させるとのことだった。
 そんなこともあって、大きな部屋のわりには物がなさすぎて殺風景に感じた。
 気になったのは、カーテンやベッドシーツなどの色が全てピンクだということだった。

 ノエルファ様の好みを反映しているんでしょうね。

 部屋を見回したロゼリアは、自分の好きな色を誰かに聞かれたことがなかったことを思い出した。
 今着ている服も自分で選んだものであって、誰かに聞かれたわけではない。

 虚しさを感じたロゼリアだったが、すぐに首を横に振る。

 こんな弱気じゃ駄目よ!
 私はノエルファ様ではなく、ロゼリアとして生きるんだから。

 気を取り直したロゼリアは、居心地悪そうに扉の前に立っているメイドたちに話しかける。

「先ほどの話の続きをしましょうか。もちろん、ここだけのお話にしましょう。もし、他の誰かに話す必要がある場合は、お互いに許可を取ること。勝手に話すのは許されない」
 
 ロゼリアから何か秘密を話すつもりはない。メイドたちに話をさせやすくするために、ここだけの話と言っておいた。

「「承知いたしました」」

 まるで自分たちが選ばれた人間のように感じたのか、メイドは明るい表情になってうなずいた。
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