【完結】私はあなたの愛する人ではありません

風見ゆうみ

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第一章  誰かの代わりになるのはもうやめました!

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 メイドたちに話を聞いてみると、妊娠して辞めていったメイドたちは、その数十日前から様子がおかしかったとのこと話した。

「様子がおかしいと気づいていたということは、不思議に思った誰かが理由を聞いていたりしないの?」
「実は、ラブック様に付くメイドは固定されているんです」

 最初は反抗的な態度を取っていた金色の髪をシニヨンにしているメイドが話すと、シルバーブロンドの髪のメイトが話を引き継ぐ。

「選ばれるのは、ピンクやそれに近い髪を持つ女性と決まっています。ロゼリア様の髪の色と同じような女性を特に好んで選んでおられました」
「……ラブック殿下はズキチーケ王国の元王女のノエルファ様に恋愛感情を抱いていたのかしら」
「それはわかりません。ですが、婚約者にお望みになったのなら、きっとそうなのでしょう」

 メイドたちもはっきりとはわからないようだった。

 これは、ラブック殿下付きのメイドから詳しく話を聞く必要があるわね。といっても、彼だってそう馬鹿ではない。口止めしている可能性が高い。

 さて、どう攻めていこうかしら。

 メイドたちの話を聞いたロゼリアがそう考えた時、扉がノックされた。
 来たばかりの自分のもとに訪ねてくる人物がそう思い浮かばない。話をしていただけに、ラブックが来たのだろうかとロゼリアが警戒していると、金色の髪のメイドが口を開く。

「ここはロゼリア様のお部屋です。何か御用でしょうか」
「ルディウスだ。ロゼリア嬢に話がある」

 まさか、第二王子のルディウスがこんなに早く接触してくるとは思わなかったロゼリアは、驚きで大きく目を見開いた。


******

 その日の晩は疲れているだろうと、食事は部屋まで運んでもらったが、軽いものだと言われていたが、ロゼリア一人では食べ切れない量が運ばれてきた。

 簡易テーブルの上に所狭しと並べられたのは、数種類のパンとスープ、肉料理、サラダなど、ロゼリアが好きなものを選んで食べられるように配慮されていた。

「こ、こんなご馳走が食べられる日がくるなんて!」

 ズキチーケ王国の中では良いものを食べてきたはずのロゼリアだが、硬いパンや肉が多かった。
 柔らかいパンを初めて食べたロゼリアは、感動して涙が出そうになった。

「美味しい! これも美味しい!」

 満面の笑みを浮かべて食事を進める彼女を見たメイドたちは、彼女に対する警戒感を解き、優しい表情で見守ったのだった。

 次の日の朝、目を覚ましたロゼリアが呼び鈴を鳴らすと、昨日のメイドとは違う茶色の髪をおさげにした女性が入ってきた。

「おはようございます、ロゼリア様。今日からロゼリア様専属のメイドをさせていただきます、マロンと申します」
「よろしくね、マロン」

 ロゼリアに侍女は付かず、専属メイドが交代で付いてくれることになり、二人のうちの一人がマロンだった。

 十七歳のマロンは元気はつらつな少女で、男爵家の次女だが、婚約者が見つからなかったため、働きに出ることにしたのだ。

「王太子の婚約者のメイドなら、お近づきになりたいという人もいるわよね」
「そんな邪な気持ちは持っておりません。ロゼリア様のお役に立つことが一番の目的です!」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」

 ロゼリアは微笑むと、早速マロンに仕事を頼む。

「ラブック殿下にお会いしたいから、都合の良い時間を聞いてほしいのよ」
「承知いたしました! まずは、ロゼリア様の身支度のお手伝いをしてからでも良いでしょうか」
「ありがとう。お願いします」
「もちろんでございます!」

 昔は王女の代わりをする役割であっても、王城の中でのロゼリアの存在は軽んじられていた。メイドや侍女が付いたことなんてなかったし、優しい言葉をかけてくれる使用人も少なかった。

 マロンの明るい声に元気をもらい、ロゼリアは今日も頑張ろうと気合を入れなおした。
 その後、ロゼリアが朝食をとり終えると、マロンはラブックの部屋へ確認を取りにいった。
 彼女が戻ってくるのを待っている間に、昨日ルディウスとの会話を思い出す。 

『兄上はどんなに悪いことをしても、両親は信じないと思っている。実際に俺の話も信じてくれなかったからな』

 今の両陛下はラブック殿下を怪しんでいる。そのことをルディウス殿下は知らないのかしら。

 そう考えているとマロンが帰ってきて「今すぐならかまわないとのことです」と言った。

 なぜか嫌な予感がしたロゼリアはマロンにはあることを指示し、自分は他のメイドの案内でラブックの部屋に向かった。

 快く部屋に迎え入れられたロゼリアは部屋の奥にあるピンク色のカバーがかけられた二人掛けのソファに座るように促された。
 部屋の中を素早く見回した彼女は、この部屋の中がノエルファの自室のように、ピンク色のものばかり置かれていることに気味の悪さを感じた。

「僕に会いに来てくれるなんて嬉しいな」
「朝早くから申し訳ございません」
「そんなの気にしないでよ」

 メイドがお茶を淹れている間は、和やかなムードだった。その雰囲気ががらりと変わることになったのは、メイドが部屋を出ていき、二人きりになってからだった。
 向かいに座っていたラブックが急に席を移動して、ロゼリアの隣にやってくると、彼女の横に座る。ロゼリアが警戒して身を引こうとしたが、ラブックの動きのほうが速かった。

「お前がノエルファの代わりだと? ふざけたことを言うな。お前など、あの麗しいノエルファに似ても似つかない」

 そう言ったラブックは凶悪な顔をしてロゼリアの首を絞めてきたのだった。




登場人物紹介を作りましたので、ご興味ある方は見てやってください!
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