【完結】私はあなたの愛する人ではありません

風見ゆうみ

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第四章  逆転する立場

3  ラブックSide

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「ラブック殿下、ごめんなさい。昔の私と今の私は違うんです」

 ノエルファは目を潤ませて、ラブックの質問に答えた。
 演技をしても意味がないのにと、周りにいる貴族たちからは白けた目で見られているが、彼女はまったく気にする様子はない。

「君たちは出ていってくれ」

 ラブックは今更ではあるが、爽やかな笑みを浮かべて、貴族たちを促した。

 重い足取りで貴族たちが出ていき、部屋の中はラブックとノエルファだけになった。

 自分で作った状況とはいえ、初恋の人と二人きり。ラブックは胸が高鳴っていることを感じながら、隣に座るノエルファに優しい口調で話しかける。

「……ノエルファ、覚えてるかい?」
「なんのことですか?」

 訝しげな顔をするノエルファに、ラブックは眉尻を下げて、彼がを好きになった時のことを話す。

「五年前のことだよ。ルディウスと比べられて落ち込んでいる僕を慰めてくれたじゃないか。どんなにルディウスが優秀であっても、僕にも彼よりも優れているところはあるはずだと君が言ってくれたおかげで僕は……」

 ラブックはノエルファの手を取り、必死に思い出してほしいと願った。

 だが、ラブックにその言葉を伝えたのはノエルファではなくロゼリアである。
 ロゼリアからその話は聞いているのだが、聞き流しており、まったく記憶になかった。

「そ、そうでしたか。そういえば、そんなことを言いましたね」
「だろう? 思い出してくれて嬉しいよ。君のおかげで僕は自分らしくいられたんだ」
「じゃ、じゃあ、ラブック殿下は私を幸せにしてくれるんですか?」

 どうしてそこに繋がるのか。冷静に考えれば、ノエルファが自分のことしか考えていないことに気づくはずだ。
 しかし、恋に盲目になっているラブックには、そんなことを考える頭はない。

「もちろんだ。君を世界一幸せにするよ」
「……なら、私を王太子妃に……いえ、王妃にしてくださいますか?」
「え……、あ、それは」
「お願いです。私は王妃になりたいんです!」
「ノエルファ、君も聞いていただろう? 父上はとても怒っていて……」

 困り顔のラブックに、ノエルファは彼の手を優しく握り返して微笑んだ。

「別に私は結婚相手がラブック殿下でなくてもいいんです」
「えっ……」
「ルディウス殿下が王太子になるんでしょう? なら、私をルディウス殿下の婚約者になれるようになんとかしてくれませんか?」
「いや。そうなったら、僕の気持ちはどうなるんだ!?」

 純粋で無邪気なノエルファはどこにいってしまったのか。駆け落ちした相手が彼女を変えてしまったのか。ショックを受けているラブックの頬を、ノエルファは優しく撫でる。

「ラブック殿下、私のことを愛しているなら、私の気持ちを優先してくださいますよね?」
「……そんな」

(僕の気持ちはどうなるんだ?)

 絶望に近い感情を覚えてやっと、ラブックの頭の中に、目の前にいるノエルファが初恋の人なのかという疑問が芽生えた。


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