18 / 34
第四章 逆転する立場
3 ラブックSide
しおりを挟む
「ラブック殿下、ごめんなさい。昔の私と今の私は違うんです」
ノエルファは目を潤ませて、ラブックの質問に答えた。
演技をしても意味がないのにと、周りにいる貴族たちからは白けた目で見られているが、彼女はまったく気にする様子はない。
「君たちは出ていってくれ」
ラブックは今更ではあるが、爽やかな笑みを浮かべて、貴族たちを促した。
重い足取りで貴族たちが出ていき、部屋の中はラブックとノエルファだけになった。
自分で作った状況とはいえ、初恋の人と二人きり。ラブックは胸が高鳴っていることを感じながら、隣に座るノエルファに優しい口調で話しかける。
「……ノエルファ、覚えてるかい?」
「なんのことですか?」
訝しげな顔をするノエルファに、ラブックは眉尻を下げて、彼が彼女を好きになった時のことを話す。
「五年前のことだよ。ルディウスと比べられて落ち込んでいる僕を慰めてくれたじゃないか。どんなにルディウスが優秀であっても、僕にも彼よりも優れているところはあるはずだと君が言ってくれたおかげで僕は……」
ラブックはノエルファの手を取り、必死に思い出してほしいと願った。
だが、ラブックにその言葉を伝えたのはノエルファではなくロゼリアである。
ロゼリアからその話は聞いているのだが、聞き流しており、まったく記憶になかった。
「そ、そうでしたか。そういえば、そんなことを言いましたね」
「だろう? 思い出してくれて嬉しいよ。君のおかげで僕は自分らしくいられたんだ」
「じゃ、じゃあ、ラブック殿下は私を幸せにしてくれるんですか?」
どうしてそこに繋がるのか。冷静に考えれば、ノエルファが自分のことしか考えていないことに気づくはずだ。
しかし、恋に盲目になっているラブックには、そんなことを考える頭はない。
「もちろんだ。君を世界一幸せにするよ」
「……なら、私を王太子妃に……いえ、王妃にしてくださいますか?」
「え……、あ、それは」
「お願いです。私は王妃になりたいんです!」
「ノエルファ、君も聞いていただろう? 父上はとても怒っていて……」
困り顔のラブックに、ノエルファは彼の手を優しく握り返して微笑んだ。
「別に私は結婚相手がラブック殿下でなくてもいいんです」
「えっ……」
「ルディウス殿下が王太子になるんでしょう? なら、私をルディウス殿下の婚約者になれるようになんとかしてくれませんか?」
「いや。そうなったら、僕の気持ちはどうなるんだ!?」
純粋で無邪気なノエルファはどこにいってしまったのか。駆け落ちした相手が彼女を変えてしまったのか。ショックを受けているラブックの頬を、ノエルファは優しく撫でる。
「ラブック殿下、私のことを愛しているなら、私の気持ちを優先してくださいますよね?」
「……そんな」
(僕の気持ちはどうなるんだ?)
絶望に近い感情を覚えてやっと、ラブックの頭の中に、目の前にいるノエルファが初恋の人なのかという疑問が芽生えた。
ノエルファは目を潤ませて、ラブックの質問に答えた。
演技をしても意味がないのにと、周りにいる貴族たちからは白けた目で見られているが、彼女はまったく気にする様子はない。
「君たちは出ていってくれ」
ラブックは今更ではあるが、爽やかな笑みを浮かべて、貴族たちを促した。
重い足取りで貴族たちが出ていき、部屋の中はラブックとノエルファだけになった。
自分で作った状況とはいえ、初恋の人と二人きり。ラブックは胸が高鳴っていることを感じながら、隣に座るノエルファに優しい口調で話しかける。
「……ノエルファ、覚えてるかい?」
「なんのことですか?」
訝しげな顔をするノエルファに、ラブックは眉尻を下げて、彼が彼女を好きになった時のことを話す。
「五年前のことだよ。ルディウスと比べられて落ち込んでいる僕を慰めてくれたじゃないか。どんなにルディウスが優秀であっても、僕にも彼よりも優れているところはあるはずだと君が言ってくれたおかげで僕は……」
ラブックはノエルファの手を取り、必死に思い出してほしいと願った。
だが、ラブックにその言葉を伝えたのはノエルファではなくロゼリアである。
ロゼリアからその話は聞いているのだが、聞き流しており、まったく記憶になかった。
「そ、そうでしたか。そういえば、そんなことを言いましたね」
「だろう? 思い出してくれて嬉しいよ。君のおかげで僕は自分らしくいられたんだ」
「じゃ、じゃあ、ラブック殿下は私を幸せにしてくれるんですか?」
どうしてそこに繋がるのか。冷静に考えれば、ノエルファが自分のことしか考えていないことに気づくはずだ。
しかし、恋に盲目になっているラブックには、そんなことを考える頭はない。
「もちろんだ。君を世界一幸せにするよ」
「……なら、私を王太子妃に……いえ、王妃にしてくださいますか?」
「え……、あ、それは」
「お願いです。私は王妃になりたいんです!」
「ノエルファ、君も聞いていただろう? 父上はとても怒っていて……」
困り顔のラブックに、ノエルファは彼の手を優しく握り返して微笑んだ。
「別に私は結婚相手がラブック殿下でなくてもいいんです」
「えっ……」
「ルディウス殿下が王太子になるんでしょう? なら、私をルディウス殿下の婚約者になれるようになんとかしてくれませんか?」
「いや。そうなったら、僕の気持ちはどうなるんだ!?」
純粋で無邪気なノエルファはどこにいってしまったのか。駆け落ちした相手が彼女を変えてしまったのか。ショックを受けているラブックの頬を、ノエルファは優しく撫でる。
「ラブック殿下、私のことを愛しているなら、私の気持ちを優先してくださいますよね?」
「……そんな」
(僕の気持ちはどうなるんだ?)
絶望に近い感情を覚えてやっと、ラブックの頭の中に、目の前にいるノエルファが初恋の人なのかという疑問が芽生えた。
966
あなたにおすすめの小説
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?
どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね
柚木ゆず
恋愛
※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。
あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。
けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。
そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。
捨てられた令嬢と、選ばれなかった未来
鍛高譚
恋愛
「君とは釣り合わない。だから、僕は王女殿下を選ぶ」
婚約者アルバート・ロンズデールに冷たく告げられた瞬間、エミリア・ウィンスレットの人生は暗転した。
王都一の名門公爵令嬢として慎ましくも誠実に彼を支えてきたというのに、待っていたのは無慈悲な婚約破棄――しかも相手は王女クラリッサ。
アルバートと王女の華やかな婚約発表の裏で、エミリアは社交界から冷遇され、"捨てられた哀れな令嬢"と嘲笑される日々が始まる。
だが、彼女は決して屈しない。
「ならば、貴方たちが後悔するような未来を作るわ」
そう決意したエミリアは、ある人物から手を差し伸べられる。
――それは、冷静沈着にして王国の正統な後継者、皇太子アレクシス・フォルベルト。
彼は告げる。「私と共に来い。……君の聡明さと誇りが、この国には必要だ」
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
殿下、妃殿下。貴方がたに言われた通り、前世の怨みを晴らしに来ましたよ
柚木ゆず
恋愛
「そんなに許せないのなら、復讐しに来るといいですわ。来世で」
「その日を楽しみに待っているぞ、はははははははははっ!」
濡れ衣をかけられ婚約者ヴィクトルと共に処刑されてしまった、ミリヤ・アリネス。
やがてミリヤは伯爵家令嬢サーヤとして生まれ変わり、自分達を嵌めた2人への復讐を始めるのでした。
幼馴染最優先の婚約者に愛想が尽きたので、笑って家出しました ― 笑顔で去っただけなのに、なぜ泣いているのですか
ラムネ
恋愛
侯爵令嬢リオナは、婚約者アルベルトが「幼馴染が可哀想だから」と約束を破り続ける日々に耐えていた。領地再建の帳簿も契約も、実はリオナが陰で支えていたのに、彼は「君は強いから」と当然のように扱う。決定的な侮辱の夜、リオナは怒らず泣かず、完璧な笑顔で婚約指輪だけを返して屋敷を去った――引継ぎは、何一つ残さずに。
翌日から止まる交易、崩れる資金繰り、露出する不正。追いすがるアルベルトを置き去りに、リオナは王立監査院の臨時任官で辺境へ。冷徹と噂される監察騎士レオンハルトと共に、数字と契約で不正を断ち、交易路を再生していく。
笑顔で去っただけなのに、泣くのは捨てた側だった。
「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。
誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。
無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。
ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。
「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。
アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。
そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?!
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる