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第五章 初恋の人の正体
2 ラブックSide
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ロゼリアがノエルファの代役をしていたことは、彼女がリンツと話をした三日後に発表された。
発表されたその日から、ロゼリアはルディウスのエリアに部屋を移したことで、ラブックだけでなく、ノエルファもロゼリアに近づくことはできなかった。
ラブックとルディウスの兄弟仲が悪かったこともあり、大階段を挟んで三階の東はラブック、西はルディウスの居住区と分けられていたのが功を奏した形だ。
現在、ルディウスは西の端にある階段を使用して各階に移動しており、ロゼリアも同じように動いていた。
ノエルファがロゼリアのふりをして、ルディウスのエリアに入ることがないように、階段とフロアの間には騎士が立っており、日によって変わる合言葉を伝えなければ先に行くことができない。
ラブックについては、ルディウスと背丈がまったく違うため、間違えられることはなかった。
思い通りにいかないイライラが募ったラブックとノエルファの仲は、確実に悪くなっていった。
「ノエルファ、まさか、あの時、僕が話をしたのはロゼリアだったと言うんじゃないだろうね?」
「ノエルファは私です。ロゼリアではありません!」
「だから、あの時の女性はノエルファのふりをしたロゼリアだったのかと聞いているんだ!」
ノエルファの部屋で二人は何度も同じやりとりを繰り返しており、部屋の前に立っている護衛騎士も辟易していた。
「あなたが愛したのは私なのでしょう? どうして疑うんですか?」
ノエルファはか弱いふりをして、ラブックに尋ねた。潤んだ瞳に見つめられたラブックは、動揺して目を逸らす。
「ロゼリアが君の代役をしていたと正式に発表されたんだ。疑いたくなっても仕方がないじゃないか!」
「国王陛下が嘘をついているのかもしれません。いえ、ロゼリアが嘘をついているんだわ!」
「父上が嘘をつくだと!? 不敬だぞ!」
さすがにノエルファもこの発言はまずかったことに気づき、すぐに謝罪する。
「ごめんなさい。ラブック殿下が信じてくれないのでつい……」
ノエルファは縋るような目でラブックを見つめる。
それだけで、ラブックは強く言えなくなってしまい、目を逸らした。
「ラブック殿下、あなたの愛した人は私なんです。信じてください!」
「本当にそうなのか確認したいから、ロゼリアに会いたい。だけど、接触できないんだから、どうしようもない!」
「とにかく冷静になって考えましょう」
ノエルファがにこりと微笑むと、ラブックは頬を赤らめて促されたソファに座った。
今になってやっと気づいたが、ノエルファの部屋の中はピンク色のものばかりだ。急に落ち着かない気分になり、ラブックは慌てて立ち上がった。
「ロゼリアに会えないのなら、ルディウスと話をしてくる」
「ルディウス殿下と会うのですか? 私もお会いしたいです!」
「伝えておくよ」
「いえ。一緒に行きます。少しでも早くお話したいので!」
ノエルファは今すぐに行こうと、ラブックの手を引いて部屋を出た。
もやもやする気持ちを抱えたまま、ラブックはノエルファと共に境界線にいる騎士の所に行き、ルディウスに会いたいと告げた。
ラブックがルディウスに会うことは禁止されていない。すぐに騎士は対応し、ルディウスのもとへ向かった。
十分程して、ルディウスはラブックたちの前に現れて、彼らに話しかける。
「一体、俺に何の用なんです? 俺に構う暇があるのなら、公務をするべきだと思いますが」
「ルディウス様、あの!」
「ルディウス! 教えてくれ! 僕の初恋の相手はロゼリアなのか!?」
前に出ようとしたノエルファを押し退け、ラブックが尋ねた。すると、ルディウスは失笑する。
「今さらそんなことを知ってどうするんです? ロゼリアは俺の婚約者です。あなたの婚約者に戻ることはありません。兄上には隣にいる彼女がお似合いですよ」
「そんな……」
ルディウスの反応を見たラブックは、自分の初恋の相手がロゼリアだったのだと確信し、目の前が真っ暗になった。
発表されたその日から、ロゼリアはルディウスのエリアに部屋を移したことで、ラブックだけでなく、ノエルファもロゼリアに近づくことはできなかった。
ラブックとルディウスの兄弟仲が悪かったこともあり、大階段を挟んで三階の東はラブック、西はルディウスの居住区と分けられていたのが功を奏した形だ。
現在、ルディウスは西の端にある階段を使用して各階に移動しており、ロゼリアも同じように動いていた。
ノエルファがロゼリアのふりをして、ルディウスのエリアに入ることがないように、階段とフロアの間には騎士が立っており、日によって変わる合言葉を伝えなければ先に行くことができない。
ラブックについては、ルディウスと背丈がまったく違うため、間違えられることはなかった。
思い通りにいかないイライラが募ったラブックとノエルファの仲は、確実に悪くなっていった。
「ノエルファ、まさか、あの時、僕が話をしたのはロゼリアだったと言うんじゃないだろうね?」
「ノエルファは私です。ロゼリアではありません!」
「だから、あの時の女性はノエルファのふりをしたロゼリアだったのかと聞いているんだ!」
ノエルファの部屋で二人は何度も同じやりとりを繰り返しており、部屋の前に立っている護衛騎士も辟易していた。
「あなたが愛したのは私なのでしょう? どうして疑うんですか?」
ノエルファはか弱いふりをして、ラブックに尋ねた。潤んだ瞳に見つめられたラブックは、動揺して目を逸らす。
「ロゼリアが君の代役をしていたと正式に発表されたんだ。疑いたくなっても仕方がないじゃないか!」
「国王陛下が嘘をついているのかもしれません。いえ、ロゼリアが嘘をついているんだわ!」
「父上が嘘をつくだと!? 不敬だぞ!」
さすがにノエルファもこの発言はまずかったことに気づき、すぐに謝罪する。
「ごめんなさい。ラブック殿下が信じてくれないのでつい……」
ノエルファは縋るような目でラブックを見つめる。
それだけで、ラブックは強く言えなくなってしまい、目を逸らした。
「ラブック殿下、あなたの愛した人は私なんです。信じてください!」
「本当にそうなのか確認したいから、ロゼリアに会いたい。だけど、接触できないんだから、どうしようもない!」
「とにかく冷静になって考えましょう」
ノエルファがにこりと微笑むと、ラブックは頬を赤らめて促されたソファに座った。
今になってやっと気づいたが、ノエルファの部屋の中はピンク色のものばかりだ。急に落ち着かない気分になり、ラブックは慌てて立ち上がった。
「ロゼリアに会えないのなら、ルディウスと話をしてくる」
「ルディウス殿下と会うのですか? 私もお会いしたいです!」
「伝えておくよ」
「いえ。一緒に行きます。少しでも早くお話したいので!」
ノエルファは今すぐに行こうと、ラブックの手を引いて部屋を出た。
もやもやする気持ちを抱えたまま、ラブックはノエルファと共に境界線にいる騎士の所に行き、ルディウスに会いたいと告げた。
ラブックがルディウスに会うことは禁止されていない。すぐに騎士は対応し、ルディウスのもとへ向かった。
十分程して、ルディウスはラブックたちの前に現れて、彼らに話しかける。
「一体、俺に何の用なんです? 俺に構う暇があるのなら、公務をするべきだと思いますが」
「ルディウス様、あの!」
「ルディウス! 教えてくれ! 僕の初恋の相手はロゼリアなのか!?」
前に出ようとしたノエルファを押し退け、ラブックが尋ねた。すると、ルディウスは失笑する。
「今さらそんなことを知ってどうするんです? ロゼリアは俺の婚約者です。あなたの婚約者に戻ることはありません。兄上には隣にいる彼女がお似合いですよ」
「そんな……」
ルディウスの反応を見たラブックは、自分の初恋の相手がロゼリアだったのだと確信し、目の前が真っ暗になった。
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