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第六章 元婚約者たちの悪あがき
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ノエルファの件は、マロンからロゼリアに、その後はロゼリアからルディウスとリンツに伝えられた。
この件については、明日に改めて話すことにし、今はパーティーを成功させることだけを考えた。
色々とあったが、大きなトラブルはなくパーティーは無事に終了した。
一部の人間から不快になるようなことを言われても仕方がないと思っていたが、レフス王国の貴族はそんな素振りを一切見せなかった。
大人の対応をしてくれたのでしょうけれど、ズキチーケ王国ではそれができない人も多かった。本当に助かるわ。
付き合いで果実酒を呑んだため、熱くなった体を夜風に当たろうと考えていると、ルディウスが「部屋まで送る」と申し出てくれた。
「ありがとう。でも、ちょっと酔いを覚ますために、庭園を歩こうと思うの」
「迷惑じゃなかったら俺も行く」
「迷惑なんかじゃないわ」
ロゼリアが笑顔で答えると、ルディウスが彼女に出を差した。
エスコートしてくれるのだとわかったロゼリアは、恐る恐る彼の手に自分の手を置いて微笑む。
「ありがとう」
「礼を言われることじゃない」
置かれた手を握り、ルディウスが歩き出したので、ロゼリアも平静を装って歩き出す。
外灯に照らされた石畳の道の周りには、昼間は色とりどりの花が咲き誇っている。夜はそんな華やかさはなく、時折吹く風に身を任せて眠っているようにも見えた。
「今日はノエルファ様がピンク色にこだわっていたことに、初めてありがたいと思ったわ」
「何色が好きかは人の勝手だからな」
「ええ。そのことについて悪く言うつもりはないわ。私は寒色系が好きだけど、ノエルファ様は違うというだけだからね。だけど、簡単に見分けがつくんだもの。そう思いたくなってもおかしくないでしょう?」
「ロゼリアとノエルファは本当にそっくりだしな。慣れたらすぐにわかるけど」
「そうなの? どう違って見える?」
「……うまく言えないけど、ノエルファのほうがワガママそうな顔をしてる」
眉をひそめて答えたルディウスを見て、ロゼリアは笑う。
「私はワガママそうには見えないってこと?」
「そうだな。強いていうと、すべてをあきらめたような感じ」
「うう。昔の私はそう思っていたから、そう見えても仕方がないわ。これからは気をつけるけどね」
ロゼリアがため息を吐くと、ルディウスが握っていた手の力を少しだけ強める。
「自惚れていると言われるかもしれないが、今のロゼリアは楽しそうに見える」
「……本当に?」
ロゼリアは頭一つ分背の高いルディウスを見つめた。
「うん」
見つめ合う二人の間に、甘い雰囲気が流れた時、城のほうからルディウスの側近が走ってきた。
「ルディウス殿下、ロゼリア様、お邪魔をして申し訳ございません!」
ロゼリアとルディウスが体を離すのを見た側近は慌てて謝ったあと、やって来た理由を話す。
「ノエルファ様と駆け落ちした男が捕まったと連絡が入りました。その男は正直に話すかわりに減刑してほしいと訴えているそうです」
遅い時間ではあったが、詳しい話を聞くために、ロゼリアたちは場所を移動することにした。
この件については、明日に改めて話すことにし、今はパーティーを成功させることだけを考えた。
色々とあったが、大きなトラブルはなくパーティーは無事に終了した。
一部の人間から不快になるようなことを言われても仕方がないと思っていたが、レフス王国の貴族はそんな素振りを一切見せなかった。
大人の対応をしてくれたのでしょうけれど、ズキチーケ王国ではそれができない人も多かった。本当に助かるわ。
付き合いで果実酒を呑んだため、熱くなった体を夜風に当たろうと考えていると、ルディウスが「部屋まで送る」と申し出てくれた。
「ありがとう。でも、ちょっと酔いを覚ますために、庭園を歩こうと思うの」
「迷惑じゃなかったら俺も行く」
「迷惑なんかじゃないわ」
ロゼリアが笑顔で答えると、ルディウスが彼女に出を差した。
エスコートしてくれるのだとわかったロゼリアは、恐る恐る彼の手に自分の手を置いて微笑む。
「ありがとう」
「礼を言われることじゃない」
置かれた手を握り、ルディウスが歩き出したので、ロゼリアも平静を装って歩き出す。
外灯に照らされた石畳の道の周りには、昼間は色とりどりの花が咲き誇っている。夜はそんな華やかさはなく、時折吹く風に身を任せて眠っているようにも見えた。
「今日はノエルファ様がピンク色にこだわっていたことに、初めてありがたいと思ったわ」
「何色が好きかは人の勝手だからな」
「ええ。そのことについて悪く言うつもりはないわ。私は寒色系が好きだけど、ノエルファ様は違うというだけだからね。だけど、簡単に見分けがつくんだもの。そう思いたくなってもおかしくないでしょう?」
「ロゼリアとノエルファは本当にそっくりだしな。慣れたらすぐにわかるけど」
「そうなの? どう違って見える?」
「……うまく言えないけど、ノエルファのほうがワガママそうな顔をしてる」
眉をひそめて答えたルディウスを見て、ロゼリアは笑う。
「私はワガママそうには見えないってこと?」
「そうだな。強いていうと、すべてをあきらめたような感じ」
「うう。昔の私はそう思っていたから、そう見えても仕方がないわ。これからは気をつけるけどね」
ロゼリアがため息を吐くと、ルディウスが握っていた手の力を少しだけ強める。
「自惚れていると言われるかもしれないが、今のロゼリアは楽しそうに見える」
「……本当に?」
ロゼリアは頭一つ分背の高いルディウスを見つめた。
「うん」
見つめ合う二人の間に、甘い雰囲気が流れた時、城のほうからルディウスの側近が走ってきた。
「ルディウス殿下、ロゼリア様、お邪魔をして申し訳ございません!」
ロゼリアとルディウスが体を離すのを見た側近は慌てて謝ったあと、やって来た理由を話す。
「ノエルファ様と駆け落ちした男が捕まったと連絡が入りました。その男は正直に話すかわりに減刑してほしいと訴えているそうです」
遅い時間ではあったが、詳しい話を聞くために、ロゼリアたちは場所を移動することにした。
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