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7 これで終わらせるおつもりですか?
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クヤイズ殿下はぎゃあぎゃあ泣き喚きながら、ステージから下りると、付き人と共に広場から去っていった。
他国なんだから、どこで顔を洗えるかとか確認しないといけない気がするんだけど、そんなことを考える余裕もないらしい。
空を見上げると、鳥たちは誇らしげに空を旋回している。私が手を上げて鳥を称えるように拍手すると、他の人たちも空を見上げて拍手をした。
「顔面に食らってくれるとは、変なところ空気を読んでくれて助かる」
フェル殿下はまったく驚いているようには見えない。やっぱり、鳥がフンを落とすことは決まっていたことみたい。
笑いをこらえているフェル殿下に話しかけようとすると、リリが笑い始める。
『うふふ! すごい! 悪いことするから、鳥さんが怒ったのね! 鳥さん、美味しいだけじゃないのね!』
たまに鶏肉を食べさせているから、リリは同じ鳥だと思っているみたい。種類の説明をしようか迷っていると、犬たちの声が聞こえてくる。
『ざまぁみろ!』
『マロンは痛い目にあったんだから、鳥はあいつをつついてやったらいいんだ! もっと痛い目にあわせなきゃ!』
『そうだ! あれくらいでは許せない!』
犬たちの中ではまだ足りないという声が多く、私はフェル殿下に尋ねる。
「これで終わらせるおつもりですか?」
「そんなわけないだろ。今日はあいさつ代わりだ。チャンスをやったのにふざけた対応しかできないとわかったし、ナナリーもこちらの手に入った以上、優しくしてやる必要もない」
「……あの、フェル殿下、どうして私をキソウツ公爵令嬢の代わりに選んだのですか?」
プロウス王国の王家はキソウツ公爵令嬢の相手がノウル様だったから、妻である私を選んだのだと思い込んでいたし、私は犬とのコミュニケーション能力を買われたのだと思っていた。
でも、フェル殿下の様子だと違う理由だとわかる。
「その話は王城に戻ってからにしよう」
フェル殿下はリリの前にしゃがむと、拳を作ってリリに自分の匂いを嗅がせる。
「俺はフェルだ。よろしくなリリ」
『……あやしい。……あ、でも、ジャーキーが巻かれていた袋についてたものと同じ匂いがする!』
最初は警戒していたリリだったけれど、フェル殿下がジャーキーをくれた人だとわかると『ジャーキーの人!』と言って嬉しそうにふさふさの尻尾を振った。
******
パゼリノ王国の白亜色の王城は、五階建てで石垣の上にあった。異国の建築を取り入れているらしく、わふう建築なのだとフェル殿下が教えてくれた。城の中身もかなり変わっていて、階段は細いし、床は歩くとギシギシと音が鳴った。黒のカーペットが敷かれた狭い廊下にはたくさんの犬や猫がいた。
犬たちは廊下を自由に歩き回っていて、愛想が良く品の良い子たちばかりだ。犬は『こんにちはぁ!』と挨拶してくれるし、猫も「にゃ」とか「にゃあ」と鳴いてくれるので挨拶してくれているのかもしれない。
『あ、チクワだ!』
また、リリが意味のわからないことを言うので視線の先を見てみると、黒がメインの毛を持つチワワがちょこんと座っていた。
『リリ、違うわ。チワワよ』
私が教えると、チワワが近寄ってきて言う。
『はじめまして。チクワです』
「えっ?」
聞き返すと、チワワはつぶらな瞳を私に向けて答える。
『あなたはわたしと話ができるんですね! 嬉しいです! チクワっていう異国の食べ物の名前がわたしの名前です。チワワっていう犬種なんですけど、わたしをここに連れてきた商人が、この子はチクワです、って言っちゃったんです』
『チクワ! 美味しそうな名前!』
リリは嬉しそうに、自分よりもかなり小さい体の犬に近寄っていく。
どうしてリリが異国の食べ物の名前を知っているのかわからないけど、私が思っている以上にグルメなのかもしれない。
立ち止まっていた私たちの所にやって来たフェル殿下が言う。
「リリは賢いな」
「……はい。とっても賢いです。でも、このチ……、犬も可愛いですね」
チクワと言うわけにはいかないし、チワワと言ってもフェル殿下には通じないはずだから、下手なことは言わないことにした。
「父上たちの所に行く前に話しておきたいことがある。こっちへ来てくれ」
フェル殿下に促されると、チクワが一緒に行きたがるのでチクワを抱き上げて歩き出す。私たちは庭園を歩きながら話すことになった。
『ナナリーさんは犬とお話できるんですね。殿下は鳥さんとお話できるんですよ』
『そうなのね』
念話してくるチクワを撫でながら思う。
フェル殿下から口止めされていないのかもしれないけど、人間以外の動物というのは本当に正直ね。
木造の小屋まで来たところで、護衛やメイドたちを下がらせて、フェル殿下が話しかけてくる。
「そういえば、プロウス王国の最近の新聞を読んだか?」
「いいえ。パゼリノ王国に入ってからは一度もプロウス王国の新聞は読んでいません」
「そうか。あとで部屋に持っていかせるが、犬たちがボイコットを始めたそうだ」
「ボイコット?」
聞き返すと、フェル殿下は新聞に書いてあった内容を教えてくれた。
他国なんだから、どこで顔を洗えるかとか確認しないといけない気がするんだけど、そんなことを考える余裕もないらしい。
空を見上げると、鳥たちは誇らしげに空を旋回している。私が手を上げて鳥を称えるように拍手すると、他の人たちも空を見上げて拍手をした。
「顔面に食らってくれるとは、変なところ空気を読んでくれて助かる」
フェル殿下はまったく驚いているようには見えない。やっぱり、鳥がフンを落とすことは決まっていたことみたい。
笑いをこらえているフェル殿下に話しかけようとすると、リリが笑い始める。
『うふふ! すごい! 悪いことするから、鳥さんが怒ったのね! 鳥さん、美味しいだけじゃないのね!』
たまに鶏肉を食べさせているから、リリは同じ鳥だと思っているみたい。種類の説明をしようか迷っていると、犬たちの声が聞こえてくる。
『ざまぁみろ!』
『マロンは痛い目にあったんだから、鳥はあいつをつついてやったらいいんだ! もっと痛い目にあわせなきゃ!』
『そうだ! あれくらいでは許せない!』
犬たちの中ではまだ足りないという声が多く、私はフェル殿下に尋ねる。
「これで終わらせるおつもりですか?」
「そんなわけないだろ。今日はあいさつ代わりだ。チャンスをやったのにふざけた対応しかできないとわかったし、ナナリーもこちらの手に入った以上、優しくしてやる必要もない」
「……あの、フェル殿下、どうして私をキソウツ公爵令嬢の代わりに選んだのですか?」
プロウス王国の王家はキソウツ公爵令嬢の相手がノウル様だったから、妻である私を選んだのだと思い込んでいたし、私は犬とのコミュニケーション能力を買われたのだと思っていた。
でも、フェル殿下の様子だと違う理由だとわかる。
「その話は王城に戻ってからにしよう」
フェル殿下はリリの前にしゃがむと、拳を作ってリリに自分の匂いを嗅がせる。
「俺はフェルだ。よろしくなリリ」
『……あやしい。……あ、でも、ジャーキーが巻かれていた袋についてたものと同じ匂いがする!』
最初は警戒していたリリだったけれど、フェル殿下がジャーキーをくれた人だとわかると『ジャーキーの人!』と言って嬉しそうにふさふさの尻尾を振った。
******
パゼリノ王国の白亜色の王城は、五階建てで石垣の上にあった。異国の建築を取り入れているらしく、わふう建築なのだとフェル殿下が教えてくれた。城の中身もかなり変わっていて、階段は細いし、床は歩くとギシギシと音が鳴った。黒のカーペットが敷かれた狭い廊下にはたくさんの犬や猫がいた。
犬たちは廊下を自由に歩き回っていて、愛想が良く品の良い子たちばかりだ。犬は『こんにちはぁ!』と挨拶してくれるし、猫も「にゃ」とか「にゃあ」と鳴いてくれるので挨拶してくれているのかもしれない。
『あ、チクワだ!』
また、リリが意味のわからないことを言うので視線の先を見てみると、黒がメインの毛を持つチワワがちょこんと座っていた。
『リリ、違うわ。チワワよ』
私が教えると、チワワが近寄ってきて言う。
『はじめまして。チクワです』
「えっ?」
聞き返すと、チワワはつぶらな瞳を私に向けて答える。
『あなたはわたしと話ができるんですね! 嬉しいです! チクワっていう異国の食べ物の名前がわたしの名前です。チワワっていう犬種なんですけど、わたしをここに連れてきた商人が、この子はチクワです、って言っちゃったんです』
『チクワ! 美味しそうな名前!』
リリは嬉しそうに、自分よりもかなり小さい体の犬に近寄っていく。
どうしてリリが異国の食べ物の名前を知っているのかわからないけど、私が思っている以上にグルメなのかもしれない。
立ち止まっていた私たちの所にやって来たフェル殿下が言う。
「リリは賢いな」
「……はい。とっても賢いです。でも、このチ……、犬も可愛いですね」
チクワと言うわけにはいかないし、チワワと言ってもフェル殿下には通じないはずだから、下手なことは言わないことにした。
「父上たちの所に行く前に話しておきたいことがある。こっちへ来てくれ」
フェル殿下に促されると、チクワが一緒に行きたがるのでチクワを抱き上げて歩き出す。私たちは庭園を歩きながら話すことになった。
『ナナリーさんは犬とお話できるんですね。殿下は鳥さんとお話できるんですよ』
『そうなのね』
念話してくるチクワを撫でながら思う。
フェル殿下から口止めされていないのかもしれないけど、人間以外の動物というのは本当に正直ね。
木造の小屋まで来たところで、護衛やメイドたちを下がらせて、フェル殿下が話しかけてくる。
「そういえば、プロウス王国の最近の新聞を読んだか?」
「いいえ。パゼリノ王国に入ってからは一度もプロウス王国の新聞は読んでいません」
「そうか。あとで部屋に持っていかせるが、犬たちがボイコットを始めたそうだ」
「ボイコット?」
聞き返すと、フェル殿下は新聞に書いてあった内容を教えてくれた。
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