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11 とある王太子妃候補の思惑
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その後、エイドは無事に午後には帰ってきたらしい。
次の日の朝にこっそり報告しに来てくれたロキから聞いた話では、エイドの白い頬がピンク色に染まっていたらしくて、何度か殴られたんじゃないかと言っていた。
あと、案の定、寝技もかけられたらしいけど、どんな状況でかけられたのかはロキにも教えてくれなかったんだそうだ。
結果、サラとどうなったかについて、ロキはエイドから話を聞いたみたい。
でも、私にはサラが自分から詳しい話を伝えたいと言っていたということでどうなったかまでは教えてもらえなかった。
気になる。
だけど、当事者のサラがそう言うのであれば仕方がない。
昨日の晩にマーサがエイドを見かけたらしく、どんな様子だったか聞いてみたら、ロキと一緒に普通に仕事をしていたと言っていたし、フラれたわけではないような気がする。
フラれていたら仕事なんてできなさそうなのが、エイドだもの。
サラから話を聞けるのは、いつになるかわからないけど、それまでは自分のことに集中することにした。
*****
昨日は別邸に来ただけで私としてはやることはなく、ロキが来てくれただけで王太子妃候補としてやらなければならないことは特になかった。
でも、今日からは違った。
午後から謁見の間で王太子妃候補についての詳しい話を説明されるので、朝食をとってからはずっと忙しかった。
用意されていたドレスに着替えさせられ、前回の時のように別人にしてもらった。
髪を結ってアクセサリーを付けたところで時間切れになり、急いで謁見の間に向かった。
今日はヒールが低めの靴を用意してもらっていたので、走りやすくて助かった。
王太子妃候補が廊下を走っているので、城内の人たたが目を丸くしていた。
その様子を見たマーサたちは自分たちの段取りが悪いせいで、時間がギリギリになってしまったと謝られてしまった。
でも、ここまで人を別人にさせるのだから、時間がかかってもしょうがないと思う。
だから、マーサたちには間に合ったのだから気にしないでほしいとお願いした。
時間には間に合ったけれど、すでに謁見の間には、他の王太子妃候補たちが集まっていた。
前回、私に喧嘩を売ってこなかった二人の内の一人は誰とも目を合わさないようにしているのか、指定の場所に立って、ずっと顔を下に向けている。
そしてもう一人は不機嫌そうな顔で玉座を睨みつけていた。
その様子を見て思う。
もしかして、王家がお嫌いなのかしら。
でも、それならここに来る前に断るわよね。
ついつい、その人を凝視していると、私の視線に気が付いたのか玉座から目を離し、こちらに顔を向けた。
すると、笑顔になってこちらに近寄って来た。
「はじめまして。ナスカム辺境伯家の長女、エレインと申します。父は北の辺境伯と呼ばれております」
「はじめまして。アイラ・キャスティーと申します。父は子爵です」
お互いにカーテシーをして挨拶をすると、背は少し低めで細身のナスカム辺境伯令嬢は、漆黒のお尻まであるストレートの長い黒髪を揺らし、先程まで見せていた不機嫌そうな表情はどこへやら可愛らしい笑顔を見せて口を開いた。
「私、キャスティー子爵令嬢を応援しております」
「はい?」
「好きな人と結ばれたいという、王太子殿下のお気持ち、とてもわかりますもの」
「……では、ナスカム辺境伯令嬢も好きな方がいらっしゃるんですか?」
「いいえ。恋を知らないから余計にそう思うのです」
「……王太子殿下と恋をされてみたいとは思わないのですか?」
「その点につきましては、今のところは興味はございません。他に気になることがございますので」
話をしている内に時間になったのか、陛下やロキたちが壇上に現れたので、そこで話は打ち切られた。
そして、陛下の挨拶のあとは王太子妃候補選びについての詳しい話を担当者の方から話をしてもらった。
判定するのは5人で、宰相や外務大臣などの偉い人たちらしい。
どんな方法で判定するかは詳しくは教えてもらえなかったけれど、筆記試験もあるらしく、それはやはり点数が良い順で順位を決めるようだった。
そして、私たち王太子妃候補は別邸内の各自の部屋以外は自由に動き回ることが出来て、申請すれば友人や家族を呼んでも良いらしい。
なので近い内に、サラにこっちに遊びに来てもらおうと考えた。
ロキと仲良くなるために、王太子妃候補はロキとのデートもしなければいけなくなった。
特別枠の私を贔屓するつもりはないと念押しされたのと、私のほうがロキと過ごした時間が長いため、他の王太子妃候補は6日に一度のデートのところを、私の場合だけ12日に一度のデートとし、他の令嬢よりもロキと過ごす時間を短くされた。
そんなにデートをしていたら、仕事は大丈夫なのかしら。
それに休みもないみたいだし、体を壊したりするんじゃないかと心配になるわ。
そんな風に思ってロキのほうを見てみると、視線が合った。
すると、ロキは無言で優しく微笑んでくれた。
うう。
いつから、あんなに優しい顔を私に向けてくれていたのかしら。
気持ちを伝えてもらうまで、ロキが私を好きだなんて考えたこともなかった。
マグナとの結婚が本当に憂鬱で、どうしたら結婚しなくても良いのだろうとかしか頭になかったのよね。
笑い返す訳にもいかず、視線を逸らして説明してくれている男性の話に意識を集中させた。
他の令嬢とロキがデートをしている間は、残りの人間は自由時間になるのだけど、私だけは特別メニューを組まされることになった。
なぜならマナーが他の令嬢に対してなっていないと言われ、マナー講師がつけられることになってしまったからだ。
この特別待遇に関しては、何人かから失笑されただけで反対意見は出なかった。
当たり前のことができていない落ちこぼれなんて、眼中にないといったところなんでしょう。
それはそれで腹が立つので、マナーの先生には、しっかり教えてもらって、笑った人たちをぎゃふんと言わせてやるわ。
戦うのなら、相手に失礼のないようにしないといけないものね。
それに、ロキが真剣に向き合ってくれているのだから、私もしっかり向き合わなくちゃいけないわ。
といっても、王太子妃になりたいという気持ちは、これっぽっちも湧いてこないから困ったものなのよね。
簡単な説明が終わり、解散すれば今日は自由時間だと言われた。
補足で王太子殿下に質問がある人は今のうちにという話だったので、前回、私に敵意を向けていた人たちはロキのほうに向かった。
そして、私とナスカム辺境伯令嬢ともう一人は大人しく謁見の間を出て、大人しそうな令嬢はメイドと合流すると、私たちに軽く頭を下げて立ち去っていった。
ここにいても、ロキと話せるわけじゃないだろうから私も帰ろう。
そう思った時だった。
「キャスティー様」
呼び止められて振り返ると、ナスカム辺境伯令嬢が近くに立っていた。
「このあと、お時間はありますでしょうか」
「え、あ、はい」
「そんなに警戒なさらなくて大丈夫ですわ。わたくし、あの3人以外の方に王太子妃になってほしいだけですから」
ナスカム辺境伯令嬢は扉が開いたままの謁見の間で、ロキに群がっている3人のほうに厳しい視線を向けた。
もしかして、彼女たちと何か因縁があったりするのかしら。
次の日の朝にこっそり報告しに来てくれたロキから聞いた話では、エイドの白い頬がピンク色に染まっていたらしくて、何度か殴られたんじゃないかと言っていた。
あと、案の定、寝技もかけられたらしいけど、どんな状況でかけられたのかはロキにも教えてくれなかったんだそうだ。
結果、サラとどうなったかについて、ロキはエイドから話を聞いたみたい。
でも、私にはサラが自分から詳しい話を伝えたいと言っていたということでどうなったかまでは教えてもらえなかった。
気になる。
だけど、当事者のサラがそう言うのであれば仕方がない。
昨日の晩にマーサがエイドを見かけたらしく、どんな様子だったか聞いてみたら、ロキと一緒に普通に仕事をしていたと言っていたし、フラれたわけではないような気がする。
フラれていたら仕事なんてできなさそうなのが、エイドだもの。
サラから話を聞けるのは、いつになるかわからないけど、それまでは自分のことに集中することにした。
*****
昨日は別邸に来ただけで私としてはやることはなく、ロキが来てくれただけで王太子妃候補としてやらなければならないことは特になかった。
でも、今日からは違った。
午後から謁見の間で王太子妃候補についての詳しい話を説明されるので、朝食をとってからはずっと忙しかった。
用意されていたドレスに着替えさせられ、前回の時のように別人にしてもらった。
髪を結ってアクセサリーを付けたところで時間切れになり、急いで謁見の間に向かった。
今日はヒールが低めの靴を用意してもらっていたので、走りやすくて助かった。
王太子妃候補が廊下を走っているので、城内の人たたが目を丸くしていた。
その様子を見たマーサたちは自分たちの段取りが悪いせいで、時間がギリギリになってしまったと謝られてしまった。
でも、ここまで人を別人にさせるのだから、時間がかかってもしょうがないと思う。
だから、マーサたちには間に合ったのだから気にしないでほしいとお願いした。
時間には間に合ったけれど、すでに謁見の間には、他の王太子妃候補たちが集まっていた。
前回、私に喧嘩を売ってこなかった二人の内の一人は誰とも目を合わさないようにしているのか、指定の場所に立って、ずっと顔を下に向けている。
そしてもう一人は不機嫌そうな顔で玉座を睨みつけていた。
その様子を見て思う。
もしかして、王家がお嫌いなのかしら。
でも、それならここに来る前に断るわよね。
ついつい、その人を凝視していると、私の視線に気が付いたのか玉座から目を離し、こちらに顔を向けた。
すると、笑顔になってこちらに近寄って来た。
「はじめまして。ナスカム辺境伯家の長女、エレインと申します。父は北の辺境伯と呼ばれております」
「はじめまして。アイラ・キャスティーと申します。父は子爵です」
お互いにカーテシーをして挨拶をすると、背は少し低めで細身のナスカム辺境伯令嬢は、漆黒のお尻まであるストレートの長い黒髪を揺らし、先程まで見せていた不機嫌そうな表情はどこへやら可愛らしい笑顔を見せて口を開いた。
「私、キャスティー子爵令嬢を応援しております」
「はい?」
「好きな人と結ばれたいという、王太子殿下のお気持ち、とてもわかりますもの」
「……では、ナスカム辺境伯令嬢も好きな方がいらっしゃるんですか?」
「いいえ。恋を知らないから余計にそう思うのです」
「……王太子殿下と恋をされてみたいとは思わないのですか?」
「その点につきましては、今のところは興味はございません。他に気になることがございますので」
話をしている内に時間になったのか、陛下やロキたちが壇上に現れたので、そこで話は打ち切られた。
そして、陛下の挨拶のあとは王太子妃候補選びについての詳しい話を担当者の方から話をしてもらった。
判定するのは5人で、宰相や外務大臣などの偉い人たちらしい。
どんな方法で判定するかは詳しくは教えてもらえなかったけれど、筆記試験もあるらしく、それはやはり点数が良い順で順位を決めるようだった。
そして、私たち王太子妃候補は別邸内の各自の部屋以外は自由に動き回ることが出来て、申請すれば友人や家族を呼んでも良いらしい。
なので近い内に、サラにこっちに遊びに来てもらおうと考えた。
ロキと仲良くなるために、王太子妃候補はロキとのデートもしなければいけなくなった。
特別枠の私を贔屓するつもりはないと念押しされたのと、私のほうがロキと過ごした時間が長いため、他の王太子妃候補は6日に一度のデートのところを、私の場合だけ12日に一度のデートとし、他の令嬢よりもロキと過ごす時間を短くされた。
そんなにデートをしていたら、仕事は大丈夫なのかしら。
それに休みもないみたいだし、体を壊したりするんじゃないかと心配になるわ。
そんな風に思ってロキのほうを見てみると、視線が合った。
すると、ロキは無言で優しく微笑んでくれた。
うう。
いつから、あんなに優しい顔を私に向けてくれていたのかしら。
気持ちを伝えてもらうまで、ロキが私を好きだなんて考えたこともなかった。
マグナとの結婚が本当に憂鬱で、どうしたら結婚しなくても良いのだろうとかしか頭になかったのよね。
笑い返す訳にもいかず、視線を逸らして説明してくれている男性の話に意識を集中させた。
他の令嬢とロキがデートをしている間は、残りの人間は自由時間になるのだけど、私だけは特別メニューを組まされることになった。
なぜならマナーが他の令嬢に対してなっていないと言われ、マナー講師がつけられることになってしまったからだ。
この特別待遇に関しては、何人かから失笑されただけで反対意見は出なかった。
当たり前のことができていない落ちこぼれなんて、眼中にないといったところなんでしょう。
それはそれで腹が立つので、マナーの先生には、しっかり教えてもらって、笑った人たちをぎゃふんと言わせてやるわ。
戦うのなら、相手に失礼のないようにしないといけないものね。
それに、ロキが真剣に向き合ってくれているのだから、私もしっかり向き合わなくちゃいけないわ。
といっても、王太子妃になりたいという気持ちは、これっぽっちも湧いてこないから困ったものなのよね。
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そして、私とナスカム辺境伯令嬢ともう一人は大人しく謁見の間を出て、大人しそうな令嬢はメイドと合流すると、私たちに軽く頭を下げて立ち去っていった。
ここにいても、ロキと話せるわけじゃないだろうから私も帰ろう。
そう思った時だった。
「キャスティー様」
呼び止められて振り返ると、ナスカム辺境伯令嬢が近くに立っていた。
「このあと、お時間はありますでしょうか」
「え、あ、はい」
「そんなに警戒なさらなくて大丈夫ですわ。わたくし、あの3人以外の方に王太子妃になってほしいだけですから」
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