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10 友人へエールを
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私が顔を上げると、ロキがディーゴに焦った顔で尋ねる。
「今、なんて言った?」
「アイラ様は半年後に脱落するつもりだとおっしゃっておられました」
「何でだよ!?」
ロキが今度は私のほうを向いて聞いてきた。
「だって、私が王太子妃になれるわけないでしょう」
「そんなのわからない。それに王太子妃になったら家の心配はなくなるのに」
「それだけの理由で王太子妃になるなんて、他の王太子妃候補だけじゃなく国民にも失礼だし、あなたにも失礼じゃないの」
「……それって、僕のことを好きになったら頑張ってくれるってことかな」
ロキに真剣な瞳で見つめられて、心臓がどきりと跳ねた。
少しだけ考えてから、ロキを見つめ返して頷く。
「そうね。好きになったら頑張れると思う。だけど、どんなに頑張っても私が王太子妃候補に認められないと言われた時は、ちゃんと諦めてよね?」
「わかってるよ。最初からそのつもりだったんだから」
ロキが真剣な表情で頷いた。
「なら、これから改めてよろしくね」
握手しようと思って手を差し出すと、ロキは手を握ってくれるんじゃなく、跪いて私の手を取ると手の甲にキスをした。
「よろしくお願いします」
「ロキ! 手の甲にキスする時は相手に確認してからするのが、この国では基本でしょう!」
「えっ!?」
私がロキを叱ると、焦るロキを見たエイドが噴き出した。
そんなエイドの様子など気にせずに、ロキは謝ってくる。
「本当にごめん。つい意識してもらおうとして焦ってしまった」
「謝らないでよ。私だって手を差し出したんだから誤解されてもおかしくないようなことをしたわけだし」
マーサが無言で私の手の甲をハンカチで拭いてくれたけれど、それはそれで失礼な気もする。
たぶん、マーサとロキにそういう関係性が出来上がっているから許される行為であって、普通はやってはいけないことよね。
と、今はそれよりもエイドに言いたいことがある。
「エイド、あなた、ちょっとやり過ぎじゃないの?」
「何がでしょう」
ロキと私の関係を知っているということは、エイドと私の関係性も知っているだろうから、マーサたちの前でも敬語は無しでいいと判断して話を続ける。
「今回の件、サラもすごく不思議がっていたわ。大体、婚約者の件も、その日の内に断らせるだなんてやりすぎでしょう。友達だとしてもやり過ぎよ。あなたはサラの恋人じゃないでしょう」
「それはそうかもしれませんが」
「教えたのは私だし私にも責任はあると思うわ。だけど、そこまでするというんなら、これからはサラのプライベートな情報は教えられないわ!」
「そ、それは困ります」
エイドが焦った表情になったので、強い口調で言う。
「そんなに知りたいなら、今回のように公爵家の権力を使えばいいじゃない! 私からは教えないというだけよ!」
そこで一度言葉を区切ってから、エイドを睨んで話を続ける。
「エイド、あなたはこれからどうするつもりなの? サラに婚約者を作らせないということは、あなたプロポーズでもするつもりなの?」
「王太子妃が決まったら、プロポーズとはいきませんが話はするつもりです」
「おい。それだとまだ一年もあるぞ? そんなんで大丈夫か? 相手はあのサラだぞ」
私よりも先にロキが驚いて言った。
でも、私もそう思った。
サラが一年間も恋人が出来ないとは限らない。
婚約者は無理でも好きな人くらいはできてもおかしくないし、彼女の恋人になりたい人は多くいるはず。
「そ、それはわかってますよ。でも、私も色々と忙しいんですよ」
「エイド、王太子妃の試験を言い訳に告白を延ばすのはやめなさいよ。サラのお見合いを妨害するくらいなら、ちゃんと先に気持ちを伝えて、それまで待っててとか言うべきでしょう。それでフラレたりしたら申し訳ないけど」
「それが怖いから言えないんじゃないですか!」
「公爵令息が、そんなことで大丈夫なの!?」
学生時代のクセで、ついつい呆れた口調で言うと、エイドはそれに対しては気にした様子もなく、私に言われた言葉に傷付いたみたいだった。
「そう言われたら、返す言葉もありません」
エイドが眉尻を下げて言った。
私も傷付けるつもりじゃなかったから謝る。
「……偉そうなことを言ってごめんなさい」
「いえ、謝らないでください。あなたは間違ったことは言ってません」
「そうだな。アイラは間違ったことは言ってないと思う。それにお前が言ってるのは自分の都合でしかなくて、サラの気持ちはどうなってる? お前が勝手に彼女を束縛する様な真似をしてもいいと思ってるのか」
ロキがエイドに尋ねた。
それに関しては私のことはどうなるのかと思って、無言でロキを見つめてみると、彼も気が付いたようで私に謝る。
「ごめん。僕も似た様なことはやってる」
「そうよね。だけどエイド、ちゃんとロキは私に話をしてくれたし、私もこの状況を受け入れることにしたの。先のことはまだわからないけどね。だけど、サラは何も知らないのよ。あなたが公爵令息だってことも私から聞いて知ったの。今の状態のエイドは、遠くからサラを監視しながら、サラは私のこと好きですよね? 待っててくれますよね? って、サラに聞こえないように言って満足してるような状態だと思うわ」
「うっ!」
はっきり言い過ぎたのか、エイドが胸を押さえて声を上げた。
「というわけで頑張って告白してね。別に恋愛していてもロキのお仕事は手伝えるでしょう」
「フラれたら仕事になりません」
「そこは頑張ってよ! どうしても無理なら、一日くらいは休ませてあげてよね」
ロキに言うと、ロキはエイドの肩に手を置いて言う。
「当たって砕けて来い」
「他人事だと思って!!」
「というか、伝えるのが遅くなればなるほど、サラは怒ると思うぞ。僕も彼女とは長い付き合いだから彼女の性格はある程度わかる。ウダウダ悩んでいるような男は嫌いなはずだ」
「……わかりました。次の休みに」
「今日の午後から休みをやるから行って来い」
「……ありがとうございます」
エイドは緊張した面持ちで頷いたかと思うと、すぐにロキに言った。
「やっぱり、今すぐお休みをいただいて良いですか」
「かまわない。あとのことはシフォンに頼むから気にせず行って来い。頑張れよ」
「エイド、頑張って!」
ロキと私の応援の言葉にエイドは頷くと、一礼してから部屋を出て行った。
エイドが出て行って少ししてから、ロキに尋ねてみる。
「大丈夫かしら」
「さあな。サラのことは君のほうがよく知ってるだろ。君はどう思うんだ?」
「うーん、そうね。たぶんだけれど、まずは殴るんじゃないかしら。あ、でも、殴るんじゃなくて寝技しようとするかもしれないわ。前に護衛をしてくれた騎士の女性から寝技を習っていたのよ」
「……寝技?」
「ええ。首を絞める寝技」
「……エイド、生きて帰ってくるよな」
「さすがに、サラもエイドを殺したりしないと思うわよ」
エイドが出て行った扉を見つめながら、私はロキに静かに答えた。
「今、なんて言った?」
「アイラ様は半年後に脱落するつもりだとおっしゃっておられました」
「何でだよ!?」
ロキが今度は私のほうを向いて聞いてきた。
「だって、私が王太子妃になれるわけないでしょう」
「そんなのわからない。それに王太子妃になったら家の心配はなくなるのに」
「それだけの理由で王太子妃になるなんて、他の王太子妃候補だけじゃなく国民にも失礼だし、あなたにも失礼じゃないの」
「……それって、僕のことを好きになったら頑張ってくれるってことかな」
ロキに真剣な瞳で見つめられて、心臓がどきりと跳ねた。
少しだけ考えてから、ロキを見つめ返して頷く。
「そうね。好きになったら頑張れると思う。だけど、どんなに頑張っても私が王太子妃候補に認められないと言われた時は、ちゃんと諦めてよね?」
「わかってるよ。最初からそのつもりだったんだから」
ロキが真剣な表情で頷いた。
「なら、これから改めてよろしくね」
握手しようと思って手を差し出すと、ロキは手を握ってくれるんじゃなく、跪いて私の手を取ると手の甲にキスをした。
「よろしくお願いします」
「ロキ! 手の甲にキスする時は相手に確認してからするのが、この国では基本でしょう!」
「えっ!?」
私がロキを叱ると、焦るロキを見たエイドが噴き出した。
そんなエイドの様子など気にせずに、ロキは謝ってくる。
「本当にごめん。つい意識してもらおうとして焦ってしまった」
「謝らないでよ。私だって手を差し出したんだから誤解されてもおかしくないようなことをしたわけだし」
マーサが無言で私の手の甲をハンカチで拭いてくれたけれど、それはそれで失礼な気もする。
たぶん、マーサとロキにそういう関係性が出来上がっているから許される行為であって、普通はやってはいけないことよね。
と、今はそれよりもエイドに言いたいことがある。
「エイド、あなた、ちょっとやり過ぎじゃないの?」
「何がでしょう」
ロキと私の関係を知っているということは、エイドと私の関係性も知っているだろうから、マーサたちの前でも敬語は無しでいいと判断して話を続ける。
「今回の件、サラもすごく不思議がっていたわ。大体、婚約者の件も、その日の内に断らせるだなんてやりすぎでしょう。友達だとしてもやり過ぎよ。あなたはサラの恋人じゃないでしょう」
「それはそうかもしれませんが」
「教えたのは私だし私にも責任はあると思うわ。だけど、そこまでするというんなら、これからはサラのプライベートな情報は教えられないわ!」
「そ、それは困ります」
エイドが焦った表情になったので、強い口調で言う。
「そんなに知りたいなら、今回のように公爵家の権力を使えばいいじゃない! 私からは教えないというだけよ!」
そこで一度言葉を区切ってから、エイドを睨んで話を続ける。
「エイド、あなたはこれからどうするつもりなの? サラに婚約者を作らせないということは、あなたプロポーズでもするつもりなの?」
「王太子妃が決まったら、プロポーズとはいきませんが話はするつもりです」
「おい。それだとまだ一年もあるぞ? そんなんで大丈夫か? 相手はあのサラだぞ」
私よりも先にロキが驚いて言った。
でも、私もそう思った。
サラが一年間も恋人が出来ないとは限らない。
婚約者は無理でも好きな人くらいはできてもおかしくないし、彼女の恋人になりたい人は多くいるはず。
「そ、それはわかってますよ。でも、私も色々と忙しいんですよ」
「エイド、王太子妃の試験を言い訳に告白を延ばすのはやめなさいよ。サラのお見合いを妨害するくらいなら、ちゃんと先に気持ちを伝えて、それまで待っててとか言うべきでしょう。それでフラレたりしたら申し訳ないけど」
「それが怖いから言えないんじゃないですか!」
「公爵令息が、そんなことで大丈夫なの!?」
学生時代のクセで、ついつい呆れた口調で言うと、エイドはそれに対しては気にした様子もなく、私に言われた言葉に傷付いたみたいだった。
「そう言われたら、返す言葉もありません」
エイドが眉尻を下げて言った。
私も傷付けるつもりじゃなかったから謝る。
「……偉そうなことを言ってごめんなさい」
「いえ、謝らないでください。あなたは間違ったことは言ってません」
「そうだな。アイラは間違ったことは言ってないと思う。それにお前が言ってるのは自分の都合でしかなくて、サラの気持ちはどうなってる? お前が勝手に彼女を束縛する様な真似をしてもいいと思ってるのか」
ロキがエイドに尋ねた。
それに関しては私のことはどうなるのかと思って、無言でロキを見つめてみると、彼も気が付いたようで私に謝る。
「ごめん。僕も似た様なことはやってる」
「そうよね。だけどエイド、ちゃんとロキは私に話をしてくれたし、私もこの状況を受け入れることにしたの。先のことはまだわからないけどね。だけど、サラは何も知らないのよ。あなたが公爵令息だってことも私から聞いて知ったの。今の状態のエイドは、遠くからサラを監視しながら、サラは私のこと好きですよね? 待っててくれますよね? って、サラに聞こえないように言って満足してるような状態だと思うわ」
「うっ!」
はっきり言い過ぎたのか、エイドが胸を押さえて声を上げた。
「というわけで頑張って告白してね。別に恋愛していてもロキのお仕事は手伝えるでしょう」
「フラれたら仕事になりません」
「そこは頑張ってよ! どうしても無理なら、一日くらいは休ませてあげてよね」
ロキに言うと、ロキはエイドの肩に手を置いて言う。
「当たって砕けて来い」
「他人事だと思って!!」
「というか、伝えるのが遅くなればなるほど、サラは怒ると思うぞ。僕も彼女とは長い付き合いだから彼女の性格はある程度わかる。ウダウダ悩んでいるような男は嫌いなはずだ」
「……わかりました。次の休みに」
「今日の午後から休みをやるから行って来い」
「……ありがとうございます」
エイドは緊張した面持ちで頷いたかと思うと、すぐにロキに言った。
「やっぱり、今すぐお休みをいただいて良いですか」
「かまわない。あとのことはシフォンに頼むから気にせず行って来い。頑張れよ」
「エイド、頑張って!」
ロキと私の応援の言葉にエイドは頷くと、一礼してから部屋を出て行った。
エイドが出て行って少ししてから、ロキに尋ねてみる。
「大丈夫かしら」
「さあな。サラのことは君のほうがよく知ってるだろ。君はどう思うんだ?」
「うーん、そうね。たぶんだけれど、まずは殴るんじゃないかしら。あ、でも、殴るんじゃなくて寝技しようとするかもしれないわ。前に護衛をしてくれた騎士の女性から寝技を習っていたのよ」
「……寝技?」
「ええ。首を絞める寝技」
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