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37 食後のお願い事
「遠路はるばる来た甲斐がありました。こっちの料理って本当に美味しいですねぇ」
スニッチはお腹をパンパンと叩きながら、ご満悦といった感じの笑みを見せた。
「食事がお気に召したなら良かったわ。というか、ここで食べるよりも前に、どこかで食べてこなかったの?」
「昼に着きましてね。お屋敷の近くをぶらぶらさせていただいておりました。あ、不審者と思われない様にはしてますので、ご心配なく」
今日のスニッチは、リュカの使いとして私の家に来るということもあったからか、茶色のジャケットに同じ色のパンツという落ち着いた雰囲気だった。
それにしても、まさか私だけじゃなく私の家族とも一緒に食事をするだなんて思わなかったわ。
「スニッチはあんまり、人に顔を覚えられたくないんじゃないの?」
応接室のソファに座るスニッチの向かい側に腰を下ろしてから尋ねた。
男性と二人きりなんて、とメイドたちは心配したけれど、スニッチと間違いなんてありえない、と二人で否定して、お茶だけ入れてもらって退室させた。
スニッチはお茶を一口飲んでから、私に答える。
「そうですね。ただ、変装なんて簡単に出来ますからね。今のこの顔が素の顔だとは限りませんし」
「そう言われたらそうね」
頷くと、スニッチが早速、話を促してくる。
「で、何か知りたいことがお有りのようですね」
「ええ。でも、他国でのことだから、スニッチには動きにくいかもしれないけれど、それでも良いかしら」
「嫌ですねぇ。一応、この国にだって商売仲間はいるんですよ。私が動けなくても仲間に調べてもらえばいいだけです」
「それは困るわ。あなたにだから話そうとしているのに」
しかめっ面をすると、スニッチは驚いた様な顔をしたあと、なぜか笑いだした。
「どうして笑うのよ!」
「調べてもらうと言っても、リリー様が調べてほしいと思っている本当の話題を出すわけではありませんよ。それに関係しそうなものから探っていきます」
「それならそうと言って頂戴」
「普通はそう思うものかと思ったんですよ。ああ、そんなに機嫌を悪くしないで下さいよ。あとから、リュカ殿下から怒られるじゃないですか」
スニッチが私の表情を見て苦笑した。
表情はそのままで口を開く。
「リュカに文句は言うけれど、あなたの上司はリュカになったの? 国王陛下ではないのね」
「ええ。あ、ついでに言っておきますが、私がこの国で動くことは、こちらの国王陛下にも連絡済みです。あとからバレて、国際問題に発展しては嫌なんでしょうねぇ」
「それはそうね。あと、一貴族を調べるだけだから許可が下りたのかしら」
「それもあるかもしれませんが、やはり、未来の王妃様に何とか関わろうとしてくる輩なんて、怪しいことこの上ないですからね。取り入りたい気持ちはわからないでもないですが、疑ってくれと言っているようなもんですよ。エマロン家とタイディ家については、しっかり調べさせていただきます」
アイザックのこともリュカから聞いているらしく、スニッチはエマロン家の名も出した。
「こちらの国の第一王女殿下の暗殺未遂の犯人が捕まっていませんし、気になることは少しでも潰しておきたいというのもあるでしょう」
「そう言われてみればそうね。ティナ様を狙った人物は誰なのかしら」
「おっと。私の依頼はそこまで大きなものとは聞いていませんよ。タイディ家のことを知りたいんですよね? ついでにエマロン家くらいを調べるのは良いと思ってましたが、第一王女殿下の暗殺未遂事件についてまで調べてこいとは言われてません」
スニッチは首を横に振って、拒否の意を私に示した。
「そうね。あなたの主人はリュカだものね。リュカに話をするわ」
「そ、そういう意味ではありませんよ! リリー様は意地が悪いですね」
「そうでもないと辛いのよ。あなたみたいに芯が強いわけじゃないから」
「深く考えないようにすればいいんですよ。自分が思うほど、相手はあなたのことを考えてませんよ」
「じゃあ、あなたの気持ちを考えずに、言いたいことを言ってもいいってこと?」
「それとこれとは別な気がしますね」
スニッチは呆れた顔をして続ける。
「第一王女殿下の件については、ついでとして、調べられるなら調べましょう。自分の命が危ないと思ったら手を引きます。あと、リュカ殿下への連絡もお願いします。この条件をのんでいただけるなら調べてもいいですよ」
「わかったわ。私だって、スニッチに死んでほしいわけじゃないもの。命は大事にしてちょうだい」
「リリー様は優しいのかそうでないのかわかりませんね。命を大事にしろというなら、第一王女殿下の件は調べなくても良いと言うべきですよ」
「あなたなら出来ると信じてるからよ」
笑顔で言うと、スニッチは「強くなりましたねぇ」と楽しんでいる様な笑みを浮かべた。
スニッチはお腹をパンパンと叩きながら、ご満悦といった感じの笑みを見せた。
「食事がお気に召したなら良かったわ。というか、ここで食べるよりも前に、どこかで食べてこなかったの?」
「昼に着きましてね。お屋敷の近くをぶらぶらさせていただいておりました。あ、不審者と思われない様にはしてますので、ご心配なく」
今日のスニッチは、リュカの使いとして私の家に来るということもあったからか、茶色のジャケットに同じ色のパンツという落ち着いた雰囲気だった。
それにしても、まさか私だけじゃなく私の家族とも一緒に食事をするだなんて思わなかったわ。
「スニッチはあんまり、人に顔を覚えられたくないんじゃないの?」
応接室のソファに座るスニッチの向かい側に腰を下ろしてから尋ねた。
男性と二人きりなんて、とメイドたちは心配したけれど、スニッチと間違いなんてありえない、と二人で否定して、お茶だけ入れてもらって退室させた。
スニッチはお茶を一口飲んでから、私に答える。
「そうですね。ただ、変装なんて簡単に出来ますからね。今のこの顔が素の顔だとは限りませんし」
「そう言われたらそうね」
頷くと、スニッチが早速、話を促してくる。
「で、何か知りたいことがお有りのようですね」
「ええ。でも、他国でのことだから、スニッチには動きにくいかもしれないけれど、それでも良いかしら」
「嫌ですねぇ。一応、この国にだって商売仲間はいるんですよ。私が動けなくても仲間に調べてもらえばいいだけです」
「それは困るわ。あなたにだから話そうとしているのに」
しかめっ面をすると、スニッチは驚いた様な顔をしたあと、なぜか笑いだした。
「どうして笑うのよ!」
「調べてもらうと言っても、リリー様が調べてほしいと思っている本当の話題を出すわけではありませんよ。それに関係しそうなものから探っていきます」
「それならそうと言って頂戴」
「普通はそう思うものかと思ったんですよ。ああ、そんなに機嫌を悪くしないで下さいよ。あとから、リュカ殿下から怒られるじゃないですか」
スニッチが私の表情を見て苦笑した。
表情はそのままで口を開く。
「リュカに文句は言うけれど、あなたの上司はリュカになったの? 国王陛下ではないのね」
「ええ。あ、ついでに言っておきますが、私がこの国で動くことは、こちらの国王陛下にも連絡済みです。あとからバレて、国際問題に発展しては嫌なんでしょうねぇ」
「それはそうね。あと、一貴族を調べるだけだから許可が下りたのかしら」
「それもあるかもしれませんが、やはり、未来の王妃様に何とか関わろうとしてくる輩なんて、怪しいことこの上ないですからね。取り入りたい気持ちはわからないでもないですが、疑ってくれと言っているようなもんですよ。エマロン家とタイディ家については、しっかり調べさせていただきます」
アイザックのこともリュカから聞いているらしく、スニッチはエマロン家の名も出した。
「こちらの国の第一王女殿下の暗殺未遂の犯人が捕まっていませんし、気になることは少しでも潰しておきたいというのもあるでしょう」
「そう言われてみればそうね。ティナ様を狙った人物は誰なのかしら」
「おっと。私の依頼はそこまで大きなものとは聞いていませんよ。タイディ家のことを知りたいんですよね? ついでにエマロン家くらいを調べるのは良いと思ってましたが、第一王女殿下の暗殺未遂事件についてまで調べてこいとは言われてません」
スニッチは首を横に振って、拒否の意を私に示した。
「そうね。あなたの主人はリュカだものね。リュカに話をするわ」
「そ、そういう意味ではありませんよ! リリー様は意地が悪いですね」
「そうでもないと辛いのよ。あなたみたいに芯が強いわけじゃないから」
「深く考えないようにすればいいんですよ。自分が思うほど、相手はあなたのことを考えてませんよ」
「じゃあ、あなたの気持ちを考えずに、言いたいことを言ってもいいってこと?」
「それとこれとは別な気がしますね」
スニッチは呆れた顔をして続ける。
「第一王女殿下の件については、ついでとして、調べられるなら調べましょう。自分の命が危ないと思ったら手を引きます。あと、リュカ殿下への連絡もお願いします。この条件をのんでいただけるなら調べてもいいですよ」
「わかったわ。私だって、スニッチに死んでほしいわけじゃないもの。命は大事にしてちょうだい」
「リリー様は優しいのかそうでないのかわかりませんね。命を大事にしろというなら、第一王女殿下の件は調べなくても良いと言うべきですよ」
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